ランカシャー・ホットポット
Lancashire Hotpot
皆さん、イースターはどのように過ごされましたか?英国の伝統に従って、イースター・サンデーにロースト・ラムを召し上がった方もいるのではないかと思います。
この国では、牛肉、豚肉、鶏肉と並び、スーパーの精肉コーナーに陳列スペースが設けられているほど、ラムは身近な食材。私の周りには、日本にいたときは好きではなかったけれど、渡英後ラムを好きになった、という友人が数人います。実は私自身も英国で食べたラム・チョップで、初めてそのおいしさに開眼したクチ。塩と胡椒、ローズマリーの味付けで炭火で焼いただけのラムは、人が見ていなければ絶対に骨までしゃぶりついていたと思うほど、絶品でした。
ただ、英国のラムは感動的うまさだと思うものの、ニュージーランドから輸入されているものも多く、すべてが「英国産のオーガニック」という訳でもないので、日本で入手出来るものとどれほど違いがあるのかは分かりません。それに、カントリーサイドで可愛い子羊を見ると、気がとがめることも……。それでも一方で、ラムを口にするたび「英国で食べるラムは格別!」を否定できない自分がいます。
さて、そのラムを使った有名な英国料理と言えば、ランカシャー・ホットポット。名前の通り、イングランド西北部、ランカシャーが起源と言われ、スーパーのレディー・ミールの棚に必ずストックされている、英国人の大好きな家庭料理です。ラムと玉ネギ(ニンジンなどを入れる場合も)にストックを加え、その上にスライスしたジャガイモを並べてオーブンでじっくり煮込み、最後に蓋をはずして再加熱し、ジャガイモに焦げ目が付いたら出来上がり。ほくほくのジャガイモと、噛む必要のない程トロトロになったお肉が混ざった熱々を一口食べれば、お腹も心もほっこりの一品です。
ラム料理と言いましたが、かつてはマトンが多く使われていました。また、最近のレシピでは省かれている場合もありますが、羊の腎臓も一緒に料理するのが一般的でした。
響きがなんとも可愛い「ホットポット」という名前については、調理をする際の容器(鍋)を指すという説と、材料をごった煮にしたものという意味の「hotch potch」または「hodge podge」という言葉から来ているという説があるようです。
現在では日々の献立の一種ですが、1854年に初めて料理書に登場したときは、毎日食べるものというよりは、特別な料理として記載されていたそうです。そういえば、2009年にBBCの人気番組「Great British Menu」で、ランカシャー出身のミシュラン・スター・シェフ、ナイジェル・ハワース氏が、ランカシャー・ホットポットを作ってメイン・コース部門で優勝。「特別な料理」と呼ぶのにふさわしい、彼の作るランカシャー・ホットポットは、ランカシャーに位置するノースコート(Northcote)というホテルのレストランでいただけるそうです。
ランカシャー・ホットポットの作り方(2~3人分)
材料
- ラム(ラム・チョップ、またはシチュー用) ... 500g
- ジャガイモ ... 4〜5個
- 玉ネギ ... 中1個
- ニンジン ... 1本
- 小麦粉 ... 大さじ2
- バター ... 20g
- ラム・ストック(ビーフ・ストックでも可) ... 1ℓ
- タイム ... 適量
- ローズマリー ... 適量
- 塩・胡椒 ... 適量
- オリーブ・オイル ... 適量
作り方
- ラムに塩・胡椒をして、小麦粉をまぶし、オリーブ・オイルを敷いたフライパンで表面に茶色の焦げ目が付くまで焼く。焼き上がったものを鍋(キャセロールなど、オーブンに入れられるもの)に移す。
- ❶と同じフライパンで玉ネギとニンジンを柔らかくなるまで炒める。
- 鍋に❷の野菜とラム・ストック、タイム、ローズマリーを入れて煮る。沸騰したら火を弱めて10分ほど煮込む(味見をして必要であれば塩・胡椒を足す)。
- 5ミリ程の薄さにスライスしたジャガイモを、➌の上に並べる。
- ➍の上にバターをちぎって散らばせる(溶かしバターにして刷毛でジャガイモの上に塗っても可)。
- 170℃に余熱したオーブンで1.5~2時間ほど調理する。ジャガイモの表目に焦げ目を付けたい場合には、最後に15分ほど蓋を取ってオーブンに入れ、再加熱して出来上がり。
memo
本文でご紹介したナイジェル・ハワース氏はじめ、多くのレシピで、ランカシャー・ホットポットには紫キャベツのピクルスを添えて食べることを紹介しています。なぜこの付け合わせなのか理由は不明ですが、確かにこっくりしたホットポットに、さっぱり味のピクルスがよく合います。