ニュースダイジェストの制作業務
Sat, 20 April 2024

欧州のあったか料理で温まろう

日本に負けないくらい寒い欧州の冬。ならば「食べて体を内側から温めよう」ということで、新年1号目は食べることが大好きなダイジェストの各国編集部が、現地ならではのあったか料理をご紹介します。あったか料理を極めた偉人の物語から、新年のパーティーにぴったりの欧州各地あったかレシピの紹介、そして懐かしき日本各地の鍋一覧まで総ざらい。ホカホカになるまでたっぷりとご堪能ください。(本誌各国編集部)

あったか料理を愛した偉人たち

肉食文化の欧州では、焼いたり、あぶったり、ぐつぐつと煮込んだりして作る料理に関するエピソードに事欠かない。歴史に名を残してきた偉人たちにまつわるものはその中でも最たるものであり、ある者は独自レシピを編纂し、ある者は料理そのものに自身の名を残し、またある者は調理を終えた後、その命を絶った。ここでは、あったか料理を愛したそんな偉人たちの物語を追う。

「大食漢」と呼ばれたイングランド王
リチャード2世 (1367~1400)

リチャード2世英国の「あったか料理を愛する人」代表は、14世紀のイングランドを支配したリチャード2世。彼は下層階級から莫大な税金を徴収する一方、自身は華麗な服装に身を包み道化師と戯れながら、毎晩のように1万人に及ぶゲストを招待して宴を催す、中世における典型的なお祭り好きの王として知られていた。当時英国で一番のグルメでもあった彼は、宮殿内に2000人もの料理人を雇用。後の歴史家からは「キリスト教圏にある王の中では、歴史上一番の大食漢」と呼ばれるほどだった。

そんな彼が最も愛したメニューの1つが、「ハーブとニンニクを使ったハトのシチュー」と題されたあったか料理。205種類に及ぶ王家レシピを彼自身が編纂した英国史上初の料理本には、この料理について以下のような記述がある。「まずはパセリ、タイム、ニンニクをハト肉にまぶす。そして脂分を落としてハト肉をこんがりと焼く。ハト肉をお鍋に移してショウガ、酢と砂糖を混ぜてゆで上げる。ハト肉を取り出し残りの湯にサフランを入れてぐつぐつと煮込み、パン粉をまぶしたら特製スープの出来上がり。ふた切れのトーストされたパンを添えれば、おかず要らずの完璧なスープである」。

ちなみにリチャード2世は1399年、敵対する各地諸侯たちによって構成された反乱軍に捕らえられ、身柄を各地に移され拷問を受けた後に最後は餓死してしま う。「歴史上一番の大食漢」であった王としては、何とも皮肉な運命と言っていいだろう。

あったか料理を残し命を絶った宮廷料理人
フランソワ・ヴァテール (1631~1671)

フランソワ・ヴァテール1671年4月、太陽王ルイ14 世が隆盛を極めるフランス。重職から外された年老いた英雄コンデ大公は、国王に再び取り入ろうとシャンテ ィイ城において後世に伝わる 3日3晩の饗宴を開いた。この時ヴァテールは、料理人としてコンデ公に仕えていた。

フランス代表ヴァテールを一躍有名にしたエピソードが、2日目の料理でヴァテールを天才と絶賛した国王がコンデ公とヴァテールを賭けたトランプ・ゲームだった。ゲームに勝った国王は、彼をヴェルサイユの宮廷料理人として召し抱えることに成功する。しかし、ヴァテールは忠誠を誓ったコンデ大公に我が身を売られたことを深く悲しみ、さらには晩餐のメイン料理であった鶏のローストがテーブル2つ分足りないという予想外の出来事に打ちひしがれることになる。極めつけは宴3日目の朝、晩餐の材料となる魚が届かない。理想としていた完璧な料理を出せないことに絶望し自らの運命を決意、シャンティイ城の自室にて自害して果ててしまう。程なくして魚が届いたことを知らずして……。

