現在「肉ブーム」が続く英国では、グリルやロースト系のレストランが増加中だ。その影響から、ステーキを使った贅沢なハンバーガーや、こだわりの食材で攻めるサンドイッチなど、これまで手軽な軽食としてハイストリート・チェーン店が主権を握ってきたジャンルにも新風が吹き始めている。今回は、現在進化中のバーガー&サンドイッチを提供してくれる話題の8軒をご紹介。きちんとしたディナーのメインとしてもOKなので、
腰を据えてゆっくり召し上がれ。
取材: Sayaka Hirakawa ①〜④ / Nonny ⑤〜⑧
1
かぶりつきたいNYスタイルのパストラミ・サンド
Mishkin's
Reuben on Rye with Pastrami, Sauerkraut,
Russian Dressing & Swiss Cheese
格子の床に赤いレザーのブース席が並ぶ、典型的なアメリカン・ダイナー風インテリアが人気のミシュキンズ。壁のプラスターをはがしてレンガをあらわにしたり、床板を再利用したりなどのちょっとした工夫が、ポップな色合いの店内に落ち着きと絶妙な味わいを醸し出している。店の奥には、1960年代ごろ実際に使われていたBBC のDJ サウンド・ブースがあり、その一角はまるで個室のようなチャーミングな特等席に。メニューに並ぶのは、寛いだ雰囲気のアメリカン・ジューイッシュ料理。そこにブリック・レーンの有名店から仕入れるベーグルやソルト・ビーフを加え、ロンドンならではの味に仕上げている。一番人気は、パストラミ、エメンタール・チーズ、ザワークラウト(酸味の強いキャベツのピクルス)をライ麦パンで挟んだルーベン・サンドイッチ。大きくかぶりつくと、何層にも重なった薄切りのパストラミが、濃厚なチーズと口の中で溶け合う。かなりボリュームがあるので、完食に自信がなければ、ハーフ・サイズとカリフラワー・スローの付け合わせがお勧め。
*閉店しました
店名 | Mishkin's |
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住所 | 25 Catherine Street, Covent Garden London WC2B 5JS |
TEL | 020 7240 2078 |
最寄り駅 | Covent Garden駅から徒歩5分 |
Website | http://mishkins.co.uk |
2
素材に妥協しないシンプルなタルティーヌ
Cuisine de Bar by Poilane
奥から Foie Gras Tartine
Australian Inspired Tartine
パリはサンジェルマン・デ・プレ生まれの老舗ベーカリー「ポワラーヌ」が贈る世界初のカフェ・レストランがこちら。南フランスの田舎風に飾られた日当たりの良い店内には、生木が置かれ、室内に居ながらふわりと風が感じられそうなオープンな雰囲気。ここでは舌だけではなく、目にもおいしいフランスのオープン・サンド「タルティーヌ」が楽しめる。使われるパンはもちろん、ベーカリー本店から毎日届けられるサワードゥ・ブレッド。上質の小麦とゲランドの塩を原料に自然発酵させた後、石釜でじっくりと焼き上げた伝統の味だ。具材もシンプルながら選び抜かれたものばかり。新鮮なダック・レバーでアルコールを使わず仕上げたフォアグラは南仏で家族経営している農場から、スモーク・サーモンはロンドン東部の専門店フォーマンズから、味のアクセントとして用いるチャツネはバラ・マーケットに出店する生産者からそれぞれ届けられる。気取らずに手掴みで食べられるので、五感をフルに使って素材の味を堪能してみよう。
店名 | Cuisine de Bar by Poilane |
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住所 | 39 Cadogan Gardens, Chelsea London SW3 2TB |
TEL | 020 3263 6019 |
最寄り駅 | Sloane Square駅から徒歩5分 |
Website | www.poilane.com |
3
ウワサのストリート・フードが実店舗をオープン
MEAT Market
Dead Hippie
怪しげでチープな土産物の並ぶコベント・ガーデンのジュビリー・マーケット・ホールは、観光客でもなければ決して足を踏み入れないエリアかもしれない。だが意外にも、そこに夜な夜な長蛇の列ができるという。それはカルト的な人気を誇るバーガーの匂いにつられてやってきた人々。「ミートワゴン」という名のストリート・フードで話題を集め、ロンドンに2店舗を構える人気店となった当店が彼らのお目当てだ。オープンしたばかりのこの店舗は、マーケットを見下ろすバルコニーというユニークな場所にある。各テーブルに無造作に置かれたキッチン・ロールが既にジューシーなバーガーを予告している。スタッフが太鼓判を押す「デッド・ヒッピー」バーガーは、2枚のビーフ・パテにレタス、とろけるチーズ、オニオンにピクルスとベーシックなラインナップながら、口当たりのなめらかな、肉汁いっぱいのパテはさすがのおいしさ。スパイシーなデッド・ヒッピー・ソースが確かな味の決め手だ。
