監査法人の選択:大手以外への変更について
当社は、大手企業の英国子会社で中堅企業です。サービス内容の変更は無いのですが、監査法人(国際的大手事務所)の料金が今年に入って大きく増加しました。しかし、監査法人の変更には不安を感じています。
この問題は貴社だけではありません。近年、有名企業の破綻が相次ぎ、そのため規制当局が一流とされていた監査法人を懲戒処分にしています。幅広い改革が検討され、それに合わせ大手監査法人がポートフォリオの見直しを行い、報酬の引上げや監査の取りやめまで行っています。
では、どう監査法人を選べばよいのでしょう。例えば子育ての経験のある人なら、学校選びの際に、単純に成績のみで選べないことに気付かれていると思います。実際に各学校にはそれぞれ特徴があり、子どもにもさまざまなニーズがあります。親が求めるべきなのは名門校ではなく、子どもに最も適した学校です。これは監査法人の選択にも当てはまります。
適切性という点から見て、求めるべき重要なポイントは何でしょうか。
まずは規模です。貴社は多国籍企業の一部ですが、おっしゃるように監査を受ける英国子会社は中規模なため、大手会計事務所とのミスマッチがあり不満が生じることがあります。しかし、一方で貴社と規模感が一致し、あなたが望むサービスを提供してくれる会計事務所もあるはずです。そして、多くの場合、費用の節約もできるかもしれません。
確かに規模感のマッチングの問題はあるかもしれませんね。
監査対応について最終成果物としての形に変わりはなくても、サービスの提供方法が大きく異なる場合はあります。またほかのポイントとしては、監査スケジュール合意の時期、税務やVATなどそのほかの業務についての対応、また対応窓口や固定担当者の有無が挙げられます。さらに日本語サポートが重要となる場合もあるでしょう。
そうですね。ただ小規模事務所は技術的能力が不十分では? という不安があります。
大手事務所は規模の観点から専門領域の広さが挙げられますが、税務や業界によっては細かい対応も多く、大手事務所とはいえ貴社の事情に適した専門家に担当してもらえるとは限らないといえるでしょう。大半の企業にとっては、ほかにも非常に能力の高い事務所の選択肢が豊富にあります。中・小規模会計事務所は、焦点を絞った取り組みの経験から、より適切なサポートが提供できることもありますし、また、必要なことだけにお金を払えば済みます。言うなれば、車の整備士とロケット科学者、それぞれに適した場面があるということになります。
そういうことですね。しかし本社としては、効率性を考えて同グループの監査法人にこだわっている印象もありますが……。
親会社の監査人は子会社の監査人に対して、連結決算の監査に必要な作業や報告について指示を出します。こうした指示は国際監査基準によって決められているため、業界全体でおおむね標準化されており、それぞれの監査人が同じ監査法人グループであろうがなかろうが、ほぼ同じです。ですから、効率性の点では特に変わりはないといえます。
なるほど、そういうことなのですね。考えさせられることがたくさんありました。ありがとうございました。
ジョン・フィッシャー
監査・会計 パートナー
Ernst & Young、野村證券を経てグリーンバック・アランへ。会計技術はもちろん、高度なビジネス日本語を操り、日系顧客から大きな信頼を寄せられる。日本語スピーチコンテストでは2年連続入賞。