彼の最後を飾った宴で出されたあったか料理が、鶏のローストだった。フランスでは一般的に、1Lの水にタイム、セージ、ローズマリー、ベイリーフを入れ水から煮出す。最後に多目の塩を加え、火を止めて十分に冷まし、そのマリネ液に鶏丸ごと1羽とスライスしたニンニクを漬け込むこと1時間。それを180度のオーブンで約1時間焼く。300年前の宴に思いを馳せて味わって見るのも一興か。

写真)映画「ヴァテール」で宮廷料理人ヴァテールを演じたフランスの 俳優ジェラール・ドパルデュー。

あったか料理に名を刻む鉄血宰相
オットー・フォン・ビスマルク (1815~1898)

ビスマルクドイツ代表は19世紀に統一ドイツ初代の首相であり、鉄血宰相として世界史の教科書などでもすっかりお馴染みのオットー・フォン・ビスマルク。いかめしい顔付きからはなかなか想像がつきにくいが、かなりの美食家だったようだ。朝夕食はそれぞれ5品のフルコース・メニューで、朝食には卵16個、夕食には生牡蠣を一度に175個も食べ、「軽い」昼食でもキャビアや燻製うなぎをメインに食べていたというから、64歳で体重124キロを超え、医者から厳しいダイエット を申し渡されたというのも無理はなかろう。

その美食ぶりを象徴するかのようにビスマルク・ニシン(Bismarck-Heringe)など500以上の料理にビスマルクの名前が冠されているが、その内の1つにビスマルク・ラグー*(Bismarck-Ragout)がある。角切りにした牛、豚、羊肉をセロリやジャガイモ、タマネギ、キャベツといった野菜や牛の骨髄をタイムなどのハーブや塩コショウで味付けし、約2時間近く煮てアツアツを楽しむシチューは、元来バイエルン州に伝わる典型的な農夫の料理。だがビスマルクが長い闘病生活後にこのシチューを嬉々として平らげたことから、この名前で呼ばれるようになった。

戦争に明け暮れ、ストレスの多い政界に身を置き、美食を重ねつつも83歳まで生きたビスマルク。栄養バランスの取れたこのシチューなくしては、平均寿命50 歳の当時にこのような長命ぶりを発揮することは難しかったかもしれない。

*ラグーとは、数種類の野菜や肉を強い香辛料入りのソースで煮込んだフランス風のシチューのこと


欧州あったか家庭料理レシピ

イギリス

じっくり時間をかけるほどおいしい
オックステイル・シチュー Oxtail Stew

オックステイル・シチュー

オックステイルとは、その名のとおり牛の尾のこと。以前は雄牛のみを指していましたが、現在は性別を問わず、子牛を含む牛全般の尾肉を意味します。オックステイルは牛肉よりも安く手に入るため、昔は生活に苦しむ人々の胃袋を満たすものでした。しかし最近、コラーゲン(ゼラチン質)や筋肉の繊維質などを多く含むその栄養価の高さや、豊富な脂肪分から抽出される香り高いストックなどが注目され、再び人気のメニューとなっています。調理法としては、肉自体が非常に硬いため、スープやシチューなどのロング&スロークックが最適。英国の長く寒い夜、身体を芯から温めてくれるウインター・ミールの一品です。

 
 
材料(4人分)
オックステイル
(関節で切ったもの)
約1.3kg
(3lbs)
タマネギ(細かく刻んでおく)
大1個
スープ・ストック
(ビーフまたはチキン)
2カップ
ニンニク(細かく刻んでおく)
1片
ニンジン、セロリ、パースニップ、
ターンニップなどの野菜
(乱切りにしておく)
あわせて
2~3カップ
レーズン
1/2 カップ
バター
1/4カップ
タイム
1枝
1カップ
小さじ1
ローリエ
1枚
赤ワイン
2カップ
小さじ1
コショウ
小さじ半
 
 

1オーブンを170度に温め、オックステイルに軽く塩コショウをふっておく。ダッチ・オーブン(鋳鉄製の鍋)に油を熱し、オックステイルを入れ、肉の全体に焼き色をつける。タマネギの1/4を加え、透明になるまで炒める。 1
   
