日照時間が延びるこれからの季節、英国を飛び出して、
思う存分に太陽の光を浴びてリフレッシュしたい
―――そんなあなたにお勧めしたいのが、
南仏らしい穏やかさと港町の活気を併せ持つ
フランス第2の都市、マルセイユ。
日光の力でエネルギーをチャージしたら、
マルセイユが誇る文学、
建築、そして食の世界を堪能しよう!
(フランスニュースダイジェスト: Kei Okishima)
港町を見守ってきた800年の歴史
旅の始まりはノートルダム・ド・ラ・ガルドから
19世紀まで、貿易の中心地として栄えたマルセイユ。旧港の南の丘、147.85メートルの高台にノートルダム・ド・ラ・ガルド寺院(Notre-Dame de la Garde)はそびえる。現在の寺院は19世紀に建築家エスペランデュによって建てられたものだが、歴史をたどれば基となった寺院は、1214年に丘の上に建てられていた。今年、誕生から800年を迎える。寺院の上には黄金に輝く9.72メートル、重さ約1トンの聖母マリア像が町を見下ろすように立っている。この黄金に輝く聖母マリアは「ボンヌ・メール(良き母)」と呼ばれ、これまで漁を、町を、そして住民を見守ってきた。内部のモザイク装飾は圧巻。内部には天井から幾つもの船がつる下げられていたり、海にまつわる絵画などが飾られていたりと、漁や平癒に対する感謝の気持ちから納められた奉納品が飾られている。ここから見るマルセイユは絶景。市内から徒歩で来るには、かなりの坂道を登ることになるので、バスが便利。
Basilique Notre-Dame de la Garde
Rue Fort du Sanctuaire 13281 MarseilleTEL:+33 (0) 4 91 13 40 80
開館時間:10月~3月 7:00~18:15 / 4月~9月 7:00~19:15
交通:Vieux-Portからバス 60番で、ノートルダム・ド・ラ・ガルドのパーキングまで。
www.rtm.fr
小説の舞台で一休み
モンテ・クリスト伯の舞台、イフ島へ
1529年、フランソワ1世が町を守るための要塞として建設したイフ島の城、シャトー・ディフ。その後、逃亡不可能な建築スタイルと立地から、監獄として使用されるようになった。フランス革命のリーダーとなったミラボーもここに監禁され、「専制政治論」を完成させた場所として知られている。また、作家アレクサンドル・デュマは、フランスの新聞「ジュルナル・デ・デバ」に連載した「モンテ・クリスト伯(巌窟王)」の小説の舞台にシャトー・ディフを選んだ。主人公、エドモン・ダンテスは無実の罪でシャトー・ディフに投獄され、14年間をこのイフ島で過ごしたという設定だ。シャトー・ディフの窓からは、マルセイユの高台にそびえるノートルダム・ド・ラ・ガルドが見える。
Château d'If
Embarcadère Frioul If1, Quai de la Fraternité, 13001 Marseille
4月1日~5月15日 9:30-16:45、
5月16日~9月16日 9:30-18:10、
9月17日~3月31日 9:30-16:45(月休)
アクセス
マルセイユ市内からイフ島までは旧港からフェリーで約20分
イフ島行きのフェリー
Frioul If ExpressTEL:+33 (0) 4 96 11 03 50
www.frioul-if-express.com
ル・コルビュジエの集合住宅を体感
Unité d'Habitation
20世紀最大の建築家と言われるル・コルビュジエが建てた巨大な集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」。中でも一番初めに建てられたマルセイユのユニテ・ダビタシオンは、今日でも世界中の人を魅了している。
この集合住宅は戦後復興期の1947~52年、理想的な生活のスタイルを実現するために作られた。137メートル×56メートル×24メートル、18階建てという巨大な建物の中には23種類の異なる部屋のタイプがあり、1600人が生活することができる。この集合住宅は一つの玄関ホールから出入りするようになっており、建物全体が一つの小さな町のようなコンセプトで作られている。1階部分はピロティになっていて、この巨大な建物を柱がしっかりと支えている姿は圧巻。ピロティのお陰で自転車を置いたり、自由に通り抜けることができたりと、ゆったりとしたスペースが確保されている。多くの部屋がメゾネット形式になっているため、エレベーターは3階、6階のように数階ごとに停止するのも特徴の一つ。中間階には共同のスペースや店舗があり、屋上にはプールや運動ができる場所などが設置されている。屋上ではマルセイユの空、海、山、そして太陽を満喫できる。
コルビュジエの建築内で宿泊
ユニテ・ダビタシオンの見学は、個人で見る分には無料で、売店などがあるエリアや屋上を見学することができる。しかしこの世界にゆっくりと浸りたい建築ファンやコルビュジエファンにお勧めなのが、同集合住宅内にあるホテルだ。部屋は16 平方メートルまたは32 平方メートルがあり、1~ 4 人まで宿泊可能。世界中のファンが予約をする人気ホテルなので、旅が決まったら早めに予約を取ろう。
ユニテ・ダビタシオン内にはミシュラン・ガイドにも紹介されているレストラン「Le Ventre de l'Architecte」がある。宿泊が難しい人は、こちらでゆっくりと食事を堪能してみては?
