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Tue, 19 March 2024

オープン・ハウス・ロンドン2008

毎年恒例の「オープン・ハウス・ロンドン」が今年も9月20日、21日に開催される。約700の建築物が一般公開されるこのイベントは、ロンドンの街を深く知る絶好の機会だ。至る所で開発が進み、超近代型ビルが街のアイコンとなっていく一方で、環境保護を意識した建物が続々と登場。歴史の面影を色濃く残しながらも、街は未来へ向けて日々刻々と変化している。建築物を訪ね歩きながら、時代の潮流を感じてみてはいかがだろう。(黒澤里吏)

オープン・ハウス・ロンドン公式ウェブサイト
www.openhouse.org.uk

LONDON NOW
ハイテク / モダン建築
街の景色を一変させる圧倒的な存在感で、見る者の想像力を刺激する超近代型高層ビルや、ハイテク建築家が手掛けたアットホームなケアハウスなど、注目の5件を厳選。時代の表情を映す建築物の数々から、ロンドンの今を探ってみよう。

これぞ21世紀型の癒し空間
Maggie's Centre(Hammersmith)

Maggie's Centre

ハイテク建築の巨匠、リチャード・ロジャース卿が「サ ポート・センターというより、もっと親しみやすくて寛 げる、そして心豊かになれる場所に」という発想のもと に、チャリング・クロス病院内につくり上げた、がん患 者のためのケアハウス。非営利団体による運営だけに、 センターの利用は無料で予約も不要。木材を効果的に用 い、採光に気を配った設計が、医療施設とは思えない、 心安らぐ空間を生み出している。

オープン期間 9月21日(日)10:00~17:00
(ガイド・ツアー/最終入場16:30)
住所 Charing Cross Hospital, Fulham Palace Road W6 8RF
最寄駅 Hammersmith / Baron's Court / Putney

息を呑む大胆で緻密なデザイン
Palestra(Southwark)

Palestra巨大な箱を積み重ねたような外観に目を奪われる12階建ての超近代型オフィス・ビル。トップと本体部分の結合は、梁(はり)の両端の一方のみが固定される、「片持ち梁」の構造を用いたハイテク技術の賜物だ。また、ミラー張りの外装に所どころ配された彩りはシリコン・ガラスによるもの。温度調節機能を備えており、優れたデザイン性とともに高い機能性を発揮している。


オープン期間 9月20日(土)10:00~13:00
(ガイド・ツアー / 最終入場12:30)
*公式ウェブサイトより要予約
住所 197 Blackfriars Road SE1 8AA
最寄駅 Southwark / Waterloo

行列覚悟、でも一見の価値あり
Lloyd's of London(City)

Lloyd's of Londonリチャード・ロジャース卿によるこのロイズ保険組合本社ビルを抜きにして、英国ハイテク建築は語れない。空に突き抜けるようなシャープで無機的な鉄骨+ガラスの外観は、1986年の建造当時から20余年を経た今も斬新でユニーク。地上60メートルの高さとなる11階のギャラリーから見下ろす、開放的な吹き抜けのアトリウムの眺めは圧巻だ。

オープン期間 9月20日(土)10:00~17:00(最終入場16:00)
住所 One Lime Street EC3M 7HA
最寄駅 Bank / Monument / Liverpool Street

抜群な環境の最新型オフィス
Portobello Dock(Kensington)

Portobello Dock今年新たにお目見えした、グランド・ユニオン運河を中心に広がる再開発地区。約4平方キロメートルの敷地にショッピング&食、住宅、オフィスの各エリアが点在し、一大ビレッジを形成している。今回は運河に浮かぶ5階建てのオフィス建築「カナル・ビル」の一部を一般公開。排気用の換気装置や巨大な太陽熱温水パネルなど、環境保護も意識したつくりだ。

オープン期間 9月20日(土)10:00~13:00(最終入場12:30)
住所 343 Ladbroke Grove W10 5BU
最寄駅 Ladbroke Grove / Kensal Green

上空から12年後の街の景色を思う
Taberner House & Alsop's Third City Vision
(Croydon)

Taberner House & Alsop's Third City Vision1967年建造のクロイドン行政本部ビル。ロンドン南東部を一望できる最上階には、2020年までに35億ポンド(約7000億円)を投じての開発が予定されている「アルソップのクロイドン都市化計画」の模型展示(写真)も。斬新なデザインで知られる建築家、ウィル・アルソップの未来都市ビジョンを目にするチャンスだ。

