チキン・ティッカ・マサラ
Chicken Tikka Masala
「英国でおいしいものを食べたかったら、中華かインド料理を食べに行った方がいいよ」。来英後しばらくして知り合った日本人駐在員の方が教えてくれました。彼に連れて行かれたのは東ロンドンのブリック・レーン。この辺りはバングラデシュからの移民が多く住むエリアで、カレーを食べさせるレストランが連なっています。どこの店にも「◯◯ アワード受賞」的なポスターが貼ってあり、店頭では呼び込みのスタッフが「うちが一番おいしいよ」と呼び掛けるので、一体どこに入ったらいいのか迷ってしまいます。
彼が以前何度か来たことがあるというお店に入ってみると、今度はメニューの多さにびっくり。何を頼んだらいいのか見当がつきません。「イギリス人にはチキン・ティッカ・マサラが人気だよ」とのアドバイスに従い、それとプレーン・ナンを注文しました。
出てきたのはケチャップとマヨネーズを混ぜたときのような色をしたカレー。チキンがとても柔らかでひと口食べてすぐに気に入りました。ソースはスパイスやトマトの味がほんのりするだけでまろやかですがコクもあり、一気に完食。英国のインド料理のおいしさに感激したのでした。
さて、その「タンドール窯で焼いた鶏肉の串焼き(チキン・ティッカ)をスパイス(マサラ)で混ぜた」という名前のインド料理。なぜ今回ご紹介するかというと、これが英国生まれの料理だからなのです。
このメニューが誕生したのは1970年代前後と言われていますが、トニー・ブレア政権時に外相だったロビン・クック氏が2001年に「チキン・ティッカ・マサラは英国の国民食だ」と発言しました。これはウィキペディアにも載っているほど有名な話ですが、そんな例を出さずとも、スーパーのレディー・ミールの棚を見れば、この料理がどれほど英国の人々に好まれているかが分かります。
発祥については諸説あります。スコットランドのグラスゴーにあるインディアン・レストランが自分たちが考えたレシピだと主張しているのを初めとしてロンドンやバーミンガムのレストランが最初だという意見もあり、実際のところは謎に包まれているのです。
チキン・ティッカを食べた英国人客が、肉の上にかけるグレービーがほしいというので、レストランのシェフがキャンベル社のトマト・スープにスパイスを加えて煮たものを出したところ大好評、以来このメニューが定番となった、という話も伝えられていますが、これも事実かどうかは不明。とはいえ、このメニューは元々インドやバングラデシュにはなく、現在では逆輸入されているということで、これが英国生まれというのは当地でも定説になっているそう。
ところで英国には「コブラ」というインディアン・ラガーがありますが、実はこのビールも英国生まれ。インド料理がたくさん食べられるようにと炭酸少なめに作られたというものなので、チキン・ティッカ・マサラのお伴にお試しを。
簡単ミニ・スコーンの作り方(15個分)
材料
- 鶏もも肉 ... 250~300g
- 玉ねぎ ... 2個
- パプリカ(赤) ... 1個
- 市販のティッカ・マサラ・ペースト ... 大さじ4
- トマト缶(400g) ... 1缶
- トマト・ピューレ ... 大さじ2
- 塩 ... 適量
- バター ... 15g
- サラダ油 ... 大さじ2
- 砂糖 ... 小さじ1.5
- ヨーグルト ... 60g
- ダブル・クリーム ... 70g
- 水 ... 100ml
- コリアンダー ... 適量
作り方
- バターとサラダ油をフライパンで熱し、細かく刻んだ玉ねぎが柔らかく飴色になるまでじっくり炒める。
- ティッカ・マサラ・ペーストと刻んだパプリカを加えて5分ほど炒める。
- 一口大に切った鶏肉を加えて、ペーストが全体によくからまり、鶏肉の表面がやや茶色になる程度まで炒める。
- ❸にトマト缶、トマト・ピューレ、水、砂糖を入れて10分ほど煮込む。
- 肉に火が通っているのを確認して、ヨーグルトとダブル・クリームを加える。
- 味見をして必要なら塩を加え、上にコリアンダーの葉を散らして出来上がり。