Unité d'Habitation
280, Boulevard Michelet 13008 Marseille個人での見学(共有部分のみ可能)
毎日9:00-18:00ガイド付き見学
火~土 14:30~、16:30~(各1h30、要予約)www.marseille-tourisme.com
(Visites-GuidéesからLe Corbusier en exclusivitéを選択)
ホテル
Hôtel Le CorbusierTEL:+33 (0) 4 91 16 78 00
www.gerardin-corbusier.com
レストラン
Le Ventre de l'ArchitecteTEL:+33 (0) 4 91 16 78 23
www.leventredelarchitecte.com
アクセス
マルセイユ駅から地下鉄2番線(Dromel方面)Rond Point du Prado駅下車。その後21番、22s番、22番、22S番のいずれかのバスでLe Corbusier駅下車。
肌が喜ぶ植物オイル
職人が作るマルセイユせっけん工場を見学
マルセイユのせっけんは、植物性のオイルと苛性ソーダを混ぜたもの。ルイ14世の時代の1688年10月5日、財務総監を務めていたジャンバティスト・コルベールにより、原料の油脂はオリーブ・オイルにすることなど、マルセイユのせっけん作りの製法が定められた。現在でも伝統的な方法で作られているマルセイユせっけんは、72%の植物オイルを含んでおり、かま炊きけん化法で植物オイルとソーダを煮詰め、その後、塩水で不純物を取り除くなど、約80時間の行程を経て生み出されている。
マルセイユせっけんを代表する「植物油脂72%」と刻印された600gのせっけんは、お土産にぴったり。ほかにも、南仏で特に有名なスポーツ、ペタンクの形をしたせっけんや、パスティス(後述)の香りがするせっけんなどもお勧めだ。また、特別注文で、結婚式の引き出物用に名前が刻印されたせっけんを注文する人や、生まれた赤ちゃんと同じ重さのせっけんを記念に作って欲しいという依頼を受けることもあるのだそう。面白いアイデアがあれば、ぜひ事前に問い合わせをしてみよう。
左)圧延機に掛け、せっけん素地を均一にしている 右)最後に丸いせっけんの形にプレスする
せっけん作りを見学できるお店
Savonnerie Marseillaise de la Licorne34 Cours Julien 13006 Marseille
TEL:+33 (0) 4 96 12 00 91
www.savon-de-marseille-licorne.com
せっけん作り見学: 11時、15時、16時(日祝以外)、無料
憲章で守られている伝統スープ
ブイヤベース(La bouillabaisse)
その昔、漁師たちが売れそうにない魚や売れ残った魚などをスープにして食べたことから始まったブイヤベース(La bouillabaisse)は、今やマルセイユの代表料理として知られている。伝統的なマルセイユの本格派ブイヤベースは1980年に制定された「ブイヤベース憲章」で守られており、材料や調理法には決まりがある。魚は地中海の岩礁に生息するもので、ホウボウ、アンコウ、マトウダイ、カサゴ、足長ガニなどの中から4種類以上の魚を使わなければならず、エビ類や貝タコ、イカなどは入れない。ベースとなるスープは決められた小魚でだしを取ること。ほかに使用される材料は、塩、タマネギ、コショウ、パセリ、じゃがいも、ニンニク、オリーブ・オイル、サフラン、フェンネル、オレンジの樹皮など。ルイユという特製のソースと、ニンニクの香りが付けられたクルトンと一緒に提供される。最初にスープのみを客に出し、その後に魚を別の皿に盛り、提供するというのが基本的なパターンだ。
市街には複数のレストランがブイヤベースを提供しているが、きちんと料理をしているレストランでは待ち時間も長いので、余裕を持って行こう。また、量もかなり多めなことをお忘れなく。
お薦めレストラン
小さな港の前にあり、マルセイユの雰囲気にゆっくりと浸りながら静かに過ごすことができるレストラン。
Chez Fonfon
140, Vallon des Auffes 13007 Marseille
TEL:+33 (0) 4 91 52 14 38