オープン期間 9月20日(土)10:00~17:00(最終入場16:50)
住所 Park Lane, Croydon CR9 1JT
最寄駅 East Croydon / West Croydon
FOR THE BETTER FUTURE
エコ建築 / 教育施設
より良い未来への鍵として真っ先に挙げられるのが、環境保護と教育対策。建築の世界でも、ここ数年でエコ・フレンドリーな建物や画期的な教育施設が増加中だ。そんな建築物に触れてみれば、未来のロンドンの姿が見えてくるはず。

こんなオフィスで働いてみたい
One Bishops Square(Tower Hamlets)

One Bishops Square

リチャード・ロジャース卿と並び、英国の2大建築家と言われるノーマン・フォスター卿が手掛ける、スピタルフィールズ再開発地区に立つ最新鋭のエコ建築。オフィス・ビル仕様としてはロンドンで最大の太陽光発電パネルや、自動節電機能付きの照明やエアコンなど、快適な職場環境を実現するためのさまざまな設備が搭載されている。

オープン期間 9月21日(日)10:00~17:00(最終入場16:30)
住所 One Bishops Square E1 6AO
最寄駅 Liverpool Street

低予算が功を奏してアイデア勝ち
Rooftop Nursery(Hackney)

Rooftop Nursery低所得層の居住区に低予算で建てられた保育園だが、国内では他に類を見ない衝撃吸収効果のあるゴム材を用いた屋上の遊び場を持つユニーク設計で、2007年のRIBA(王立英国建築家協会)アワードを始め数多くの賞を受賞。館内のフロアもスライディング・パネルの仕切りによって50パターンの使い方ができるなど、フレキシブルでアイデア満載のつくりになっている。

オープン期間 9月20日(土)13:30~16:30
住所 6 Ottaway Street E5 8PX
最寄駅 Rectory Road

地下鉄車両がアートの現場に
Village Underground (Hackney)

Village Underground閉鎖されたショーディッチの鉄道高架に廃棄処分の地下鉄車両を搬入し、アーティストのスタジオとして再利用。内装に持続可能な建築材を用いるなど、環境保護に十分配慮した設計だ。夏場にはライブやアウトドア・シネマなどのイベントが行われるほか、高架下のウェアハウスでは常時クラブ・イベントやファッション・ショーなどを開催している。

オープン期間 9月20日(土)10:00~17:00
住所 54 Holywell Lane EC2A 3PQ
最寄駅 Liverpool Street / Old Street

子どもの個性を伸ばす児童センター
Golden Lane Campus (Islington)

Golden Lane Campus生後6カ月から5歳までの幼児や児童のために開かれた複合施設。幼稚園、レセプション、養護学校を併設しており、各種アクティビティや母親のためのコースも充実している。異素材を効果的に配した有機的なデザインで、自然光の取り入れ方も見事。子どもたちの発想力を高めてくれそうな空間が実現している。

オープン期間 9月20日(土)10:00~13:00
(建築家によるガイド・ツアーあり)
住所 101 Whitecross Street EC1Y 8JA
最寄駅 Barbican / Old Street

感性を育てる彩り豊かな学校
Westminster Academy(Westminster)

Westminster Academy2006年新設の、生徒数1175人の中等学校で、校舎は翌07年に完成。緑が基調の鮮やかな配色が目を引く建物の内外には、環境汚染の原因となるストームウォーター軽減機能や、自然換気による温度調節を実現するコンクリート材の利用など、数多くのエコ機能が搭載されている。2008年RIBAアワード受賞。

オープン期間 9月20日(土)10:00~17:00
(建築家によるガイド・ツアーあり)
住所 255 Harrow Road W2 5EZ
最寄駅 Warwick Avenue / Royal Oak / Paddington

建物×新市長=エコ効果倍増!?
City Hall(Southwark)

City Hallノーマン・フォスター卿設計のロンドン市庁舎。この、卵とも筍とも見紛う不思議なフォルムが、実は自然の断熱や換気を可能にしている。加えて、コンピューターや照明器具の使用から生じる熱の再利用などで温度調節を図っているほか、節水機能や太陽光発電装置も備えるなど、隅々までエコ・フレンドリー。環境保護対策を公約に掲げている市長も満足に違いない。

オープン期間 9月20日(土)/ 21日(日)9:30~17:30
(最終入場17:00)
住所 The Queen's Walk, More London SE1 2AA
最寄駅 Tower Hill / London Bridge
FUSION OF THE TIMES
個性派スポット
英国では建物の再利用は当たり前。しかし、このハコにこの中身は偶然か必然か。ここでは当初の建築目的とは全く異なる使われ方をしているものを集めてみた。不思議な今昔のコラボレーションによって生じた、内外のギャップを味わいたい。

元は英国最古のジム施設
German Gymnasium King's Cross Visitor Centre
(Camden)

