建設業界のサービス: 新たなVATリバース・チャージの要件
建設業界のサービス提供に新たなVAT制度が導入されると聞きました。
英国歳入関税庁(HMRC)は、建設業界の一部のサービス提供に新たなVAT(付加価値税)の会計方法を導入します。これは、建設業界に対する国内のVATリバース・チャージ制度で、一部の建設サービスに課されるVATの計上を、サービスの提供者ではなく、受ける側に義務付けるものです。
新制度は2019年10月1日から実施されます。これは、建設業界で「VATの不正行為(詐欺)」(Missing trader fraud)を取り締まるための、HMRCの取り組みの一環であり、すでに導入されているコンピューター・チップや携帯電話の販売、一部のエネルギーの供給に対する国内のリバース・チャージと同じようなものです。
VATリバース・チャージとはどういうものですか。
通常のVATの計上では、英国でサービスを提供する企業が、提供するものの価値に対してVATを計上し、HMRCにこれを納めます。その後、サービスを受けた企業は、VAT還付の資格に従ってHMRCからVATの還付を受けます。
リバース・チャージの制度では、VAT登録企業Aが建設サービスを他のVAT登録企業Bに提供し、そのサービスを受けた企業Bがさらに他にサービスを提供する場合には、企業AからBへ発行するインボイスではVATを請求しません。
サービスを受けた企業は、通常のルール通りサービス提供企業にVATを支払う代わりに、VATの還付を通じて、そのサービスのVATを支払わなければなりません。サービスを受けた企業は、通常のルールに従って購入により課せられるVAT(インプット税)として、そのVAT金額の還付を受けることができます。
新ルールでは、どんな建設サービスが影響を受けますか。
新たな国内リバース・チャージでは、企業間(B2B)における建設サービスの提供に標準税率(20%)または軽減税率(5%)のVATが適用されます。
支払いが「建設業界スキーム(CIS)」を通じた報告を義務付けられている場合、請負事業者および下請事業者を通じて、顧客がサービスのエンドユーザーに到達するまで適用されます。対象となる建設サービスには次のようなものがあります。
- • 建物または構造物の建設や改築
- • 道路工事やドックと港湾、鉄道のように土地と関わる工事の建設、改築、修繕、拡張、
取り壊し - • 暖房や照明、電力供給、空調のシステムの設置
- • 建設や改築の最中に行われる建物と構造物の内部清掃
- • 建物や建造物の内部または外面の塗装や装飾
サービスの提供にリバース・チャージの要素がある場合には、サプライチェーン全体が国内リバース・チャージの対象になります。
建設企業はどういった点を検討する必要がありますか。
建設企業は、自社の販売や購入に対する新ルールの影響、およびサプライチェーンにおける自社の位置付けを検討する必要があります。特に次の点に注意してください。
- • 自社の販売や購入を見直し、2019年10月からリバース・チャージの対象になるかどうかを確かめる
- • 該当する場合、自社の会計システムに必要な措置を検討する
- • 顧客からVATを受け取らないことでキャッシュフローに影響が出るか検討する
シャロン・ギリス
VAT パートナー
HMCE(現HMRC)にてVATアシュランス関連業務、その後多国籍企業や様々な分野の顧客へのVATの助言を専門とする。現在GBAのVAT部門に高い専門性と豊富な知識をもたらしている。