2別の鍋にスープ・ストック、赤ワイン、水を温め、これをオックステイルの鍋に加える。塩コショウを加え、中火で周りがぐつぐつとなるまで煮込む。 2
   
3鍋にしっかりと蓋をして、オーブンに入れる。3時間後、一旦オーブンから取り出し、残りのタマネギ、野菜、レーズン、トマトピューレ、ニンニク、タイム、ローリエを加え、よくかき混ぜてオーブンに戻し、さらに1時間煮込む。 3
   
4オーブンから取り出し、2、3分おいて、表面に浮いてきたあくを取り除く。 4

イギリス

旬の味覚を楽しもう
ポットロースト・パートリッジの
サヴォイ・キャベツ添え
Roast Partridge with Cabbage

ポットロースト・パートリッジのサヴォイ・キャベツ添え

英国で人気の狩猟鳥のひとつ、パートリッジ(ヤマウズラ)。パートリッジには英国原産のグレイ・レッグと17世紀にフランスから持ち込まれたレッド・レッグの2種類があり、小さいながらも独特の味と香りを持つグレイ・レッグの方が好まれています。脂肪分が少ないので、ロースト(特に若い鳥)、シチューまたは蒸し煮などに最適。一旦炒めてその味と肉質を引き締めてから鍋でローストするので、このレシピはマッシュド・ポテトやゆでポテトが付け合わせとしてよく合います。ただパートリッジ自体はそれほど大きな鳥ではないので、ひとり頭で1羽を用意しましょう。

 
 
材料(4人分)
パートリッジ(ヤマウズラ)
(ももと胸にさばいておく)
4羽
スモーク・ベーコン
150g
エシャロット(皮をむいておく)
16個
ニンジン(拍子木切りにしておく)
2本
チキン・ストック
150ml
サヴォイ・キャベツ
(外側から2~3枚を取り除き、
中身を8等分にくし切りしておく)
1個
ムキ栗(水煮)
200g
ニンニク(みじん切りにしておく)
1片
オリーブ・オイル
大さじ1
ローリエ
2枚
小さじ1
黒粗引きコショウ
適量
 
 

1オーブンを160度程度に温めておく。鍋にオリーブ・オイルを熱し、パートリッジの表面全体の色が変わるまで炒める。 1
   
2パートリッジを鍋から取り出し、同じ鍋でベーコンを炒める。さらにバター、エシャロット、ニンニク、ニンジン、ローリエを加え、野菜がしんなりするまで中火で炒める。 2
   
3パートリッジを鍋に戻し、ストック、塩小さじ1、黒コショウをたっぷりと加える。鍋にふたをしてからオーブンに入れ、20~30分煮込む。その間に、 別の鍋に塩を少々入れたお湯を沸騰させ、キャベツ を入れ2~3分ゆで、流水にさらしておく。 3
   
4オーブンから鍋を出し、パートリッジを鍋から取り出して、温かい場所に置いておく。鍋にキャベツと栗を加え、出汁を1~2回上からかけ、キャベツに完全に火が通るまで5分ほど直火で煮込む。キャベ ツ、野菜を皿に盛り、その上にパートリッジを乗せて出来上がり。 4

フランス

ワイン風味豊かな鶏肉料理
コック・オ・ヴァン coq au vin

コック・オ・ヴァン

コック・オ・ヴァンとは直訳すると「雄鶏のワイン」、つまりワイン仕立ての鶏肉料理のこと。赤ワイン(黄ワインの場合もある)とキノコを使っていることが特徴です。料理名の通り肉のコクと獣肉に近い触感がある雄鶏を使うのが理想ですが、入手困難な為、今回雄鶏は肉屋でも手に入るブレス産の鶏を使います。ブレス産の鶏は唯一産地統制(AOC)に従った飼育法を実地しており、十分に屋外で運動させるので筋肉が発達して肉の色ツヤ、風味が絶品です。圧力鍋で調理すると効率が良いのですが、出来上がった後にふたを外して弱火でさらに30分ほど煮込むとソースの味わいが深くなります。付け合わせにはローストしたポテトかパスタが合います。

