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Thu, 08 December 2022

2022年7月1日(金)〜7月3日(日)
シルバーストーン・サーキットで開催!
FIA F2選手権はなぜ面白いのか

2022年3月25〜27日、サウジアラビアのジェッダで開催されたラウンド2。先頭を走るのはフィーチャー・レースを制したフェリペ・ドラゴヴィッチ2022年3月25〜27日、サウジアラビアのジェッダで開催されたラウンド2。先頭を走るのはフィーチャー・レースを制したフェリペ・ドラゴヴィッチ

モータースポーツに詳しくない方でも、国際自動車連盟(FIA) が主催する自動車レースの最高峰「F1世界選手権」(FIA Formula One World Championship)、日本ではエフワンと呼ばれるこのレースの名を一度は聞いたことがあるだろう。

昨年はレッドブル所属のマックス・フェルスタッペン選手とメルセデスのルイス・ハミルトン選手の優勝争いが話題になった。メディア露出の多いF1に比べ、FIA F2選手権(以下F2)の世界は普段なかなか見る機会が少なく、馴染みのない人も多いかもしれない。

F1への登竜門となっているF2は、未来のF1ドライバーがひしめく勝負の世界。F1とはまた一味違う魅力をもつF2について、簡単なルール説明から、F2所属チームで働く現役メカニックによる現場の声、さらに英国の会場となるシルバーストーン・サーキットについても紹介し、F2独自の面白さを解説する。 (文: 英国ニュースダイジェスト編集部)

参考: www.fia.comhttps://jp.motorsport.comwww.as-web.jp ほか 取材協力: 新木崇弘さん

これを読めばF2の基本が分かる!F2初心者のための観戦術

F2の魅力は、F1で戦う未来のドライバーの成長過程が見られること。初めて観戦する人へ向けて、F1との違いやF2独特の見どころなどをまとめてみた。

まずは簡単な違いからF1〜4のレギュレーション

フォーミュラ・カーを用いたレースはF1、2だけでなく、3、4まである。数字の並びから、一見すると力量のあるドライバーとチームから順に振り分けられているように感じるが、そうとも言い切れない。もちろん最も速いドライバーが勝つという大前提はあるものの、F1~F4ではそれぞれ異なるテクニカル・レギュレーション(技術規定)が設けられているので、カテゴリごとにレースの主な勝因も微妙に異なるのだ。これにより、F1ならマシンの性能がより良いもの、F2ならチーム全体の結束力が強い者がレースを制する。

カテゴリごとのテクニカル・レギュレーション
 F1F2F3F4
重量 798kg 755kg 698kg 各国での国内選手権のことを指すので、各主催国により異なるレギュレーションが定められている
エンジン
使用
1.6L V6 3.4L V6 3.4L V6
馬力 1000 620 380
最高速度
(時速)
372km 335km 300km
ラウンド数 23* 14 9
時期 3月20日〜
11月20日
3月18日〜
11月20日
3月18日〜
9月11日
※ロシアによるウクライナ侵攻のため、ロシア・グランプリはキャンセル。22ラウンドに変更された

F1の下に位置付けられているF2における昨年と今シーズンの大きな違いは、これまでの1ラウンドのレース数が、3レースから2レースへと変更されたこと。各ラウンドは金曜に45分間のフリー走行1回、30分の予選1回、土曜は120キロメートルまたは45分間の早い方でスプリント・レース1回、日曜は170キロメートルまたは60分のいずれか早い方で構成されるフィーチャー・レース1回となった。予選タイムの速い車がレース・スタート時に後方の位置(グリッド)に配置される「リバースグリッド方式」は今年も採用され、土曜のレース1(スプリント・レース)に適用される。スタート位置が速い順でなくなることで、ライバルを追い越し追い越されるオーバーテイクが起きやすい環境が作られ、よりレースが面白くなる。F1でも戦える力を養う登竜門として、F2はますます機能していく。

また、F2もF1と同様にドライバーとコンストラクターズのシリーズ・チャンピオンがある。ドライバーズ・チャンピオンは、勝てばポイントが入り、シーズン通して加算されて、最終戦が終わった段階でどのぐらいポイントを獲得したかでシリーズ・チャンピオンが決まる。

昨年のモンテカルロ(モナコ)でのレース。高い走行テクニックが要求される有名な市街地コースだ昨年のモンテカルロ(モナコ)でのレース。高い走行テクニックが要求される有名な市街地コースだ

