知っているようで知らない
英国のチーズ。

オランダ、フランスとチーズの有名な国はあるが、英国にも優れたチーズがたくさんあることをご存知だろうか。英国内でチーズが製造されるようになったのはさかのぼること2000年以上前。当時は修道院など局所的に作られていたチーズだが、現在はオンラインで英国各地の名産チーズを身近に楽しめる良い時代になった。今回は英国を代表するチーズとそのエピソードを紹介する。(文: 英国ニュースダイジェスト編集部)
参考: www.gourmetcheesedetective.com、www.petersyard.com、www.theguardian.com、www.bbc.co.uk、https://cheese-store.com ほか
あなたに合うのはどのチーズ?
英国の有名なチーズ
英国には750種以上も国産チーズがある。その中からスーパーマーケットで買えるものから変わり種までを厳選してみた。あなたの好みに合うのはどのチーズ?
スーパーで買える 王道チーズ

Double Gloucester
ダブル・グロスター
15世紀から英西部グロスターで製造されているハード・タイプのチーズ。さっぱりとした酸味が感じられる「シングル」と、まろやかで濃厚な「ダブル」の2種があり、どちらもグロスター牛の乳から作られている。丘の上からチーズを転がすクーパーズ・ヒルのチーズ転がし祭りで使われる品種だ。

Stilton
スティルトン
ロックフォール、ゴルゴンゾーラに続く世界三大ブルーチーズの一つで、ダービーシャー、ノッティンガムシャー、レスターシャーの3地方のみで生産されている。外皮も食べられ、塩気のあるクリーミーな味わいが特徴で、強い香りがあるものの比較的食べやすい品種。王室の食卓にもよく上るのだとか。

Cheddar
チェダー
英南西部サマセットにあるチェダー村発祥のチーズ。名前が法律で保護されていないため世界各地で同名のチーズがあるが実は英国発のもの。牛乳から作られ、ポロポロと崩れるものからなめらかなものまで、チーズの成熟度によって異なる食感が楽しめる。英国人が好きなチーズの上位によくランクインする。

Red Leicester
レッド・レスター
牛乳から作られているハード・タイプのチーズ。熟成が進むにつれ味が強くなり、少し甘めで、キャラメルのような旨味を感じられる頃合いが良いとされている。特徴であるチーズのオレンジ色は植物由来の色素、アナトーで着色。チェダーに似ているが、こちらの方がよりマイルドな味わいだ。

Cornish Brie
コーニッシュ・ブリー
フランス産が有名だが、英西部コーンウォール発のクリーミーで柔らかなブリーも負けていない。現在はコーニッシュ・カントリー・ラダーなど、特定の業者によって製造されている。サラダやサンドイッチ、パスタなどあらゆる料理に合わせやすく、大変使い勝手の良いチーズだ。

Cheshire
チェシャー
英国の最も古いチーズの一つ。長時間の輸送に耐えられるようハードに作られており、かつ簡単に製造できるため、現代では工場での大量生産と小規模の生産者によるより濃厚な味わいの2種に大きく分けられる。ピリッとした後味のアップルビーズ・チェシャーなど、数多くの種類がある。
特定のドリンクに合わせて 〇〇に合うチーズ

Wensleydale
ウェンズリーデール
12世紀に修道院で作られ始めた歴史あるしっとりタイプのチーズ。ヨーグルトのような程良い酸味があり、デザート感覚で食べられる。クランベリーやアプリコット、ルバーブなどの果物や野菜が練り込まれた商品も人気。クランブル、フルーツ・ケーキやリンゴなどに添えて、紅茶と共に食べるのがお勧め。

Sage Derby
セージ・ダービー
緑色の大理石模様で見た目もインパクトがあるチーズ。緑色の要因はセージで、元々はクリスマスなど特別なときに食べられていた。味はチェダーのようなマイルドな食感で、クリーミーな味わいの中にハーブの香りが感じられる。果物や鶏肉料理、白ワインに合わせれば、より爽やかな味が堪能できる。

Lancashire
ランカシャー
クリーミー、クランブリーなどさまざまなタイプがあり、バターのような濃厚な風味が美味。同味のクリスプスも販売されているほど、ビールのおつまみとして最高の組み合わせだ。トーストに載せたり、サンドイッチにしても◎。黒いワックスでコーティングされたランカシャー・ボムも有名だ。
一度は食べてみたい 変わり種チーズ

Stinking Bishop
スティンキング・ビショップ
「臭い司教」という不名誉な名前の通り、独特で鼻をつく強い香りがする。この特徴的な香りは同名の梨の果汁を発酵させた液体で外皮を洗い、熟成させたため。スライスしたパンやクラッカーに付けて食べると、もったりとした濃厚な味が楽しめる。保存の際はラップやタッパーで密閉するのが安心だ。

