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Sat, 21 December 2024

第279回 英国船の歴史と大航海時代

前号ではノアの箱舟に防水用天然アスファルトが塗られていたことをお話ししました。思えば、松やにのタールを塗って多くの船を作ったのは9~11世紀にかけて活躍したヴァイキングでした。ヴァイキングの船はよろい張りといって薄い木材を重ね張りし、波の抵抗に対して船体がしなることが特徴です。張り合わさった部分には木釘ではなく、鉄釘が使われました。木釘では船がよじれたときに抜け落ちてしまうからです。

ヴァイキングの船体はよろい張り ヴァイキングの船体はよろい張り

ヴァイキング船のよろい張りを利用して12~15世紀ごろに北欧で活躍したのがコグ船です。コグ船はハンザ貿易の代名詞で、大きな四角い横帆の1本マストを前方に付けただけですが、陸に囲まれたバルト海では風が穏やかなのでそれで充分。穀物や木材、毛皮、ニシンを運搬していましたが、海賊に襲われないように船首や船尾にやぐらを作ってそこから矢を射って防衛したといわれます。そのためずんぐりとした体形の船になりました。

北欧の代表的な帆船コグ船 北欧の代表的な帆船コグ船

一方15世紀ごろ、風向きが不安定な地中海では操縦性の高いカラベル船が作られました。三角形の帆が3本のマストに張られ、逆風でも進める小型の船です。これはインド洋でアラブ商人が使うダウ船を真似したもの。「大航海時代の父」と呼ばれたポルトガルのエンリケ航海王子は、このカラベル船を使いアフリカ西岸を探索しました。後に、その地域と貿易して各海岸には奴隷海岸、黄金海岸、象牙海岸、胡椒海岸の名が付けられました。

北欧と南欧の船が統合したキャラック船 北欧と南欧の船が統合したキャラック船

そしていよいよ大航海時代が本格化します。欧州から赤道を南下するにはカラベル船では小さ過ぎました。何カ月も要する長い航海には多くの荷物を積まなくてはなりません。そこで、安定性のある北欧のコグ船と操縦性の高い南欧のカラベル船を組み合わせたキャラック船が作られました。3~4本のマストに複数の横帆、縦帆、三角帆を張り、船首楼と船尾楼に高い櫓を設け、耐久力、輸送力、操縦性が当時最も優れた大型の船です。

南欧の代表的な帆船カラベル船 南欧の代表的な帆船カラベル船

こうして北欧と南欧の船の技術がスペインとポルトガルで統合され、コロンブスが西インド諸島を、ヴァスコ・ダ・ガマがインド航路を発見し、マゼランが世界を一周することができました。さらに16世紀に風の抵抗を抑えるために船首楼を低くして、大型にしたのがガレオン船で、その舷側に多数の大砲を装備して戦艦を作ったのが英国のヘンリー8世です。海の戦いは接近してからの移乗戦法から遠方からの砲撃戦に変わり、英国が七つの海を駆け巡る時代がやって来ました。船も技術革新の積み重ねです。

舷側に大砲を備えた英国ガレオン船の戦艦 舷側に大砲を備えた英国ガレオン船の戦艦

*船舶は全てグリニッジ海事博物館蔵。寅七撮影

寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」もお見逃しなく。

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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