German Gymnasium King's Cross Visitor Centre1861年に創設されたドイツ体操協会の本拠地で、世界で最も古い近代オリンピックの一つとして数えられる1866年大会では、ほとんどの体操競技がここで行われた。木の合板を用いたアーチ状の梁は、キングス・クロス駅の設計の原型として知られる。現在はビジター・センターとして機能しているが、開発が進む周辺地区のなかで、やや異色の存在感を放っている。

オープン期間 9月20日(土)/ 21日(日) 10:00~17:00
住所 26 Pancras Road NW1 2TB
最寄駅 King's Cross / St.Pancras

古き良き時代の残像
Gala Bingo Club(Greenwich)

Gala Bingo Club1930年代に次々と建造された映画興行チェーン、「グラナダ・シネマ」は、伝統的な装飾をふんだんに施した壮麗なインテリアで知られる。1937年建造のこの建物もその一つで、超豪華シネマ、トゥーティングのグラナダと同様、ロシア人の舞台監督兼デザイナー、セオドア・コミサルジェフスキーが館内装飾を手掛けている。現在は娯楽産業チェーン、「ガラ・ビンゴ・クラブ」のホールとして営業中。

オープン期間 9月21日(日)11:00~12:00 *18歳以下は入場不可
住所 186 Powis Street SE18 6NL
最寄駅 Woolwich Arsenal

馬舎からカルトなポップ文化を発信
The Horse Hospital(Camden)

The Horse Hospitalラッセル・スクエア駅からすぐの裏通りに佇む1797年建造の小さな古びた馬小屋は、なんと国内外のアンダーグラウ ンド・カルチャーを発信する、会員制のアート・ヴェニューだった。レアでアヴァンギャルドな映画や音楽、アート関連のイベントを定期的に開催。ヴィンテージ服の宝庫でもあり、膨大なストリート・ファッションのコレクションを誇っている。

オープン期間 9月20日(土)/ 21日(日)12:00~18:00
住所 Colonnade WC1N 1HX
最寄駅 Russell Square / Euston

幾何学デザインが神秘性をプラス
Zoroastrian Centre for Europe(Harrow)

Zoroastrian Centre for Europe優れた建築に与えられる評価基準の一つ、「グレードⅡ」に認定されている、優美なアールデコ建築の元映画館は、現在、ゾロアスター教の欧州本部センターとなっている。ゾロアスター教とは古代ペルシアで発祥し、世界三大宗教にも影響を与えたとされる、世界最古の宗教の一つ。そう聞くと、アールデコの幾何学的なデザインがどことなく神秘的に見えてくるような……。

オープン期間 9月20日(土)10:00~13:00(ガイド・ツアー)
住所 440-442 Alexandra Avenue, Harrow HA2 9TL
最寄駅 Rayners Lane

スペシャル・イベントに参加しよう

夜間ハイキング

毎年盛況、約30キロのチャリティー・ウォーク。今年はCity Hallから出発して主要建築物を巡り、Savoy Placeのテラスで日の出を眺めながらシャンパンで乾杯!参加料はMaggie's Centreに寄付される。

日時 9月19日(金)19:30~(所要約8時間
参加費 1人£37.50(4~6人の場合はグループで£150)
  公式ウェブサイトから要登録

フォト・コンテスト

期間中に訪れた建築物をカメラに収めて、オープン・ハウス事務局に送ってみよう。有名建築写真家や「タイム・アウト」誌のエディターなどプロたちによる選考のうえ、応募作品の中から1~3位が決定。賞品も用意されている。

*応募方法の詳細は公式ウェブサイトを参照

キッズ・イベント

子どもや家族連れのためのイベントも多数。主なものは以下の通り。

City Hall
最上階に設置されたスペースで、未来のロンドンの模型をつくろう。
日時: 9月20日(土)10:00~13:00 * 対象年齢: 5~10歳
Trinity Buoy Whalf
文化とアートの発信地で、創造力を掻き立てるユニークなコン テナ建築づくりに参加。大人から子どもまで楽しめること請け合い。
日時: 9月20日(土)/ 21日(日)11:00~17:00
住所: 64 Orchard Place E14 0JW

建築バス・ガイド・ツアー

オープン・ハウス事務局は年間を通して毎週土曜の午前中に、建築家や建築評論家によるガイド・ツアーを実施している。伝統建築を巡るプランや、ハイテク建築に焦点を絞ったプランなど4種類あり、どのツアーが開催されるかは週によって異なる。建築についてもっと詳しく知りたくなった人は、是非どうぞ。

日時 毎週土曜10:00~(所要約3時間)
料金 £18.50 / 学生£13
要予約 Tel: 020 7383 2131
E-mail: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください

*ツアー内容の詳細は公式ウェブサイトを参照

 

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