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Fri, 29 March 2024

第173回 日本が鶴亀なら、英国は三匹の子豚

ロンドン北部にあるクリック研究所は英国最大の生物医学研究所です。DNAの二重らせん構造を発見した英国科学者フランシス・クリックから命名されました。近年の遺伝子研究の発展はすごいですね。特に歴史学との接点が興味深いです。民族の移動は父系集団主導で起こりやすいので、父系に遺伝するY染色体のハプログループ(塩基配列のパターンをグループ化)の系譜をたどるとどの民族がどこからやって来たのか分かるそうです。

ロンドンのクリック研究所ロンドンのクリック研究所

ハプログループはA、B、Eがアフリカ起源、そこから東アジアで分岐してC、Dが誕生。Fはコーカサス地方に発現してGからT(欧米民などほかの全ての地域)に枝分かれしました。多くの民族がFから派生したので、コーカサスのアララト山に漂着したノアの方舟伝説には意義深いものを感じます。日本人は縄文人と弥生人の二つの民族が融合して出来たと言われますが、ハプログループの比率を分析すると面白いことが分かります。

日本人のY染色体ハプログループ日本人のY染色体ハプログループ

北海道、東北、関東、沖縄住民にはハプログループD(古モンゴロイド)の割合が多く、数万年前に南方アジアから来た縄文人がそのルーツと言われます。一方、北九州、瀬戸内海、近畿地方住民にはハプログループO(新モンゴロイド)が多く、そのルーツは数千年前に中国の寒冷地域や朝鮮半島から来た弥生人と言われます。縄文人と弥生人が共生、融合しながら今の日本人が形作られ、それぞれの生物的特徴が表れているようです。

英国人のY染色体ハプログループ英国人のY染色体ハプログループ

そういえば、日本の長寿や祝福の象徴に鶴亀がよく使われますが、それは縄文人の亀が万年、弥生人の鶴が千年、共存共栄して日本が繁栄して来たことの例えとも言えるかもしれません。思えばユーラシア大陸の東端に日本、西端に英国があり、昔は陸続き。移動する生物の吹き溜まりとなった場所が日英で、多様な民族と文化が持ち込まれたことでハイブリッド天国が育まれたのでしょう。

亀は万年、鶴は千年、ロンドンのクリック研究所 長寿と幸福の象徴亀は万年、鶴は千年、ロンドンのクリック研究所 長寿と幸福の象徴

ところで鶴亀が日本人の由来を示唆すると仮定したら英国人はどうでしょう。英国人のハプログループはR1b(西ステップ遊牧民)が大部分を占め、少しの(I 西欧狩猟採集民)とわずかなG(初期欧州農民)があります。それらは先住民との共生というより興亡を表しています。思いつくのは英国童話の「三匹の子豚」。わらや木組の家は吹き飛ばされ、石作りの家だけ残るイメージ。でも西ステップ遊牧民は石作りの家には住まず、馬と車輪、金属器という当時の先端テクノロジーで先住民を追い払いました。狼さんもお手上げです。

3番目の子豚はレンガで家を作る3番目の子豚はレンガで家を作る

 
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『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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