 
 
材料(4人分)
雄鶏(またはブレス産鶏)
1羽
ニンジン
5本
タマネギ
中4個
ニンニク
2片
マッシュルーム
中20個
ラルドン(ベーコン)
100g
バター
少々
ローリエ
2葉
料理用赤ワイン
1L
ワイン・ビネガー(あるいはバルサミコ)
20cc
小麦粉
少々
塩、コショウ
適量
 
 

1まずは材料を下ごしらえ。ニンジン、タマネギ、マッシュルームは食感が残るようザックリと切る。8つに切り分けた鶏肉は塩コショウをかけて小麦粉をまぶす。 1
   
2細かく刻んだニンニク少々とバターを熱し、小麦粉をまぶした鶏肉の表面を焼き、焦げ目をつける。ローリエの葉も同時に炒めるとなお良い。 2
   
3ラルドンを刻んだニンニクと一緒にバターで炒め、下ごしらえした材料を合わせて軽く炒める。この時、あくまでも馴染ませる程度に軽く。その後②の鶏肉とローリエを合わせて赤ワイン1Lとワインビネガー20ccを注ぎ、圧力釜では20分、厚手の鍋なら1時間30分じっくりと煮込む。出来上がったら必ず火を止め一度冷ますこと。そうすることで食材の中にソースが滲み込み、うまみが増す。 3

フランス

「酸っぱいキャベツ」の煮込み料理
シュークルート Choucroute

シュークルート

シュクルートの語源はドイツ語の「Sürkrüt」から来ており、意味は「酸っぱいキャベツ」。一般に知られるレシピでは白ワインで煮込みますが、酸味が弱くしっかりした味わいに仕上がるビールで煮込む方法を今回は御紹介します。ポイントは豚肉の塩抜きをしっかり行うことと、シンプルな料理だけに素材の持ち味を生かした控えめの味付けにすること。キャベツは本来じっくりと発酵させるのですが、家庭料理では時間がかかりすぎるので、市販の缶詰か、お総菜屋さんで量り売りの物を購入するとお手軽。あとは材料をすべて合わせてコトコト煮るだけ、東フランスの家庭風にジャガイモを一緒に煮付けることで全体に味が染み渡りさらに食が進むこと請け合いです。

 
 
材料(4人分)
シュークルート(キャベツの酢漬け)
1缶
タマネギ
2玉
クル・ドゥ・ジロル(丁子)
2個
ジュニエーブル(ねずの実)
好みで適量
ブーケガルニあるいはローリエ
2葉
ジャガイモ
8個
プティ・サレ(豚肉の塩漬け)
500g
フランクフルト・ソーセージ
4本
モンベリヤー・ソーセージ
2本
ビール
2L
ラルドン(ベーコン)
塊で200g
コショウ
適量
 
 

1まずはプティ・サレの下準備。豚肉を一昼夜真水に浸して塩抜きする。 1
   
2缶詰めのシュークルートとローリエ、丁子を刺したタマネギを鍋に空け、ビールを注いで加熱する。 2
   
3皮をむいたジャガイモとプティ・サレ、ソーセージ、ラルドンを入れる。ふたをして中火で2時間ほど煮て、すべての食材に十分に火が通れば出来上がり。粒マスタードと共にいただく。 3

ドイツ

体の芯から温まるポテト・グラタン
カルトッフェルアウフラウフ Kartoffelauflauf

カルトッフェルアウフラウフ

ドイツ料理と言えば、やっぱりジャガイモとソーセージ。でも実はドイツの1人当たりのじゃがいも消費量は、東欧諸国の半分、英国と比べても6割程度なのです。しかし、季節や庶民の生活に根付いた料理の多様性ということでは、さすがドイツ。夏は酸味の効いたサラダ、冬は風物詩でもある、芋をすって焼くライベクーヘンがあります。付け合わせにしても、ゆでる、炒める、揚げるはもちろん、パンケーキ風、テニスボール大の団子など枚挙にいとまがありません。そして、寒い冬のおすすめメニューが、今回ご紹介するカルトッフェルアウフラウフ。体の芯から温まるホクホクのグラタンです。