www.chez-fonfon.com
気になる伝統料理・菓子
Pieds et paquets
ピエ・エ・パケ
羊の足と内臓をワインとトマト・ ソースで煮込んだ伝統料理。
Navette
ナヴェット
舟の形をしたビスケット。通常はクレープを食する2月の聖燭節(キリスト教の祭)にナヴェットを食べる習慣も。
ご当地ものにこだわってマルセイユでアペリティフ
アペリティフの歴史をたどっていくと、古代ローマ時代から存在していたことが分かる。古代ローマ人は食欲を増進させるため、食事の前に少しアルコールを含む特別な効能を持った飲み物を飲む習慣があった。アペリティフという言葉の語源は、ラテン語の「aperire =開く」というもの。この伝統は世紀を越えて受け継がれ、19世紀には食前に飲むすべてのアルコール飲料のことを「アペリティフ」と呼ぶようになった。マルセイユではアペリティフはとても大切。カフェやバーで、また友人を自宅に招いてゆったりとしたアペリティフの時間を楽しんでいる。日が長くなるこれからのシーズン、テラスのあるカフェでゆっくりと楽しもう。
マルセイユ生まれのリキュール「パスティス」
マルセイユのアペリティフとして欠かせないのが、マルセイユ生まれのアルコール、「パスティス(Pastis)」だ。パスティスの前身とも言われるのが、19 世紀、フランスの芸術家たちを魅了したアルコール「アブサン」。強い陶酔感と興奮をもたらすアブサンは、ゴッホ、ゴーギャン、ピカソ、ロートレック、ランボー、ボードレールなど、フランスにいた多くの芸術家を魅了した魔のお酒と言われている。しかし20 世紀に入りアブサンの製造が禁止され、その代わりにポール・リカールがアブサンの製法を改良して作ったのがパスティスだった。スターアニスやフェンネル、リコリスの香辛料が強いため、スーッとした後味が爽快感を与える。ちなみに「Pastis de Marseille(マルセイユのパスティス)」と表記するためには、アルコール度が45% 以上で1リットル当たり、2 グラム以上のアネトール(アニスの主成分)が含まれていなければならない。パスティスは水割りで飲むのが一般的で、水を入れると白く濁るのが特徴。慣れてきたらカクテルにも挑戦しよう。有名どころでは、グレナデン・シロップ(sirop de grenadine)を加えたLa tomate、ミントのシロップ(sirop de menthe)を加えたLe perroquet など。
マルセイユご当地ビール「ラ・カゴール」
マルセイユにノスタルジックな思いを抱える幼なじみの友達2 人が作ったビール・メーカー、「ラ・カゴール(La Cagole)」。ビールの色はマルセイユの旧港の水の色と同じだとか! 初めはパニエ地区の小さなブラッセリーで作られたそうだが、今やマルセイユのご当地ビールとして浸透し、市街のブラッセリーやバー、スーパーで購入できる。
www.lacagole.com
マルセイユ発の炭酸飲料「ファダ・コーラ」
お酒はちょっと、という人には、マルセイユ発の炭酸飲料水「ファダ・コーラ(Fada Cola)」を。レモネードなどの炭酸飲料を展開している。ラ・カゴールも、ファダ・コーラも、パッケージのイラストがかわいいので、ちょっとした手土産にも喜ばれるかも。
www.fadacola.fr
ロンドンからの行き方
ロンドンからマルセイユまでは飛行機の直行便を利用するのが便利。ロンドンの各空港からマルセイユ・プロヴァンス空港までは格安航空便も飛んでおり、約2時間で到着する。同空港から市内までは、シャトル・バスでマルセイユ・サン・シャルル(Marseille-Saint-Charles)駅まで約30分、またはタクシー。
パリ旅行と併せてマルセイユも訪れたい、という場合には、フランス国鉄(SNCF)が昨年、営業を開始した格安列車ウイゴー(OUIGO)を利用する手もある。パリとリヨン、ヴァランス、アヴィニョン、エクス・アン・プロヴァンス、マルセイユ、ニーム、モンペリエを結んでおり、チケット料金は最安値のものだと片道10ユーロから販売している。所要時間は3時間強。ただし、パリの駅はRER線のマルヌ・ラ・ヴァレ・シェシー(Marne-la-Vallée-Chessy)駅となるので要注意。
OUIGO公式ホームページ www.ouigo.com