構造建築物の新たな課税控除
不動産に対して英国の新たな課税控除があるそうですね。
構造建築物控除(Structural Buildings Allowance = SBA)といい、建物の建設費用を年に2%控除ができるものです。これは、一般からの意見を募るため2019年3月13日に公表され、政府は、今夏にこれを法制化する考えです。
この控除はどの建物にも適用されますか。
いいえ。2018年10月29日以降に建設され、適格な目的で使用される商業用建物だけです。商業用建物とは、土地や「住居」ではないものとなりますので、住宅やアパートだけでなく、刑務所、兵舎、学生寮などは対象になりません。
10月29日より前に建設された建物の場合はどうなりますか。
その場合にはSBAは認められません。たとえ建設工事が10月29日の時点でまだ始まっていなくても、工事契約を10月29日より前に結んでいる場合、あるいは社内の建設で準備業務が10月29日より前に始まっている場合には、その建物は不適格となります。
建物が古くても10月29日以降に改修される場合はどうなりますか。
その新たな建設工事の行われる建物は適格となり、控除は建築日から50年間にわたり認められます。このため、同じ建物でも50年のうちに複数の異なるSBAが請求できる可能性があります。また、建物が50年経つ前に取り壊される場合は、残りの期間についても引き続き2%が控除されます。
この新しい控除とキャピタル・アローワンスの関係を教えてください。
この2つは並立するもので、キャピタル・アローワンス(税務上の減価償却)に認められる費用はSBAには一切認められません。また年間投資償却控除は、SBAが認められる支出には適用できません。
建物がリースの場合や、建物が売却される際にはどのようになりますか。
リースの場合、そのリース期間が35年を超え、借主が頭金を支払い、その金額が建物(またはリース部分)の価格の75%以上に相当する場合など、ケースによってSBAの権利は借主に移転することが見込まれます。
また、売却の際、キャピタル・アローワンスと違い、SBAには償却残高調整はありませんが、基本的にキャピタル・ゲイン収益が以前請求したSBAにより増えることになるでしょう。
建物を持つ企業の活動が複数にわたる場合はどうですか。
SBAは、それぞれの活動の間で「公正で合理的」に配分しなければなりません。その場合、企業の活動が適格であれば、SBAが割り当てられる部分が控除可能な費用となります。また、建物が不使用の場合でも、その企業が適格な活動を続けている限り、引き続き控除を請求できます。
この新たな控除で注意すべき点は何ですか。
建物の建設日や建物が初めて適格な使用として使われ始めた時期、建物の建設費用を記録しておく必要があります。例えば、2018年10月29日以降に建設された建物を非納税者から取得する場合、新たな所有者はSBAを請求できますが、建設費用と建設日を確認する必要が出てきます。
アンディー・トール
税務ダイレクター
税務と税務会計コンプライアンス、HMRCへの照会、オーナーの利益抽出と出口戦略、R&D優遇の請求、キャピタル・アローワンスの請求、税務デュー・ディリジェンス、M&Aの税務など幅広い経験を持つ。