Cornish Yarg
コーニッシュ・ヤーグ
牛乳から作られたセミ・ハードタイプで、イラクサの葉で包まれたキノコのような味のチーズ。17世紀のレシピを偶然見つけたアラン・グレイという人物によって1980年代に製造されたもので、グレイの名前を逆さにし、ヤーグと名付けられた。イラクサの代わりにニンニクの葉で包んだガーリック味も人気。

Hereford Hop
ヘレフォード・ホップ
チーズ製造会社のチャールズ・マーテルが作った比較的新しいチーズ。牛乳から作られたチーズを焼いたホップでコーティング。外側はカリカリ、内側はわずかな苦味とレモンのような柑橘系の味が感じられる複雑な味わいが特徴で、ビールはもちろん、トーストに載せても良い。
ここで買える! ロンドンにあるチーズ専門店
pistachio & pickle
6 Camden Passage, London N1 8ED
Tel: 020 7354 0656
火~日 10:30-17:00
www.pistachioandpickle.com
Cheese Hub
52 Broadgate Link, North Mall, London EC2M 7PY
Tel: 020 7628 6637
月~木 10:00-17:00 金 11:00-19:00
https://cheesehub.com
Neal's Yard Dairy
Covent Garden Shop, 17 Shorts Gardens,
London WC2H 9AT
水~土 10:00-18:00
www.nealsyarddairy.co.uk
英国人はどう付き合っている?
チーズにまつわるエトセトラ
英国人はチーズをどのように楽しんでいるのだろうか。英国産チーズとの付き合い方から、チーズにまつわるエピソードまでを集めてみた。
英国チーズの歴史
欧州の北部に位置し、温暖な気候と頻繁に降る雨によって牧草が育つ自然条件に恵まれている英国。牛乳を長期間保存するために生まれた同国のチーズづくりは、古代ローマ時代以前にさかのぼる。初期の製造元は農民や修道院などに限定的されていたが、時代の荒波に揉まれた結果、その生産方法などは著しく変化を遂げていった。
16世紀前半にヘンリー8世がアン・ブーリンと結婚するためにローマ・カトリック教会から分離し、修道院を閉鎖したことにより、同国のチーズ製造は大々的にストップしてしまい、英国のチーズ製造業は衰退の一途をたどる。17世紀ごろ、町の発展と人口増加に合わせた大規規生産を可能とした近代的なチーズづくりが復活したが、一方で職人たちによる小規模なチーズづくりは減少。20世紀に入ってからも第一次、第
二次世界大戦の被害を受け、再び安定して生産が始まったのは今からたった50年あまり前のこと。現在目にできる元祖英国チーズのチェシャーとランカシャーは、そんな負の圧力に耐えながらこの数世紀で洗練されていったものなのだ。
英国には現在750種を超えるチーズがあり、これはフランス産約400種のほぼ2倍にあたる。英国内のスーパーマーケットの棚に並ぶもの、日本に輸入されるものはこれらのほんの一部でしかない。チーズ専門店はもちろん、オンライン・ショップもたくさんあるので、ぜひお気に入りの一品を探してほしい。
第一次世界大戦中、仏人店主に「ミサのためにパンとバターとチーズをください」と尋ねる英准大尉
チーズは食後にいただくもの
日本や米国のレストランでは、前菜にチーズの盛り合わせが提供されることがあるが、フランスなど欧州の国ではデザート前、英国ではデザート後にチーズがサーブされることが普通。デザートを食べた後にチーズ、というのは数世紀前からの伝統で、英作家チャールズ・ディケンズの小説「マーティン・チャズルウィット」(1843年)でも食事の最後にセロリと一緒にチーズが提供されているくだりがある。昨今では「デザートの後に赤ワインを飲みたくない」と、チーズが出される順番に疑問を感じている英国人もおり、しばしば新聞のネタに上がるほど。ちなみに科学的にはチーズを食事の最後に食べることは良いとされており、人間は食事をすると口の中が中性から酸性に変わるので、チーズを食べることでアルカリ性に保ち、歯の酸化を防ぐのに活躍してくれるそう。
英国チーズは、ポート・ワイン、ブドウ、リンゴ、洋ナシ、セロリ、ピクルス、チャツネ、クラッカーなどを合わせて食べるのが定番だ。
ウイスキーとのペアリングも人気がある
スティルトンを食べると変な夢を見る
チャールズ・ディケンズの有名な小説「クリスマス・キャロル」のなかに、スクルージがチーズひとかけで知覚が狂ってしまう、と表現するシーンがある。そのエピソードから「寝る前にチーズを食べると悪夢を見る」という説が定着し、特に英国が誇るブルーチーズ、スティルトンを就寝前に食べると変な夢を見る、というまことしやかな説が有名だ。スティルトンを含む英国産のチーズを食べると良い夢、悪い夢を意図的に見ることができるのか、という夢の研究が2005年になされた。一言断っておくと、この研究は英国でチーズを宣伝する団体ブリティッシュ・チーズ・ボード(British Cheese Board)によるもので、巧妙なマーケティング手法の一つであったようだが、興味深い結果が出た。男女200人、7日間に渡る調査により、「スティルトンを食べると奇妙な夢、レッド・レスターでは学生時代などの過去、ブリティッシュ・ブリーを食べる女性はリラックスした情景、男性は謎めいた夢、ランカシャーは未来、チェダーは有名人のことを夢に見る割合が上がった」のだそう。就寝前のチーズがさまざまな夢を誘発し、より現実離れした面白い光景を見せてくれるということは事実のようだ。
寝る前のスティルトンで不思議な冒険に出てみてはいかがだろうか
チーズを使った表現
英語にはチーズという言葉を応用した表現やことわざがある。その一部を紹介しよう。
To Cheese (someone) Off
誰かを怒らせたり、イライラさせたりすること
Cheese it!
やめろ! よせ! 相手に何かをやめるか、逃げるかを言うこと。19世紀に泥棒たちの間で使われていたスラング
Chalk and Cheese
見た目が似ているが、中身は全く異なる性質のもの
Tough/Hard/Stiff Cheese
苦難を受けている人に同情していない、相手のためにできることが何もないことを示すために投げかける言葉
Cheesy
安っぽい
Cheesy romance
感情的で安っぽくロマンティックすぎる、安っぽいラブソングにも使える。また、公共の場での過度なイチャつきや愛情表現など安っぽい男女間のやりとりを表す
Cheeze
お金。またはヴィーガン用チーズのこと
Cheeseparing
お金を使いたくない人、ケチケチした、しみったれた様子



