第206回 風が吹けば英国がもうかる
日本の牛丼は安くておいしいですよ、と英国人の若者に言ったら、牛肉の生産のために森林伐採が進み、気候変動が起きていることをどう思いますか? と逆に質問を受けてしまいました。地球温暖化阻止のために牛肉を食べない動きがデジタル世代と呼ばれる英国の若者の間で広がっています。確かにプラント・ベースド・ミートと呼ばれる代替肉がスーパーの店頭に多く並び、代替肉バーガー店もあちこちに開店しています。
代替肉バーガーの味はビーフ・バーガーと区別できないほど
牛肉の生産は環境負荷が高く、牛肉1キロを生産するために約23キロもの温室効果ガスを排出してしまうそうです。牛の飼育に必要な一連の工程からの排出に加え、反芻動物の牛のゲップに含まれるメタン・ガスが濃厚で、世界中の牛から排出されるメタン・ガスの量は年間20億トン、温室効果ガスの4パーセントを占めるとか。そして何よりも南米の4割の熱帯雨林が牛肉生産のための放牧地に変わり、地球温暖化や生態系の破壊が進んでいるそうです。
スーパーに並ぶ代替肉
また、冒頭の若者のスマホには支出するごとにその商品のカーボン・フットプリント(炭素排出量の換算値)が表示されるアプリがありました。自分の日常の炭素排出量を常にチェックして、それを減らそうとしているそうです。たとえば電力の消費を抑え、肉食の食事を控える。プラスチック製品を避け、エコバッグを持参して徒歩での移動を心掛ける。炭素排出の埋め合わせとして植林活動に寄付を行う、などなど。
牛のゲップからは濃厚なメタン・ガスが出る
こうした若者の行動を目の当たりにしますと、日常生活と環境問題が深く結びつき、それが大きな社会のうねりに転じていくような気がしてきました。対する英国政府の動きも俊敏です。19世紀のロンドンは霧の都といわれ、英国は石炭の世界最大消費国でしたが、北海に油田が発掘されると石油化を進め、気候変動問題が出れば洋上風力発電を積極的に進めています。
今や英国は洋上風力発電量では世界一
実はシティの労働人口がブレグジット後も増え続け、もう55万人を超えました。海外から優秀なIT技術者を集め、環境問題とフィンテックを組み合わせたグリーン・フィンテックでにぎわっています。環境問題に真剣に取り組む企業を積極的に金融支援し、投資家はその企業の株式投資を行います。企業経営と環境問題が結びつき、「地球に優しい」かどうかが厳しく選別される時代になりました。大きな変化が始まっています。
自分の炭素排出量を記録してトラッキングするアプリ
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