 
 
材料(4人分: 直径25cm型)
ジャガイモ
800g
おろしたチーズ
100g
ベーコン・ビッツ
40g
ニンニク
大4片
牛乳
150ml
生クリーム
150ml
バター
少量
塩、コショウ
少々(控えめに)
 
 

1まずは下準備。オーブンを200度に温め、耐熱皿にバターを塗り、底にチーズを少量敷く。ニンニクはつぶしておく。写真のようなニンニクおろし器がない場合は、細かく刻むか、スライスにしてもよい。 1
   
2皮をむき、3ミリ厚に切ったジャガイモを並べる。ジャガイモの各層に、つぶしたニンニクとチーズをちらす。 2
   
3ジャガイモを並べ終わったら(3~4段)、一番上に残りのチーズとベーコン・ビッツを乗せる。そして、牛乳と生クリームと塩コショウを混ぜたものを上からひたひたになるようかけ、オーブンへ。 3
   
4待つこと約45分。溶けたチーズに焼き色がついたら表面をアルミホイルで覆い、さらに20分で出来上がり。熱いうちに食卓へ。 4

ドイツ

隠して食べた水餃子
マウルタッシェン Maultaschen

マウルタッシェン

南西部シュワーベン地方の料理でこんな言い伝えがあります。「昔々、戦争が続き、食べるものも着るものもない厳しい冬。修道院の猟師が幸運にも森で1匹の野獣を仕留めました。これは神様からの贈り物に違いない。猟師は喜びました。しかし、折しも断食の季節。カーニバルの後から復活祭までの40日間、ドイツでは粗食に努め、ご馳走を食べてはいけないことになっています。どうしたものかと悩んだ猟師は、小麦粉の生地の中に肉を隠して食べることを思いつきました……」ドイツのスーパーではレトルトでも売っているけれど、手作りの味は格別。寒くて外で遊べない子供たちとわいわい言いながら作ると楽しい料理です。ひき肉の代わりに、細かく刻んだほうれん草を入れたり、余りものを活用したりしてもおいしく出来上がります。

 
 
材料(4人分)
生地:
1個
 
少々
  小麦粉
200g
 
小さじ1
 
50ml
フィリング: タマネギ
大1/2個
  マッシュルーム
100g
  ランドイェーガー
(四角い棒状のソーセージ。
サラミでも代用可)
60g
  豚ひき肉
200g
  パン粉
60g
 
1個
  パセリ
少々
  コショウ、ナツメグ
少々
  バター
20g
スープ:
1.5L
  市販ブイヨン
1L
 
 

1まず生地作り。卵、酢、塩、水を混ぜ合わせ、小麦粉を加えてこねる。まとまったらラップでふたをし、30分寝かせておく。 1
   
2その間にフィリングの準備を。タマネギ、マッシュルーム、ランドイェーガーはみじん切りにし、タマネギとマッシュルームはバターで炒める。冷めたら残りの材料を加えてよくこね合わせる。 2
   
3生地を薄く伸ばし、お椀などで丸く型抜きする。12×12cmくらいの四角に切り分けてもOK。中央にフィリングを乗せ、半分にたたむ。合わせ目は水をつけて閉じ、フォークでしっかり押さえつける。 3
   
4湯を沸かし、ブイヨンを溶いたものの中に、③で出来たマウルタッシェンを入れて10分間ゆでる。器に盛り、仕上げにパセリを散らして出来上がり。 4

 

 

欧州人が語る日本のお鍋
日本人にとってのあったか料理といえば、やはり鍋料理。 地域によって様々なバラエティがあるため、思わず故郷の風景と共に郷愁を掻き立てられてしまう人もいるはず。ここではこれら懐かしき日本の郷土鍋を振り返ると共に、日本のお鍋に一家言ある欧州の一般市民にインタビュー。鍋料理を通して見える日本像に迫ってみます。