F1レベルのドライバーがたくさん!F2がハイレベルな理由

F2の各レースで上位に入賞し続け、その年のシリーズ・ランキングで上位にいることができれば、スーパー・ライセンスを取得するためのポイントが獲得できる。F2のドライバーたちはそのポイントを貯め、F1に戦いの場を移したいと考えているが、F1はトップ・ドライバーの飽和状態にあるのが現状だ。F1は10チーム、計20名のドライバーしか選ばれず、最高峰のF1トップ・ドライバーは、戦える限りそこにい続ける。また、この上限が増える予定は今のところない。つまり、F1に上がれる条件がそろっているF1待ちのドライバーでF2はあふれて返っているため、現在のF2はそのカテゴリ以上のドライバーがひしめきあい、F1に見劣りしないレース展開が繰り広げられるのだ。

ちなみにF3では同じことは起こりにくい。ドライバーのレベル的にはまだまだ育成の枠であり、若くて勢いのあるドライバーや、これから経験を増やしていこうとするドライバーでいっぱい。固定ドライバーが比較的そろうF1やF2と異なり、F3はその才能がただのビギナーズラックだったのか否かを見定めるために存在しており、毎年ようにドライバーが頻繁に入れ替わる。

予算があっても勝てるわけではないF2マシンの作り方の違い

F1とF2ではドライバーが乗るマシーンの作り方に大きな違いがある。F1では予算が許される限り、できるだけ速く走る車を各チームがそれぞれ作り、そのスピードを競う。一方F2はイタリアのダラーラ社(Dallara Automobili S.p.A)のレーシング・カーを使用しなければならないというルールがある。どこのチームも同じ部品を購入し、大きさ5.224×1.90メートルの車を組み立てていくのだ。

他チームとの違いを決定するのは、組み立て方によって耐久性が変わる部品を整備するメカニックの腕や、スピードをチェックし、どうしたらより速く走れるかを戦術するエンジニアである。さらに、ドライバーの力量も結果を大きく左右する。もちろんF1もドライバーによって差は出るが、ドライバーと全体的なチーム力がより重要視されるのがF2の世界であり、F1よりその特徴が顕著に表れている。

しのぎを削るドライバーたちF2の構成チーム

今年はF2デビューの日本人ドライバー、岩佐歩夢(あゆむ)とトライデントからヴィルトゥオーシ・レーシングに移籍した佐藤万璃音(まりの)が参加。また、F3のチャンピオンでF2初出場のデニス・ハウガー、F3で2位に入賞経験のあるジャック・ドゥーハン、2021年のモナコでポール・トゥー・ウィンを飾ったテオ・プルシェールなど注目の選手が多数出場する。

ここに挙げたドライバー以外にも、未来のF1候補がいる可能性は十分あるので、どのレースを見ても新しい才能を発見する楽しみを味わえるはずだ。

F2レーシング・チーム&ドライバー
レーシング・チームドライバー1ドライバー2
PREMA Racing
(イタリア)
Dennis Hauger
(ノルウェー)
Jehan Daruvala
(インド)
Virtuosi Racing
(英国)
Jack Doohan
(オーストラリア)
Marino Sato
(日本)
Carlin
(英国)
Liam Lawson
(ニュージーランド)
Logan Sargeant
(米国)
Hitech Grand Prix
(英国)
Marcus Armstrong
(ニュージーランド)
Jüri Vips
(エストニア)
ART Grand Prix
(フランス)
Frederik Vesti
(デンマーク)
Théo Pourchaire
(フランス)
MP Motorsport
(オランダ)
Felipe Drugovich
(ブラジル)
Clément Novalak
(フランス)
Campos Racing
(スペイン)
Olli Caldwell
(英国)
Ralph Boschung
(スイス)
DAMS
(フランス)
Roy Nissany
(イスラエル)
Ayumu Iwasa
(日本)
Trident
(イタリア)
Richard Verschoor
(オランダ)
Calan Williams
(オーストラリア)
Charouz Racing System
(チェコ)
Enzo Fittipaldi
(ブラジル)
Cem Bölükbasi
(トルコ)
Van Amersfoort Racing
(オランダ)
Jake Hughes
(英国)
Amaury Cordeel
(ベルギー)

現地で?自宅で?F2の観戦方法

現地で観戦
F2はF1のサポート・レースとして行われるため、F1のチケットを購入することでF2も現地で観戦できる。7月1〜3日に英国のシルバーストーン・サーキットで行われるチケットはほとんど売れてしまっているが、座席のないジェネラル・アドミッションなら115〜239ポンド、3日間の座席チケットは1250ポンドで販売中。残り少なくなっているので、観戦を希望の場合はこちらから。
www.silverstone.co.uk/events/formula-1-british-grand-prix

