今回は、4月6日に施行された、英国の滞在許可への申請に関するいくつかの変更点についてお伝えします。英国では現在、国内の移民数を制限するための施策を随時検討または実施しており、内務省は国内の滞在許可に関連する制度の変更を頻繁に行っているため注意が必要です。あとになって思わぬ変更に気が付いて慌てることのないように、常に新しい情報に目を通しておきましょう。
Tier1
Tier1の「Graduate Entrepreneur(世界的な基準において革新的なアイデアに取り組む起業家志望の学生が対象)」枠内に、英国の高等教育機関で経営学修士(MBA)を取得した才能ある学生を対象とした追加枠が設けられました。
また同じくTier1の「Exceptional Talent(科学、人文科学、技術などの分野において既に功績を残しているまたは将来有望な人材)」枠への申請手続きが分割化されます。この変更により、申請者は事前に申請費の全額を支払う必要がなくなりました。また同枠申請においては、審査が行われている間に当局にパスポートを預けておくということも現在では必要ありません。審査が長引いた場合に、長期にわたり英国内に留まることを余儀なくされていた申請者の不便が軽減される見込みです。
Tier2
欧州連合(EU)または欧州経済地域(European Economic Area: EEA)加盟国の国民でない者の多くが、英国で就労する際に必要とする滞在許可がTier2です。
このTier2の申請においては、「人材不足職業リスト(The Shortage Occupation List)」を参照することで募集職が内務省によって英国内で人材不足に陥っていると見なされているものであるかを確認し、また英国内で人材募集の広告を出稿するなどして英国内居住者の中から適切な人材がいないかを調べる必要があります(この募集手続きを「The Resident Labour Market Test」と呼びます)。もしこの手続きを経ても適切な人材が見つからない場合には、その職に関する最低賃金や必要とされる技能を定めた規定(Codes of Practice)を順守した上で日本などの国籍を持つ者を採用することができるのです。このTier2における「人材募集手続き」と「人材不足職業リスト」そして関連する「採用規定」の内容も4月6日付で変更されました。
また大多数の日本人駐在員の方々にとっての関心事であるTier2の「Intra-Company Transfer(企業内での異動として英国で働く出向者が対象)」枠についても変更点があります。企業内での移動をより柔軟に行えるようにとの目的から実施される措置ではあるものの、この変更をめぐっても繊細な対応が求められるので、専門家の助言が必要になるでしょう。
Tier4
Tier4において、博士号取得者は求職または起業の準備期間として博士課程修了後に1年間の滞在延長ができるようになりました。
滞在許可の申請についての度重なる変更によって、英国におけるビザ関連規定は複雑さを増すばかりであり、専門家の助言なくしてビザの申請を行うのはかなり困難であるというのが実情です。確実なビザ取得のためにも、手続きは専門家と二人三脚で、取得のタイミングなどを熟慮しつつ、計画を立てて着実に進めることをお勧めします。