クレイグ・ウィットニーさん「お鍋を食べる 日本人が好き」
クレイグ・ウィットニーさん
(ロンドン在住)
まだ日本で英語教師として働き出したばかりで、すべての出来事を新鮮で刺激的に感じていた頃に、英語学校のスタッフ一同揃っての鍋パーティーが開催されたんです。その時に日本の鍋料理を初体験したのですが、とても寒い季節に子供のように皆一緒になって、しかもあんなに楽しそうに料理を食べる日本人ってなんて素敵なんだろうって思ったんですよね。


ゼビア・セルナンデスさん「鍋の親善大使を しています」
ゼビア・セルナンデスさん
(ロンドン在住)
日本の鍋料理については、日本に行く前に旅行ガイドブックで勉強しました。日本に着いて間もなくして、知り合いの家で念願のちゃんこ鍋を初めて食べたのです。あんなに社交的な料理ってなかなかないですよね。英国に戻ってからは、鍋の親善大使となって、日本には「NABE」という身も心も温まる、冬のシチューがあるんだって宣伝しているんです。


ヴォルフガンク・ズルゲスさん「猫舌の私には不利」
ヴォルフガンク・ズルゲスさん
(デュッセルドルフ在住)
ガスコンロを使って室内で火を使うことについて安全性の面で気になったこともありましたが、暖房設備が整っていない日本の冬に体を温めるには鍋料理が一番ですね。色々な具材が入っている栄養満点のこの料理は、日本文化が誇るものの1つではないでしょうか。ただ私は猫舌なので、冷ましている間に他の人に大好きな具(すき焼きの肉)をどんどん取られてしまうのが悔しいです。


イングリット・シューレンベルク「準備が簡単だかららくちん」
イングリット・シューレンベルクさん

(ヘンネフ在住)
主婦にとって鍋料理の良いところは、具材を切って並べておくだけという簡単な準備だけで済むという点ですね。きっと皆で料理を作りながら食べるところに鍋料理の楽しさがあるからでしょう。あとはそれぞれの家庭に「鍋奉行」がいて、味付けから、どのタイミングで食べるのかまで仕切ってくれるという点も面白い。西洋では滅多に見られない食文化だと思います。


オリビエ・ドランさん「家族で鍋をつついた思い出」
オリビエ・ドランさん
(パリ在住)
僕は母親が日本人なので、日本食はフレンチ以上になじみ深い食物です。中でもやはり、冬になるといつも思い出すのが日本の鍋料理。一番印象に残っているのは、すき焼きとしゃぶしゃぶですね。すき焼きは豪華な鍋料理だし、家族一緒に鍋を囲んでつっついた思い出があります。しゃぶしゃぶはフランスにはないポン酢やごまだれを使って食べたのが印象に残っています。


マリ・エスピタリエさん「おでんだけは特別」
マリ・エスピタリエさん
(パリ在住)
私は日本食が大好きで、梅干し、梅酒、そして鍋料理に目がありません。何度か夫と一緒に日本に行っていますし、フランスでもたまに日本食を食べに行きます。数ある日本の鍋料理の中でも一番思い出に残っているのはおでんですね。他にも様々な鍋料理を食べましたが、日本にしかない食材で作られているおでんは特別。非常に新鮮な食体験として記憶しています。



ジンギスカン鍋(北海道)
羊肉を使った焼肉料理の一種。中央部分がやや盛り上がった鋳物のジンギスカン鍋を用いることからその名が付いた。2004年に北海道遺産に認定され、当地の郷土料理としてのイメージが強いが、今や全国区になっている。始まりは大正時代に軍隊、警察などの制服の素材となる羊毛を自給しようとした「綿羊百万頭計画」で、羊毛だけでなく羊肉の消費アップも狙って料理法 を模索する中で誕生したとされる。肉と一緒に焼くモヤシやタマネギ、ニンジン、ピーマンなどの野菜には肉汁の旨みも染み込み、ボリュームたっぷりの一品だ。


