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Tue, 08 April 2025

第287回 助けられたり助けたり、犬と人間の物語

19世紀半ば、メアリー・ティルビーという女性はロンドン北部イズリントンの自宅のキッチンで、友人が拾ってきた犬を看病していました。ところが介抱もむなしく、犬は他界。もっと早く手当てしていればと後悔したメアリーは、犬の保護活動に立ち上がりました。すぐに多くの犬が保護され、1860年には自宅近くの馬小屋を借り、保護施設を作りました。しかし、メアリーの財産は底を突き、仲間からの寄付だけでは立ち行かなくなりました。

メアリー・ティルビー氏 メアリー・ティルビー氏

無数のかわいそうな犬と共に万事休す、と思ったところに救世主が現れます。文豪チャールズ・ディケンズでした。この保護施設を宣伝し、社会に広く援助を求める広告塔の役割を果たしました。また、当時若かった作家のトーマス・ハーディも援助を惜しみませんでした。1865年にメアリーががんで永眠した後も援助の輪は広まり、71年には保護施設がロンドン南部のバタシーに移転し、現在のバタシー犬猫保護施設に発展しました。

メアリーの借りた馬小屋は農場に メアリーの借りた馬小屋は農場に メアリーの借りた馬小屋は農場に

1939年9月、英国は第二次世界大戦に突入。政府は国民に対し、配給制に伴う食糧不足対策としてペットの安楽死を勧めるキャンペーンを実施しました。推定ですが、すぐに75万匹以上の小動物が安楽死させられました。しかしバタシー犬猫保護施設がこの動きに反対声明を発表し、わずか4名の職員で15万匹の犬猫を保護したそうです。こうした事実は英国でもあまり知られていません。

3棟のビルを持つ現在のバタシー犬猫保護施設3棟のビルを持つ現在のバタシー犬猫保護施設 3棟のビルを持つ現在のバタシー犬猫保護施設

40年、ロンドン東部のポプラ周辺は町工場が多かったせいで激しい空爆を受けました。空襲警護隊のキング氏が駆け付けると、がれきの中にテリア種の雑種犬が1匹。ふびんに思い、食べ残しの食料を与えるとその犬はそばを離れません。それどころか、キング氏を近くのがれきに誘い合図を送りました。なんとその下には生存者が閉じ込められていました。この犬はリップと名付けられ、非公式な捜索救助犬として採用されます。

戦災のがれきの中から見つかったリップ 戦災のがれきの中から見つかったリップ

それから5年間、キング氏とリップのチームは100人以上の生存者を被災地から救出しました。リップは正式な救助訓練を受けていませんが、生存者を見つけ出す特別な能力を持っていました。行方不明になった飼い主をずっと探していたのかもしれません。ポプラ市民は46年にリップが永眠すると、英国獣医慈善団体の持つ英南東部エセックスの動物霊園に埋葬しました。現在、ウクライナで戦争が長引いていますが、バタシー犬猫保護施設を通じて、ウクライナの動物保護施設に支援が送られているそうです。

リップはキング氏と共に救助活動を行なった リップはキング氏と共に救助活動を行なった

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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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