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Sun, 08 December 2019

知って楽しい建築ウンチク
藍谷鋼一郎

ジョージアン様式

世界がルネサンス建築に沸くころ、英国ではその進行形とも言える英国特有のスタイル、「ジョージアン様式」が息吹をあげた。名前の云われは、ハノヴァ―朝の国王ジョージ1~4世から。18世紀に発達したこのシンプルなデザインは、特に英国式集合住宅の基礎として普及した。

タウン・ハウスとしてのプロトタイプ

ジョージアン様式
主階にあたる1、2階の窓は、他の階と比べ
より縦長なのが分かる

18世紀当時、ロンドンなどの都市部では人口が集中し始めていた。すると必然的に、限られた土地に複数の人間が効率的に暮らせる「テラス・ハウス」や「タウン・ハウス」と呼ばれる集合住宅が発達した。直線的、左右対称を基調としたシンプルな構成が基本のこれらは「ジョージアン様式」の長屋として英国内で広く普及することになる。日本の長屋と似ているが、日本の長屋が平屋建てを中心に発達したのに対し、英国では数階建てと縦長に発達したのが特徴的だ。

2階建て、3階建て、時には4階建てと、街区の規模に合わせて高さを自由に変えることができる縦長屋は、集合住宅のプロトタイプであると言える。このシステムはまっすぐな道でも曲がりくねった道でも対応できる上、お屋敷街などでスペースにゆとりを持たせたい場合は、2つのユニットを組み合わせた二戸建住戸(Semi Detached House)としても応用できるのだ。

ジョージアン様式の宝庫

ローマ人が入植したことでも知られる古都バースは、典型的なジョージアン様式のテラス・ハウスが並ぶ美しい街だ。ロンドンにあるジョージアン様式の建物は、ほとんどが赤や茶色のレンガむき出し、あるいは消石灰に大理石粉や粘土粉を混ぜたスタッコを表面に塗り上げた白亜のものだ。しかしバースでは一味違っていて、「バース・ストーン」と呼ばれる少し黄色がかった砂岩が使われている。石造の建物が少ないロンドンと比べると、そんなバースの街並みは独特の雰囲気を醸し出している。

また、ここでも縦長屋がプロトタイプとしていかに優れているかが証明されている。バースには、街の中心となる有名な広場がいくつかある。円形広場(サーカス)や三日月広場(クレッセント)と呼ばれる広場を中心に街区が形成されていて、それはロンドンの街並作りにも多大な影響を与えた。ロンドンでは「スクエア」と呼ばれる四角い広場の方がより一般的で、大英博物館周辺のベッドフォード・スクエアにはジョージアン様式の建物が軒を連ねていて、見応えがある。

ジョージアン様式
三日月形にテラス・ハウスが並ぶバースのロイヤル・クレッセント

都市を支える機能性

また、英国屈指の建築学校「AAスクール」は、連続するテラス・ハウスを改装し、校舎として利用している。住戸としてだけでなく、連結させることで学校やオフィスとしても十分機能するのだから、ジョージアン様式の長屋は都市の要素として、まさに「無敵」と言えるだろう。ちなみに往時のジョージアン様式における典型的な例を挙げると、半地下に台所と倉庫、1、2階にリビング、そして上階に使用人の部屋がある。主階の窓は他の階よりも背が高く、縦長のつくりを強調。デザイン的にも至ってシンプルで、後に続く装飾的なビクトリア様式とは一線を画している。

ジョージアン様式
(左)バース・ストーンの色が印象的なバースのテラス・ハウス(右)ロンドンでも多く見られるジョージアン様式の建物

 
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藍谷鋼一郎:九州大学大学院特任准教授、建築家。1968年徳島県生まれ。九州大学卒、バージニア工科大学大学院修了。ボストンのTDG, Skidmore, Owings & Merrill, LLP(SOM)のサンフランシスコ事務所及びロンドン事務所で勤務後、13年ぶりに日本に帰国。写真撮影を趣味とし、世界中の街や建築物を記録し、新聞・雑誌に寄稿している。
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