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Tue, 19 November 2024

知って楽しい建築ウンチク
藍谷鋼一郎

米ファイザー社による英アストラゼネカ買収案

The Times
「タイムズ」紙 5月7日

門戸開放と資産剥奪は別物

英国は恐らく、先進国では企業の合併や買収に関して最も自由が利く国である。その自由によって世界中から資本が集まり、経済成長や雇用創出を実現している。しかし、だからといってファイザー社によるアストラゼネカ買収案が無条件で認められるわけではない。英国の医薬品開発事業を、ファイザー社が研究開発部門を置く米マサチューセッツやカリフォルニアへと移転させないように確約を得るべきだろう。門戸開放は良いが、資産剥奪の機会まで与えてはならない。


The Daily Telegraph
「デーリー・テレグラフ」紙 5月4日

最終的には株主が決める問題

誰がアストラゼネカ社を所有すべきかは最終的には株主が決める問題であり、政治家が介入すべきではない。英国が経済回復を達成し、世界市場で成功を収めたのは、自由貿易を謳うだけでなく、実践しようとしてきたからだ。ファイザー社のような企業が税金対策として英国に拠点を置くことを検討し始めたという動きも、オズボーン財務相による政策の賜物である。市場を開放するとは、我々が買う側に立つだけではなく、売る覚悟もできていることを意味するのだ。


The Guardian
「ガーディアン」紙 5月4日

新しい動きの始まりかもしれない

「イングランド南東部の工場を閉鎖したばかり」「米国での課税逃れが目的である」などファイザー社による買収案には批判的な要素が多くある。そして最近になってささやかれ始めたのが、製薬企業が巨大になり過ぎていくことへの懸念だ。買収案が実施されれば、その規模は英史上最大となる。ただアストラゼネカ社の最近の動きを見る限りでは、規模の強みを生かしながら新興企業の技術革新に資金を供給するという新しい形態が既に始まっているのかもしれない。


 

藍谷鋼一郎:九州大学大学院特任准教授、建築家。1968年徳島県生まれ。九州大学卒、バージニア工科大学大学院修了。ボストンのTDG, Skidmore, Owings & Merrill, LLP(SOM)のサンフランシスコ事務所及びロンドン事務所で勤務後、13年ぶりに日本に帰国。写真撮影を趣味とし、世界中の街や建築物を記録し、新聞・雑誌に寄稿している。
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