自宅で観戦
英国ではSky Sportsで、日本からは配信サイトDAZNから鑑賞できる(有料)。
www.skysports.com/watch
www.dazn.com

例年より過密なレースに開催スケジュール

今年はF2史上最多となる14ラウンド28レースが開催。限られた時間のなかでいかにベストを尽くせるかが勝因を分ける。最終ラウンドに向け、ますます熱を帯びている。

F2の開催スケジュール
ラウンド日程開催地
第1戦 3月18日〜3月20日 バーレーン
第2戦 3月25日〜3月27日 サウジアラビア
第3戦 4月22日〜4月24日 イタリア
第4戦 5月20日〜5月22日 スペイン
第5戦 5月26日〜5月29日 モナコ
第6戦 6月10日〜6月12日 アゼルバイジャン
第7戦 7月1日〜7月3日 英国
第8戦 7月8日〜7月10日 オーストリア
第9戦 7月22日~7月24日 フランス
第10戦 7月29日~7月31日 ハンガリー
第11戦 8月26日~8月28日 ベルギー
第12戦 9月2日~9月4日 オランダ
第13戦 9月9日~9月11日 イタリア
第14戦 11月18日~11月20日 アラブ首長国連邦
※今年は基本的にF1、2、3 は同時開催。レースはF3、F2、F1 の順番でスタートする

2022年、英国F2選手権の舞台は歴史あるシルバーストーン・サーキット

英国という土地柄、天候が勝敗を決める要因ともなるシルバーストーン・サーキット英国という土地柄、天候が勝敗を決める要因ともなるシルバーストーン・サーキット

英中部トースター(Towcester)にあるシルバーストーン・サーキット(Silverstone Circuit)は、フォーミュラのレースのほかにバイクの選手権などが行われるモータースポーツの聖地だ。 第二次世界大戦後、英国には英空軍の飛行場が多数残っていたが、ここも漏れなくかつてはRAFシルバーストーンとして使用されていた場所。王立自動車クラブ(RAC)主催により、 1948年10月2日に初めて英国でレースが行われたが、当初は長い滑走路がストレート・コースとして使われていたという。1950年にF1世界選手権が行われ、1990〜91年にかけて高速サーキットにするための大規模な改修工事を行い、その後も大小の変化を遂げながら今日に至る。

18のコーナーで構成される全長5.8キロメートルのサーキットは、流れるようなコースが特徴。街中を走るモナコのモンテカルロ市街地コースのような難易度ではないものの、この伝統の地で勝利を挙げるということは多くのドライバーにとっての一つの夢である。

2020年12月、ブリティッシュ・ドライバーズ・レーシング・クラブ(British Drivers' Racing Club)は、7度の世界チャンピオンに輝いた英F1ドライバー、ルイス・ハミルトンに敬意を表し、インターナショナル・サーキットのピット・ストレートの名称を「ハミルトン・ストレート」と名付けた。

女性ドライバーのみのレース、WシリーズもF1に帯同

男性が多いモータースポーツの世界だが、もちろん女性のレーシング・ドライバーもいる。女性のF1選手を輩出することを目標とするフォーミュラ・カーのシリーズ「Wシリーズ」は、2019年にドイツなど欧州各国で初めて開催され、話題を呼んだ。今年もF1のサポート・レースとして世界各地を回っている。参加ドライバーは、最終テストで選出された18名のみ。

日本からは元F1ドライバーの野田英樹を父親に持つ、野田樹潤(じゅじゅ)が初出場。英国の注目選手は、数々の国際大会に出場し、2019、21年(20年は新型コロナのため開催なし)と優勝しているジェイミー・チャドウィックだ。

Interview

マシン整備のプロ、新木崇弘さんに聞くチームの勝利を支えるメカニックの仕事

お話を聞いた方

新木崇弘

新木崇弘 Takahiro Araki 1991年生まれ。日本のレーシング・チームでメカニックとして経験を積んだ後、2016年末にモータースポーツの本場、英国に拠点を移す。現在はF2のメカニックとして忙しい日々を過ごしている。

ここまで観戦者側の立場からF2の特徴に触れてみたが、実際にF2レースに携わっている人はどのような毎日を送っているのだろうか。今回、F2に所属するチームの日本人メカニックとして活躍する新木崇弘さんに、普段のお仕事の様子やその裏側について伺ってみた。

