コーニッシュ・パスティ
Cornish Pasty
コーニッシュ・パスティと言えば、サンドイッチと並び、鉄道の主要駅で必ずといっていいほど売られているファストフード。半月型をしたこのパイは、名前から想像できるように、コーンウォール地方の名物スナックです。パスティ(pasty)という言葉は、13世紀に中世フランス語からもたらされたと言われ、ラテン語の「pasta」からきているそうです。ただし、それに「コーニッシュ」をつけて名乗るには、厳しい条件が課せられています。というのも、コーニッシュ・パスティの名称は、2011年以来、欧州連合(EU)のEU法が規定する原産地名称保護制度(Protected Geographical Indication)によって保護されているからです。2002年にコーンウォールで設立されたコーニッシュ・パスティ協会によると、その呼称を名乗れる条件とは
● アルファベット「D」の形をしていて、端の部分はねじって波のような形に閉じられていること。
● ひき肉状、あるいは適当な大きさに切った牛肉を、パスティ全体の12.5%以上含むこと。
● ジャガイモ、スウィード、玉ねぎを少なくともパスティ全体の25%の分量にすること。
● 上記の材料は生地で包む前は「生」の状態であること。
● 人工香料や添加物を加えていないこと。
● 商品として販売する場合には、コーンウォールで作られたものでなければならない。
といった具合です。
歴史的には、ここ200年くらいの間でコーンウォールの食べ物として定着、認知されるようになったようです。元々貧しい労働者階級の家庭で食べられていたもので、その持ち運びやすい大きさ・形も手伝い、農民や鉱山労働者が仕事の合間に食べるものとなったといいます。特に錫(すず)鉱山の労働者たちは波形になった端の部分を持ち手にして食べ、毒素のついたその部分は捨ててしまったのだとか。
私自身が初めてコーニッシュ・パスティを食べたのは、コーンウォールのセント・アイブスでした。十数年前のイースター・ホリデー前、街のベーカリーで熱々のパスティを購入。紙袋に入ったそれを強風吹きつける海辺で鼻水をすすりながら食べた時の感動は今でも覚えています。胡椒のパンチが効いていて、ジャガイモと牛肉のハーモニーが絶妙で、肉じゃが以外にこの2つの食材がこんなにもマッチする食べ物があるんだ! と感心しましたっけ。
ところで、コーンウォールにあるエデン・プロジェクトでは、2012年から毎年「ワールド・パスティ・チャンピオンシップス」なる大会が開催されています。プロ、アマ、ジュニア、企業という部門に分かれ、出来を競います。伝統的パスティのほかに、中身の具を自由に考えていい「オープン・セイボリー」という部門も。今年の応募締め切りは3月4日。我こそは、と思われる方は挑戦してみてはいかがでしょう。
コーニッシュ・パスティ(6人分)
材料
【ショートクラスト・ペストリー用】
- 強力粉 ... 500g
- ラードまたはホワイト・ショートニング ... 120g
- バター(コーニッシュ産) ... 125g
- 塩 ... 小さじ1
- 冷水 ... 175ml
【中身用】
- 角切りにした牛肉 ... 450g
- ジャガイモ(さいの目) ... 450g
- スウィード(さいの目) ... 250g
- 玉ねぎ(薄切り) ... 200g
- 塩・胡椒 ... 適量
- 溶き卵または牛乳(つや出し用)
作り方
- 強力粉にバターとラードまたはショートニングを入れ、ぽろぽろの粒状になるように混ぜる。
- ❶に水を加え、生地がしっかりと伸びるようになるまでよくこねる。フード・プロセッサー使用可。
- ❷を冷蔵庫で3時間ほど冷やす。
- ❸の生地を伸ばし、直径20cmの円形に抜く。
- ❹の上に野菜、牛肉を載せ、上から塩・胡椒をたっぷり加える。
- 生地を半分に折り、端を織り込んで波形のように整える。
- つや出しのための溶き卵または牛乳を刷毛で塗る。
- 165℃のオーブンで50~55分ほど焼く。きつね色になったら出来上がり。
memo
レシピはコーニッシュ・パスティ協会によるものです。このウェブサイトでは作り方のビデオを観ることもできますよ。
ウェブサイト: www.cornishpastyassociation.co.uk