店名 | MEAT Market |
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住所 | The Deck, Jubilee Market Hall Tavistock Street, Covent Garden London WC2E 8BE |
TEL | なし |
最寄り駅 | Covent Garden駅から徒歩5分 |
Website | www.themeatmarket.co.uk |
4
アルゼンチンのソウル・フードに舌鼓
Moo Grill
上奥から Empanada / Milanga
アルゼンチンはコルドバ地方出身のオーナーが、高級ステーキというイメージの強いアルゼンチン・フードをもっとカジュアルに楽しめる場所をと、この店を開いたのが2年半前。以来、イブニング・スタンダード紙の「£10以下で食べられるベスト・レストラン」にランク・インする程の安さとおいしさが自慢だ。看板メニューはコルドバ地方のサンドイッチを指す「ロミトス」。中でもチャバタ・ブレッドからはみださんばかりの大きなカツレツ、モッツァレラ、ハム、レタス、トマトを贅沢に使った「ミランガ」は肉厚で歯ごたえ十分。数種のハーブとオリーブ・オイルで作る伝統的なチミチュリー・ソースをかければ、一層味に深みが出る。英国ではなかなか出会えない、サクサクの衣とジューシーな牛肉のハーモニーは日本人好みで、たとえ家が遠方でもわざわざ出掛ける価値あり。陽気なオーナーの兄弟を始め、熱心でフレンドリーなスタッフばかりなので、何度でも足を運びたくなる。
*閉店しました
店名 | Moo Grill |
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住所 | 40-42 Middlesex Street London E1 7EX *支店あり |
TEL | 020 7650 7948 |
最寄り駅 | Aldgate駅から徒歩5分 |
Website | www.moogrill.co.uk |
5
田舎の休日気分が味える
Orchard
右写真上から Cucumber Granita with
Strawberries, Mint Gel and Orange
Today's Dish (Fried Duck Egg on Soda Bread
with Wild Samphire Root "Soldiers"
served with 3 Salads)
ミシュラン推薦のレストラン「バニラ・ブラック」の姉妹店である、カジュアルなベジタリアン・カフェ。店内は教会から譲り受けた家具、不揃いのレトロな椅子や琺瑯(ほうろう)カップ、古い絵葉書などが並び、英国の古民家風の雰囲気を醸し出す。材料は国内産、オーガニックを心掛け、地方の農場など小さな生産者から直接仕入れる。パンは日替わりのサンドイッチやスープにマッチした食材を練り込んで焼かれるだけあり、具材とのバランスも完璧。その上品な風味と歯ざわりに、口に入れた途端に微笑が広がる。トリュフ、ハイビスカス、薔薇油、アッケシソウ、紫色のヘリテージ・ポテトなど、珍しい食材のオンパレードなのはベジタリアンならではの冒険だ。ポテトは栗のようにほっくりしつつもさらっとした味わい。ほのかに海の香りがする野菜、アッケシソウの茎で突いて食べるよう教わったアヒルの卵の目玉焼きからは、とろりと黄身が流れ出る。上質な田舎の休日気分を味わいながら、元気をもらえるはず。
*閉店しました
店名 | Orchard |
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住所 | 11 Sicilian Avenue, London WC1A 2QH |
TEL | 020 7831 2715 |
最寄り駅 | Holborn駅より徒歩3分 |
オープン | 月~金 8:00-20:00 |
6
マルクスの住まいでサンドイッチを
Quo Vadis
上写真右上から
Baked Asparagus & Parmesan £3.50
Smoked Eel & Horseradish Sandwich £7.00
