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Tue, 26 November 2024

育自の時間。親と子を育てる英国の学校

2002年に画家の夫とともに当時7歳の息子を連れてイングランド南西部コッツウォルズ郊外に移住。現地の小学校から大学受験までを実体験した母親の目から英国教育を見つめます。


第19回 驚きの英国中等教育 その2

すっかり夏らしくなってきました。ボーディング・スクールを始めとした英国の私立校は、既に夏休みに入っているところが多いと思いますが、公立校は日本とほぼ同じ、7月半ばから夏休みに入ります。この爽やかな時期は、授業はほどほどに、スポーツ・デー(英国式運動会)や、ジャパン・デー(日本文化を紹介するワークショップ)などのイベント行事が多くなります。

英国の小学校で体験した初夏の運動会では、日本でみられるような予行練習がないことに驚きましたが、中学ではこの「いきなり」がさらにエスカレートしていました。

遠い昔の自分の中学校時代を思い起こせば、放課後には「部活動」なるものがあり、それなりに忙しかったわけですが、英国の、少なくとも息子が通っていた公立中学校に「部活動」はほとんど存在していませんでした。

他方、私立校の場合は全寮制のところも多く、フィクションではありますが、J・K・ローリングの小説「ハリー・ポッター」シリーズに登場するホグワーツ魔法魔術学校で「クィディッチ」というスポーツ競技の課外練習が盛んだったように、日本の部活動に相当する放課後の活動も充実しています。この辺りは英国における私立校と公立校の、大きな違いの一つかもしれません。

そんなふうに「部活動」とは無縁だった息子ですが、ある日突然、「今度、陸上の県大会に出場することになったから、○日に競技場に連れていって」と、送迎のリクエスト。本人から話を聞いてみると、体育の授業時間にいきなり走り幅跳びを行い、たまたまそのとき、クラスの中では良い記録だったとのこと。ちなみに走り幅跳び経験は、後にも先にも、その授業だけだったとか……。

「陸上競技」と言えば、陸上部の生徒たちが日々鍛錬に鍛錬を重ね、選手に選ばれて競技大会に挑むのが当然のことと思っていたので、唖然とした出来事でした。ロンドン・オリンピックを数年後に控えていた時期だったこともあり、理解に苦しむこの状況は、やはり「天才肌」を見出すことに長けている英国だからなのか? と思ったりもしましたが、よくよく考えてみれば、選手を育てる予算も時間も公立校にはなかった、というのが本当のところなのかもしれません。

話は戻りますが、息子が英国の小学校時代に通っていたスイミング・スクールでは、1セッションがわずか30分。準備体操もなく、「いきなり」冷たいプールに飛び込み、ただただ泳がせるレッスン内容にも驚きました。日本では低学年でも1セッション2時間前後。ちゃんと事前に準備体操をして、様々な角度から水泳というものを楽しく教えてもらっていたころの息子の姿を思い出し、英国の、特に体育系の教育の「いきなり」には、いつも苦笑の連続でした。

カントリー・マラソン
小学校時代、「いきなり」のカントリー・マラソンで1マイル(約1.6キロ)を走ったのちにぶっ倒れている息子(笑)

 

小野まり小野まり NPO法人ナショナル・トラストサポートセンター代表。2002年、画家で夫の小野たくまさ氏とともに当時7歳の一人息子を連れコッツウォルズ郊外へ移住。現地の小・中・高等学校、大学受験を母親の立場として体験。教育関連の連載エッセイやナショナル・トラスト関連の著書多数。最新刊に「図説 英国ナショナル・トラスト (河出書房新社)」がある。
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