在留届は提出しましたか?
街のシンボル的存在のイーリー大聖堂。1342年に完成した高さ52メートルのオクタゴンと呼ばれる8角形の塔(写真)の美しさは必見だ
ノルマン人によって作られたネイヴ(Nave)と呼ばれる身廊。天井はヴィクトリア時代にペイントされた
イーリー大聖堂の礎を築いたエセルスリス
近付いてみるとその大きさに圧倒される
フレデリック・アシュウィン作「最終日の夜明け」
オリヴァー・クロムウェルの家。チケットは1階の観光案内所で購入しよう
クロムウェル家のキッチンの様子
棒の先頭にこの道具を付け、水中のウナギを地上から狙った(イーリー博物館蔵)
ちなみに、街名のイーリー(Ely)とウナギ(Eel)の発音が似ているため、ウナギが命名に絡んでいるという説もあるが、定かではない。

4月にイーリーで行われた伝統の一戦








ヘンリー8世とアン・ブーリンとの結婚は、その後のアイルランドの運命も変えた
オリヴァー・クロムウェル
「ジャガイモ飢饉」と呼ばれた大飢饉(1845~49年)は英政府の政策が原因で長引き、人々は4年にわたり飢餓に苦しんだ
イースター蜂起で建物が崩壊したダブリンのサックヴィル・ストリート
1916年に独立運動の急進派が出したアイルランド共和国宣言
1976年8月、ベルファストで起きた市街戦。英国兵士の持つ銃の先が見える
1970年代のロンドンデリー(デリー)で、建物の屋上から火炎瓶を投げようとしている男性
ベルファスト合意のパンフレットを手にしたシン・フェイン党の元党首ジェリー・アダムズ氏(写真右)
北アイルランドとアイルランドの国境に立つ交通標識
北アイルランド議定書に対する反対デモ
「アイリッシュ海に境界線を作るな」、と書かれたベルファストのグラフィティ
モリスの最も初期の壁紙デザイン「トレリス」1862年
ウィリアム・モリス William Morris
モリスの邸宅レッド・ハウス内部
1874年のモリス(写真右)とバーン=ジョーンズ(同左)
モリスとバーン=ジョーンズによるアーサー王とランスロットのステンドグラス
モリスがデザインしたテキスタイル「コンプトン」シリーズ
ロセッティがモリス商会のためにデザインした椅子
1879年に撮影されたロンドン中心 オックスフォード・ストリートの店






















街の至るところに出された女王逝去のサイネージ
ピカデリーの書店ハッチャーズに置かれた女王への追悼の言葉
ピカデリー・サーカス駅前の電子広告に映し出された女王の姿
いつも華やかなディスプレイのフォートナム&メイソンが、女王の写真を使いシンプルで黒いディスプレイに変わった
バッキンガム宮殿の外に手向けられた市民からの花束

