Bloomsbury Solutions
Sun, 22 December 2024

オープン・ハウス・ロンドン2012

通常は一般に公開されていないものを含め、ロンドン内の様々な建築物の内部を無料で見学することのできるユニークなイベント、「オープン・ハウス・ロンドン」。今年は本イベントが20周年を迎える上、ロンドン五輪開催年ということもあり、注目度も抜群。2日間で750以上の建築物が一般市民に門戸を開く。予約が必要で人数制限があるような、人気の高い定番スポットも魅力的だが、ここではあまり知られていないが個性の際立つ建築物を中心にご紹介しよう。見たら思わず駆け寄ってしまいそうな奇抜な外観や、外からは想像もできない華やかな内装など、ロンドン建築の奥の深さを知る絶好の機会。今まで知らなかったロンドンの新たな魅力を見つけよう。(田中晴子)
www.openhouselondon.org.uk

オープン・ハウスの歴史

オープン・ハウスのイベントは、一般の人々が建築に対する関心や理解を深め、自分たちの暮らす環境への意識や知識を向上させることを願う、非営利団体及び多くのボランティアによって運営されている。1992年に初めてオープン・ハウスが開催されたとき、参加した建築物はわずか20に過ぎなかった。だが、政府が2000年に向けて掲げた大規模なミレニアム・プロジェクトによって、英国には新たな建築ブームが到来。特にロンドンでは、ウォーターフロントを始め、各地域で荒廃地域の再開発事業が開始される。そんな時代の後押しもあって、21世紀を迎えたころにはオープン・ハウスは15万人が足を運ぶ大イベントへと成長。現在では、個々の建築物には留まらず、デザイン、エンジニアリング、環境問題といった、様々な面における地域ぐるみのプロジェクトを紹介、推進していく役割も担っている。

再開発エリア編

刻々と姿を変えつつあるロンドンの街の中でも、ここ数年で特に大規模な再開発が進むのが、中心部ながら開発の遅れていたキングス・クロス駅周辺地域と、オリンピック・パークが建築された東部地域だ。古き良きものを残しつつも大胆に生まれ変わったこれらの地域の建築物をまずはご紹介。

The Granary Building, Granary Square

The Granary Building, Granary Square

長い年月にわたって放置されていたキングス・クロス駅裏の広大な土地が現代に蘇った。噴水の美しいグラナリー・スクエアは、トラファルガー広場とほぼ同サイズ。野外イベントの会場として、既に多くの人たちに愛されている。そして、かつて、近くを走る運河で運搬する物資の保管用に使われていた倉庫エリアは、2000世帯が入居可能のアパートメント・ブロックと、オフィスやショップのブロックに変身を遂げている最中で、現在、一部エリアの入居者を募集中。建物の屋根には太陽熱温水システムや風力発電システムが取り付けられるなど、環境に留意したつくりになっている。名門美術大学のセントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインが早々に居を構えるなど、キングス・クロス新時代の幕開けを感じさせるエリアだ。

9月22日(土) 10:00-17:00、9月23日(日)13:00-17:00
土曜日にはツアー形式(要予約)もあり(最終は16:15開始)
The Granary Building, Granary Square N1C 4AA
最寄り駅 King's Cross St Pancras


The White Building

The White Building

運河を挟み、オリンピック・パークの向かい側に位置するアート・センター。アーティストに貸しスタジオを提供する組織「スペース」によって、印刷工場跡がアーティスト用のスタジオ / イベント・スペース / カフェに改造された。近隣の小学生のためのアート・プログラムを開催するなど、地域に根ざした場となるように運営されている。ロンドン五輪終了後のオリンピック・パーク跡地が、どのような機能を果たすことになるのかを説明する、詳しいスライドショーも開催される。

9月22日(土)、9月23日(日) 13:00-17:00
ツアー形式(最終は16:15開始)
Unit 7 Queens Yard, White Post Lane E9 5EN
最寄り駅 Hackney Wick


Beyond the Olympic Park

- the Lower Lea Valley from Hackney Wick to Leamouth

オリンピック・パークの建設によって最も影響を受けた、ロンドン東部のロウワー・リー・ヴァレー地区を、ハックニー・ウィックからリーマウスまでを歩きながら学ぶツアー・イベント。18世紀の風車小屋や産業革命期の面影を残す下水処理施設、「下水大聖堂」ことアビー・ミルズ・ポンピング・ステーションなど、変化した部分だけではなく、過去のロンドンも併せて見ることができる、マイナーながらも内容の濃いツアーになっている。

9月22日(土) 14:30-17:00
Hackney Wick駅に集合。ツアー所要時間は約2時間半。
ロイヤル・ヴィクトリア駅で解散

多国籍主義編

多種多様な国籍・宗教の人々が交錯するロンドンには、あらゆる神様や仏様が集合し、異彩を放ちながらもしっかりと根を下ろしている。あれこれ言いながらも異文化を許容するロンドン市民たちの懐の深さによって支えられている、様々な宗教の建築物を比べてみるのも面白いのでは。