この世界にどのようなきっかけで入ったのでしょうか。

父親の影響で幼いころから車が好きで、高校生になってからも車の仕事に就きたいと一貫して考えていました。ドライバーのオーディションを受けたこともありましたが、思ったような結果が出ず、それでもレースへの想いは強かったので、メカニックの世界で1番を目指そうと思いました。

大きな転機となったのは、自動車専門学校時代に当時からF1のレーシング・チームで働いていた白幡勝広さんが、F1の日本グランプリ(鈴鹿)の時に所属チームのピットに僕を招待してくれたことです。世界のトップ・レースを間近で見たことで、目指すのはこの舞台しかないと確信し、5年少し日本のレーシング・チームで働いた後、拠点を英国に移しました。

現在シリーズ真っ只中だと思いますが、シーズン中はどのようなサイクルで過ごしていますか。

2022年は3月からシーズンがスタートしましたが、本格的な準備は12月から徐々に始まり、シーズン開始後はレースをフォローしながら移動する日々が続いています。サーキットにいる間は、大変慌ただしく、常に何をするかを念頭に入れて作業します。

ラウンド間が詰まっているときは、できる限りのメンテナンスを行い、時間に余裕があるときは英国の工場に車を持ち帰ってチェックします。タイヤを支えているサスペンションやギアチェンジをするためのギアボックスなどの仕組みも一旦全部バラします。

ラウンド後はいつもバラすのですか。

ラウンド期間によります。例えばラウンド期間が3日しかない場合はその日程でできる範囲のことを行います。時間に余裕があるときは、全部バラして細かくチェックし、なるべく定時で終わるようにしていますね。

先月5月のスペイン後は、英国には帰らず直接モナコへ。車をサーキットでメンテナンスして、次はアゼルバイジャンへ。それから英国に戻ってメンテナンスし、7月1〜3日のシルバーストーンに備えます。例年シーズンは12月までなのですが、今年は最終戦が11月末と早いため、日程がかなり詰まっており、なおかつレース数が例年より多いのでとても忙しいです。

工場でのお仕事について教えてください。

僕が所属するチームは2人で1台の車を見ています。メカニックはナンバー1、2といて、1が責任者で2が僕です。僕が担当しているのは主に車の前の部分。コックピットの周り、いろいろな信号を送るための電気の配線、アクセル・ブレーキのペダルやステアリング、スプリングやダンパーなど、ドライバーのシートまわりですね。走ると傷が付くのでそれをきれいにしてしっかり掃除をします。変な傷が入ってないかもチェックしますね。サスペンションは結構力が入るから曲がっちゃったりするんです。

また、目視だけでは分からない部分も当然あるので、非破壊検査(NDT=Non DestructionTest)という超音波や特殊な液体を使う検査を行って傷を浮かび上がらせ、異常を確認します。バラし、きれいに洗浄し、目視で確認、目視できない部分は非破壊検査でチェックして、問題がなければ必要な工程を踏んで組み立てていきます。ちなみに服はいつもあまり汚さないようにしています。服や作業場は汚さないように作業することがメカニックにとってとても大事なことだと思っています。

多忙な毎日ですが、オフ・シーズンはどのように過ごすのですか。

メカニック全体を見ているチーフ・メカニックやチーム・マネージャーが、僕たちメカニックから必要な情報を吸い上げ、新しい部品の注文を行います。今年は11月にレースが終わり、アブダビから12月に車が戻ってくる予定です。来年2、3月までにフル・メンテナンスをしなくてはならないので、12月にすぐ作業に取り掛かれるよう、10月などオフ・シーズンの前から動いて、必要なものが届くようにしています。次のシーズンから車が全部変わる=全くの新車になる場合、新しい車を作らなくてはいけないのにシーズンが始まる直前までパーツが届かないなんてことも……。どう組むのがベストなのだろうとか、そういう思考期間も含めるとオフ・シーズンも結構忙しいですね。同じ車を使うならバラした上で、これは来年使える、これは使えないと分けます。

僕らの世界ではマイレージと呼んでますが、何千キロ走ったかをパーツごとに管理しています。モノコックという車の骨格部分は基本的に変えませんが、使い込むにつれ、よれてきたり、ダメージを受けてしまいます。シーズン中でできないメンテナンスをオフ・シーズンで隅々までチェックし、ゼロから組み直す。組みの違い一つで大事故につながるので、常に細心の注意を払って行っています。

 

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