きりたんぽ鍋
秋田県で鍋といえばこれ。練った米を秋田杉から作った棒に巻き付けて焼き、棒を抜いてちくわのような形になった「きりたんぽ」を鶏としょうゆベースのスープに入れてキノコや野菜と一緒に煮る。元々はきこりたちが山作業の折に残り飯を長い棒に巻き付けて、味噌をつけて焼いて食べたのが始まりだという説もあれば、秋田の伝統的な熊猟師であるマタギがごった煮の鍋におにぎりなどを入れて食べたのが発祥ともいわれる。スープには比内鶏という秋田産の鶏肉を、きりたんぽには新米のあきたこまちを使うこだわり派もいる。
写真提供: mitsuka.jugem.jp


芋煮
サトイモをメインにコンニャクやネギ、牛肉、マイタケなど季節のキノコをしょうゆベースで煮込む鍋料理。最上川舟運が盛んだったころ、酒田から船で運ばれてきた塩や干し魚などの物資が下ろされ、人足の手でさらに内陸部に運ばれていったが、船頭たちが人足を待つ間の退屈しのぎに始めたのが由来とされている。当初は牛肉ではなく、運ばれてきた棒ダラなどの干魚と一緒に煮たという。県内各地の河原で開かれる芋煮会は秋の風物詩としてすっかり定着した。おいしさの決め手は隠し味として入れる地酒らしい。


アンコウ鍋
アンコウは頭部に餌となる魚をおびき寄せる突起物がある深海魚の1つで、体全体が柔軟性に富んでおり、調理する場合は下あごをフックにかけてつるし、口から水を入れ胃をふくらませてさばく特殊な方法を用いる。肉の他に、皮、胃、肝臓、卵巣、えら、ヒレが食用にされ、一般的に「7つ道具」と呼ばれている。アンコウ鍋は、この7つ道具に野菜と味噌を加えて煮込んだ鍋料理で、茨城や千葉の浜料理だったが、後に食通で有名な芸術家、北大路魯山人が賞賛した珍味の1つとして広まり東京などでも食べられるようになった。


ほうとう
甲州には水田が少なく、お米は貴重な食べ物で、代わりによく食べられたのがこの「ほうとう」。麺を平たく打った、ひもかわうどんと野菜を一緒に味噌仕立ての汁で煮込んである。武田信玄の陣中食に起源があるという説もあるが、その由来は中国から禅宗とともに渡ってきた「飩(はくたく)」から。生麺を味噌仕立ての汁にカボチャ、ジャガイモ、ニンジン、ネギ、シイタケ、白菜、鶏肉などの具と一緒に煮込めば出来上がり。山梨県では「風林火山」ののぼりが飲食店の店頭に立っていれ ば、「ほうとうあります」を意味する。


湯豆腐
寒い冬には、昆布を敷いた鍋に一口大に切った豆腐を入れ、程よく温まった所を引き上げ熱々の湯豆腐を肴にクイッと1杯。江戸時代の料理本「豆腐百珍」では、「湯やっこ」として紹介され最上級である「絶品」にランクされている。材料は豆腐、水、昆布と非常にシンプルな料理だけに、それぞれの素材に最高級品が求められる。特に良質の水を使うことが絶対条件で、京都の湯豆腐が名高いのもそれが所以である。通常、しょうゆ、酒、みりん、だし汁などを合わせたもの、もしくはポン酢しょうゆなどで食べられ、薬味にはネギ、ユズ、ダイコンおろしなどが用いられる。


うどんすき
うどんの本場関西の寄せ鍋風高級料理の1つ。大阪の堺にある和食と麺類料理の老舗料亭「美々卯」の主人・薩摩平太郎が1928年頃に考案したとされており、「うどんすき」という呼称は「美々卯」の登録商標であったが、後に全国の飲食店で同様の料理法が提供されるようになり、美々卯と他店で訴訟が起こった。しかし、現在では一般名詞化している。「うどんすき」は「うどん入りすき焼き」を短縮させた呼び名で、元々は鍋料理の1つである「すき焼き」の残り汁に野菜とうどんを入れ煮込んだ物だったが、現在では立派な高級鍋料理として認知されている。


