本連載も、今年最後の回を迎えました。過去数年と同じく、今年も英国における移民の締め付けはますます加速していった一年となりました。今回は、2014年に実施された移民・入国管理法に関する数々の変更点を改めて振り返ってみたいと思います。
● EUの就労制限緩和
今年1月1日より、ルーマニア、ブルガリアからの移民に対する就労制限が緩和されました。2007年に欧州連合(EU)に加盟した両国の国民に対しては、これまで低賃金の労働力が国内に流入するのを防ぐなどの理由によって、加盟後7年間は英国での就労制限が課されていました。この緩和措置の実施後、国内の一部では、移民流入に対する反発が高まっています。
● Tier1(投資家、高度技能労働者など)
・「Investor」の最低投資額倍増に向けた動き
英国の移民諮問委員会は今年2月、「Investor」のカテゴリーで滞在許可取得に必要な最低投資額を200万ポンドへと倍増すべきという提案を行いました。
・「Exceptional Talent」の適用範囲を拡大
芸術や科学などの分野にて世界的に認められた、あるいはその可能性のある人を対象に発給される Tier1 の「Exceptional Talent」のカテゴリーに、3月13日よりデジタル・テクノロジーの分野が含まれることになりました。
・「General」の滞在許可延長措置が終了
「General」のカテゴリーにおいてはこれまで回数の制限なく滞在許可を更新することが可能でしたが、2015年5月を最終期限として更新ができなくなります。
・「General」からの永住権への申請措置が終了
このカテゴリーから永住権の申請を行う場合は、2018年4月5日が最終期限となります。同日までに必要とされる資格を満たさない場合は、同ルートから永住権を申請することはできません。
● Tier2(就労)
・取得可能期間が拡大
4月6日より、これまで3年と定められていた取得可能期間が5年へと拡大されました。
・最低給与が引き上げ
4月6日より、「General」のカテゴリーにおける最低給与が2万300ポンド(約383万円)から2万500ポンドへと引き上げとなりました。ただし、それぞれの職業別に定められた最低給与の金額がより高く設定されている場合は、高い方の金額が適用されます。
● Tier1、2、4、5(就労、学生、被扶養家族など)
スポンサーシップの獲得など滞在許可の取得に必要な各条件が点数化された「ポイント・ベース」制度の対象となっているTier1、2、4、5においては、事前に十分な資金を用意していると証明することが求められます。この資金の必要額が引き上げとなりました。 このように、今年一年の間だけでも、英国における移民・入国管理法と、同国における滞在許可をめぐる事情は目まぐるしく変更を繰り返しています。申請資料の用意を始めてからその資料を提出するまでの間に、移民・入国管理法が変更されてしまったなどといった、まるで冗談のような出来事がいつでも起こり得るのが現在の状況です。できるだけ早い段階で準備を開始し、申請手続きは専門家と二人三脚で着実に進めるようにしましょう。