有名タパス・レストラン「フィーノ」のオーナーと、シェフのジェレミー・リーの共同経営によるレストラン。ジェレミー自らがキッチンで采配を振る当店では、その日に手に入る最高の食材を生かすために、1日に2度メニューを変えるという。国産の食材はその日のうちに使い切り、常に新鮮なものを提供。素材の味を堪能してもらうため、味付けも至ってシンプルだ。目まぐるしく変わるメニューの中で定着した大人気のスモークド・イール & ホースラディッシュ・サンドは、甘く柔らかなウナギにホースラディッシュがぴりりと効いている。ワインはリースリングで、とアドバイスをもらう。アスパラの包み揚げはパルメザン・チーズが味を引き立てまろやか。ヤギのチーズ、そら豆、ミントを三色ストライプで載せたパンは目も舌も楽しませてくれる。この店は、かつて経済学者カール・マルクスが住み、「資本論」を執筆した場所。当時の雰囲気を壊さないように改築された。
店名 | Quo Vadis |
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住所 | 26-29 Dean Street, Soho London W1D 3LL |
TEL | 020 7437 9585 |
最寄り駅 | Tottenham Court Road駅より徒歩4分 |
オープン | 月~土 12:00-14:45 & 17:30-22:45 |
Website | www.quovadissoho.co.uk |
7
めったに出会えない至福の味
Hawksmoor
上から Half a Native Lobster with
Hazelnut Butter
Hawksmoor Hamburger
農家との直接契約で仕入れた最高級国産牛で知られる本格ステーキ・ハウス。「ロンドンで1番のステーキが食べられる」と既に有名な店だが、ステーキに負けず劣らずゴージャスなバーガーやロールがあることは意外に知られていない。定番の純ロングホーン種のバーガーは、チーズにチェダーかスティルトンを選べる。ボリュームたっぷりだけれど、めったに出会えない至福の味。スタッフが料理に合わせて丁寧に選んでくれるお酒とともにジューシーなバーガーを頂くうち、気が付くと完食している。バーガーにはバーテンダーのピートによるオリジナル・カクテル「ジンジャー・ブルー」かビールで。サイドに選んだイングリッシュ・レタスとハーブのサラダは十分に主役を張れる味。国産ロブスターはへーゼルナッツ・バターが効いている。バー・メニューのロブスター・ロールもどうぞ。シティとスピタフィールズにも店舗がある。予約が取りにくいこともあるので迷わず早めに電話して。
店名 | Hawksmoor |
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住所 | 11 Langley Street, London WC2H 9JG |
TEL | 020 7420 9390 |
最寄り駅 | Covent Garden駅から徒歩1分 |
Website | http://thehawksmoor.com |
8
全天候型の楽しい英国パブ
The Ship
Chargrilled Beef Burger with Cheese,
Mustard, Pickled Cucumber, Fries
数あるガストロ・パブの中で、「味も接客もロンドン随一」と評判の当店は、レストラン紹介サイトのビアガーデン・トップ10にも選ばれ、1786年創業の貫禄を見せつける。BBQ メニューにある定番の炭火焼バーガーは、テムズ河を臨むガーデン、または自然光溢れる屋内で。有機野菜を含む99%純国産の新鮮な季節の食材は、オーダーが入ってから調理。デヴォン州エクスモアの草を食み放牧飼育された国産牛100%のバーガーは、新鮮ゆえのミディアム・レアがおすすめ。バンズには同店オリジナルのチーズとたっぷりの野菜もはさまれ、柔らかい上質肉のうまみとマッチする。また魚は、生産地をたどれる持続的漁業でとれたものを使っているので安心だ。ライブ演奏も大人気で、アイリッシュ・バンドのライブではアイルランド人店長が飛び入りでマイクを握ることも。スタッフのジョーが「店長のことを書いて皆さんに来ていただけるかどうかは……」と笑う。とにかくフレンドリー。
店名 | The Ship |
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住所 | 41 Jews Row, Wandsworth, London SW18 1TB |
TEL | 020 8870 9667 |
最寄り駅 | Wandsworth駅より徒歩5分 |
Website | www.theship.co.uk |