いのしし鍋
いのしし年である2007年を祝うにはぴったりの、いのししの肉を使った鍋料理。起伏に富んだ山の中で頑丈に育ったいのししが多数生息する、兵庫の丹波地方で生まれた。またこの地域には明治時代に陸軍部隊が駐屯しており、彼らがその後全国に口コミで伝えたことから今では神奈川県などの地域でも郷土料理として支持されている。体が温まりやすく、煮れば煮るほど柔らかくなり、濃厚な味を出すことなどがいのしし肉ならではの特徴。赤いいのししの肉を薄切りにして皿に盛り付けると、まるで牡丹の花のように見えることから 「ぼたん鍋」との別名がついた。


もつ鍋
鳥獣肉の内臓を意味する「もつ」を主材料として用いた鍋料理。好みによって、しょうゆや噌味のスープで煮込んで食べる。本来はお饅頭を販売していた福岡市内の「万十屋」が、物資不足に悩んだ終戦直後に生活費を稼ぐために始めた料理だという。栄養価が高いのに値段が安いことと、もつをくちゃくちゃと噛む食べ方が庶民に受け、やがて福岡の郷土料理として広く知られるようになった。作り方はお湯で余計な脂を落としてからもつをお好みのスープの中に入れ、キャベツやニラを入れるだけ。最後はちゃんぽん麺を入れて食べると2度美味しい。


だんご汁
「ほうちょう」とも呼ばれる、九州、特に大分の郷土料理として認知されている鍋料理。通常は小麦粉で作った団子を一晩寝かし、これを引き伸ばして麺のようになったものを鍋に入れて食べる。多くの場合、その他の具としてはゴボウ、ニンジン、サトイモ、ネギなどの野菜と豚肉が豊富に入っており、豚汁によく似ている。調理が簡単なことから一般家庭の夕食としては重宝がられ、またご飯にもよく合うため、全国の庶民に愛されるようになった。ちなみに大分では、この団子にきな粉と砂糖をまぶせたお菓子「やせうま」も人気がある。


その他お鍋の数々
おでん おでん
ご存じ冬定番の煮物料理。室町時代に出現した田楽と呼ばれる食物が原型で、この「田楽」の「でん」に「お」が付けられて「おでん」との呼称が定着した。関西では「関東炊き」ともいう。
しゃぶしゃぶ しゃぶしゃぶ
中国大陸で元々は羊肉を使った料理だったが、日本人向けに牛肉をつかうようになり現在の形になった。ちなみに、「しゃぶしゃぶ」という名称は1952年に大阪の「スエヒロ」が命名した物。
常夜鍋 常夜鍋
昆布と日本酒が入った出汁がおいしい鍋料理。毎晩続けて食べても飽きない、という意味を込めてこの名がつけられた。 写真提供: www.mizkan.co.jp
すきやき すきやき
すき焼きの語源は、鍋の代わりに農具の鋤(すき)の金属部分の上を火にかけ、肴や豆腐を焼いて食べたことに端を発しているという。後に現代のような鍋物に姿を変えた。
ちゃんこ鍋 ちゃんこ鍋
明治時代に考案された、大相撲の力士が食べる鍋料理。特定の味付けはないが、味噌仕立てや塩などが定番。最近はカレーやキムチ味なども人気らしい。
写真提供: www.nagatanien.co.jp
水炊き 水炊き
昆布や鶏などの出し汁を入れた鍋で野菜や魚介類、豆腐などを煮こんだ鍋物。ぽん酢やたれにつけて食べるのが常。締めはごはんやうどんを入れて、最後の一滴まで味わい尽くす。写真提供: kitchenhime.blog21.fc2.com
寄せ鍋 寄せ鍋
出し汁に野菜や魚介類など様々な具材を入 れて煮込む。地方ごと、家庭ごとに味付け や材料が異なり、自由な発想で味のハーモ ニーを楽しむことができる。写真提供: www.amitatsu.jp
 

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