BAPS Shri Swaminarayan Mandir

BAPS Shri Swaminarayan Mandir

西洋諸国では最大規模というヒンドゥー教の寺院が、なぜかロンドン北西部ニースデンの住宅地に存在する。イタリアやブルガリアから運んだ5000トンの石材を使い、ヒンドゥーの伝統様式そのままに、1995年に建築された。石材は一旦、インドに運ばれ、本場の職人が細部の手仕事を加えた後に再度ロンドンに送られ、組み立てられたのだそう。ロンドン・パラリンピックの際は聖火リレーも訪れたので、それをきっかけに存在を知ったという人も多いはずだ。まるで映画のセットのような非現実的な白亜の外観は、一見の価値あり。内部のカラフルな装飾も、ここがロンドンだということを忘れてしまいそうになる。タンクトップやミニ・スカートなど、肌を露出した服装では中へ入れないので注意が必要。

9月22日(土)、9月23日(日) 10:00-16:00
ツアー形式もあり(最終入場は15:30)
105-119 Brentfield Road, Neasden NW10 8LD
最寄り駅 Harlesden、その後 224番のバス


Buddhapadipa Temple

Buddhapadipa Temple

約4900坪という広い敷地内にあるタイ式の仏教寺院。英国と欧州に仏教を広めるために建築されたもので、アジア以外の地域には2つしかないタイ寺院の一つだ。内部はタイ人のアーティストによって描かれた、仏陀の一生をモチーフにした壁画で彩られている。僧侶の住居やキッチン、ライブラリーなど僧院としての施設も兼ね備える本格的な寺院となっており、広い庭を静かに歩くだけでも、浮世の塵を落とせそうな雰囲気に満ちている。

9月22日(土)、9月23日(日) 9:00-16:00
ツアー形式(最終入場は15:00)
14 Calonne Road SW19 5HJ
最寄り駅 Wimbledon


New West End Synagogue

New West End Synagogue

ヴィクトリアン様式建築の傑作とされる、スコットランドの建築家ジョージ・アッシュダウン・オーズリー作のシナゴーグ(ユダヤ教教会)。オーズリーや19世紀のステンドグラス職人N・H・J・ウェストレイクらの手によるステンドグラスを始め、ふんだんに使われた木材や赤レンガが厳かで重厚な雰囲気を醸し出す。イングランドの歴史的建造物を保護する目的で政府によって設立された「イングリッシュ・ヘリテージ」から、最も重要度の高いグレード1のお墨付きをもらっている。

9月23日(日)10:00-14:00 ツアー形式
St Petersburgh Place W2 4JT
最寄り駅 Queensway/Bayswater/Notting Hill Gate


次世代のための建築編

あれもこれもと高い理想を掲げるのではなく、今ある問題をどう解決すべきか手探りで進む人々のために、ぴったりの環境を用意する――ここでは、何よりもまず利用者のことを考えるところから始まった建築プロジェクトをまとめてみた。

Providence Row Arts and Activity Building
at the Dellow Day Centre

Providence Row Arts and Activity
Building at the Dellow Day Centre

タワー・ハムレッツとシティー・オブ・ロンドンに暮らすホームレスたちが、健康と生きがいを得るための手助けをするデイ・センター。1階では就職のためのスキル・アップを学べるワークショップが開催され、2階はヴィジュアル・アートやパフォーミング・アーツによる自己表現を学ぶスペース、最上階はセンターを主催する団体「プロヴィデンス・ロウ」のオフィスとなっている。ジグザグ状に飛び出た窓が、多くの太陽光を取り込むよう設計されており、高いビルの谷間に位置するセンターを明るく開放的に見せることに成功している。偉大な建築作品と判断された建築物に送られる、RIBA(王立英国建築家協会)アワードの本年度受賞作品。

9月22日(土)、9月23日(日) 13:00-17:00
ツアー形式もあり(最終は16:00開始)
82 Wentworth Street E1 7SA
最寄り駅 Liverpool Street/Aldgate East


Myplace Centre

Myplace Centre

学校か自宅以外にも、お金をかけずにティーンエイジャーたちが心地良く過ごすことのできる場所、それが政府の肝入りでつくられたユース施設、「マイプレイス」。これまで、イングランド内の63カ所につくられているが、ここハロルド・ヒルの施設のユニークな点は、二酸化炭素排出量ゼロを実現させた、国内でも珍しい徹底したエコ建築だということだ。ダンゴムシのような可愛らしい外観は、地元在住の14~19歳の少年たちの意見も取り入れて採用されたのだそう。

9月22日(土)、9月23日(日) 12:00-16:00
Dagnam Park Drive, Harold Hill RM3 9DJ
最寄り駅 Harold Hill


Adobe Village Hounslow Heath Infant and Nursery School

Adobe Village Hounslow Heath Infant and Nursery School

ムーミン一家が住んでいそうな、日干しレンガのドーム型建物は、保育園の屋外プレイ・ルーム。オーガニックな材料を利用する建築チーム「スモール・アース」が、園児たちのデザインを基に2011年に建造した。ヒースロー空港に近いこの保育園は、飛行機が2分おきに頭上を通ることから、防音効果の高いプレイ・ルームの建造を同チームに依頼。結果、騒音レベルは以前より17デシベルも下がったという。ほのぼのとした見た目ながら園児たちの健康を守る、頼もしい存在だ。

9月22日(土)10:00-17:00(最終入場は16:30)
Martindale Road TW4 7HE
最寄り駅 Hounslow West

 

この記事を気に入っていただけたら、ぜひ任意の金額でサポートをお願いします。

*本文および情報欄の情報は、掲載当時の情報です。

Sakura Dental 日系に強い会計事務所 グリーンバック・アラン 24時間365日、安心のサービス ロンドン医療センター 不動産を購入してみませんか LONDON-TOKYO

JRpass totton-tote-bag