かつてベケットの遺骨や血に染まった衣服が入っていたエナメル製の聖骨箱
カムロドゥヌム(現在のコルチェスター)に設置されていたとされるネロのブロンズ製の頭部。1907年に英南東部サフォークのアルド川で発見されたが、長い間第4代皇帝クラウディウスだと間違われていたそう
2014年にコルチェスターにあるショップの地下から発掘されたローマ帝国のコインや装飾具
ナイキのモナークとロンドン拠点のファッション・ブランド、マーティン・ローズ(Martine Rose)のコラボ・スニーカー。それぞれのブランドの強みや個性を最大限に生かし、実験的なスニーカー作りに取り組んだ
リミテッド・アイテムなど貴重なスニーカーも多数展示される
金属という画期的な新素材を用いて、ル・コルビュジェとともに製作したシェーズ・ロング(長椅子)のバスキュランテB306に横たわるペリアン。本展では同モデルの復刻版が展示され、実際に座ることができる
フランスのスキー・リゾート、レ・ザルク内にあるレジデンス、Arc 1600
描く動機の一つに「自分の弱さを認めつつも、誰かに認められたい」と挙げているパッカー。大胆な色使いに隠されたメッセージは、鑑賞者の琴線に触れる何かがあるはずだ
後期の水彩画「ナポリ」(1851年)は、長らく別のイタリアの街「ジェノヴァ」と題されていたが、最近の研究で場所が異なっていたことが分かり改称された。改称後初のお披露目となる
ロダンが考えた手法「アバティス」(abattis)は、手のひらなど個々のパーツを別々の彫刻から集め、再利用する手法のこと。前例のない型破りなやり方で独自の世界観を築いていった
旧1000円札の夏目漱石を撮影し、写真文化の発展に貢献した小川一真(1860~1929年)による作品。同氏による菊の写真も展示される。120年以上前に撮影されたとは思えない美しさは必見
透明で強固な熱硬化性アクリル樹脂、ルーサイトを使ったイブニング・バッグや16~17世紀に使われたブルザ(エリザベス1世の印章を守るために使われた袋)など、マニアックなアイテムがそろう
バーニーにとって初の屋外展示作となったインスタレーション「Sawtooth Battery」(2019年)が公開。高さ約10メートルのすらりと伸びた作品で、ギャラリーのテラスに設置されている
精神病を患う人が生み出す、むき出しの生の芸術に惹かれていたデュビュッフェ。ここまでの規模の回顧展は英国初で、個人所蔵の作品など貴重なコレクションが各国から集結する
春の訪れからその終わりまでが豊かな色彩で描かれており、心満たされる作品がずらり。ホックニーが最新テクノロジーで描くのは2007年のiPhoneからで、デジタル機器には相当強いようだ
天文学者の生誕400周年を記念して、1873年に描いた縦2.26メートル 、横3.15メートルの巨大な絵画「天文学者コペルニクス」。ポーランド本国で愛されている作品を見られる貴重な機会だ














ラジオ放送を成功させたレジナルド・フェッセンデン
火花送信機やモールス信号機、グラスホッパー電信に囲まれたイタリア人の物理学者、
フラット・ホルム島でマルコーニの助手が無線機器を検査する様子
船内に備えられたラジオ・キャロラインの放送機器たち(コッツウォールド・モータリング博物館)
パイレーツ・ラジオに度々占拠されたマンセル要塞
ベテランDJのジョン・ピール(2004年に逝去)
サフォークのイプスウィッチ発「イプスウィッチ・コミュニティー・ラジオ」の収録の様子。メイン・ストリームで拾われないネタを中心に発信している
調査により、ロックダウン中にラジオで孤独を癒やしたリスナーは多かったことが分かった
イングラムが日本に里帰りさせた「太白」の原木。 ザ・グレンジで阿部菜穂子氏撮影
イングラム氏撮影の1926年当時の小金井堤(イングラム家提供)

晩年のイングラム氏(イングラム家提供)

阿部菜穂子氏 略歴 ジャーナリスト、ノンフィクション作家。毎日新聞記者を経て、2001年から英国在住。「チェリー・イングラム日本の桜を救ったイギリス人」(2016年、岩波書店)で第64回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。同書は著者が全面的に英語で書き直し「‘Cherry’ Ingram The Englishman Who Saved Japanʼs Blossoms」として2019年にペンギン社から出版。英語版はBBC Radio 4 のBook of the Week として朗読されたほか、英米の主要各紙誌で高い評価を得、複数のメディアで最優秀書籍に選ばれた。その後ドイツ語、イタリア語、オランダ語、中国語など8カ国語に翻訳・出版された。
現在造園中のロンドン・ブロッサム・ガーデンのイメージ






