
250年の歴史を誇るロンドン随一の観光名所、大英博物館。世界中から収集された秘宝・財宝が所狭しと並び、日々訪れる人を魅了しているこの博物館だが……じっくり回ってみると、いや、ハイライトだけを見てもお気づきの通り、陳列されているお宝は、英国外のものばかり!! 「盗品の山」「世界の大泥棒」なんて、陰ながら呼ばれているこの博物館、その展示品は、一体いつ、どこからやって来たのだろうか?(取材・文/竹内詠味子 写真/辻本安芸)
華麗なる略奪コレクション

ギリシャ(オスマン・トルコ)
GREECE, ROOM 18
パルテノン神殿のエルギン・マーブル BC447 - 438

エジプト
EGYPT, ROOM 63
ミイラ BC100

EGYPT, ROOM 4
ロゼッタ・ストーン BC196

EGYPT, ROOM 4
ラムセス2世の石像 BC1250

ナイジェリア
NIGERIA, ROOM 25
ベニンのプラーク BC1500 - 1700頃

イラク(アッシリア)
IRAQ, ROOM 6 - 10
ニムルードの宮殿レリーフ BC900頃

インド・スリランカ
SLI RANKA, ROOM 63
タラの仏像 BC700 - 800頃

INDIA, ROOM 18
アマラバティーの大ストゥーパ BC300頃

中国
CHINA, ROOM 33
羅漢像 AD907 - 1125頃

南北米国大陸
MEXICO, ROOM 24
水晶のドクロ AD1400頃

NORTH AMERICA, ROOM 24
先住民の木彫り彫刻 AD1700頃

イースター島
EASTER ISLAND, ROOM 24
イースター島のモアイ像 AD1000頃

大英帝国による植民地拡大の歴史
1600 | 東南アジアを中心に、エリザベス女王の特許を得た貿易会社「東インド会社」を設立 |
1607 | 北米大陸に最初の植民地ジェームズタウンを設立 |
1612 | インド各地に商館を置いて貿易を開始 |
1620 | ピルグリム・ファーザーズがポーツマスよりプリマス植民地へ入植 |
1660 | 北米でオランダとの英欄戦争 |
1711 | 中国・広州に商館設立、貿易を開始 |
1763 | 七年戦争でフランス領カナダを割譲 |
1774 | キャプテン・クックがイースター島へ上陸 |
1775 | キャプテン・クックが北米航路の探検に出る |
1775 | 米国独立戦争が勃発 |
1783 | 米国が独立、合衆国設立 |
1795 | 南アフリカ、ケープ植民地へ進出 |
1798 | ナポレオンのエジプト遠征開始 |
1801 | エジプトのアレキサンドリアでナポレオンに勝利 |
1803 | 欧州にてナポレオン戦争勃発 |
1806 | ケープ植民地を占領 |
1815 | オランダが支配していたセイロンを征服 |
1819 | シンガポールに港を設立 |
1826 | ペナン、マラッカなど、オランダの力が弱まった東南アジアを植民地化 |
1830 | ギリシャ王国がオスマン・トルコから独立 |
1839 | 中国清朝とのアヘン戦争により、中国は香港を割譲、上海など5港を開港 |
1840 | ニュージーランドのマオリ族と条約締結、植民地化 |
1856 | アロー戦争勃発、中国の九龍半島を支配 |
1857 | インド大反乱、翌年(1858年)にムガル帝国を廃止し、ヴィクトリア女王を皇帝とするインド帝国が成立 |
1858 | カナダのブリティッシュ・コロンビアの領有を開始 |
1869 | エジプトにスエズ運河が開通、英国が進出 |
1882 | エジプトの反英運動を鎮圧、保護国とする |
1886 | ミャンマーのコンバウン王朝を破りインド帝国へ併合 ナイジェリアに「王立ニジェール会社」設立、植民地化 |
1901 | オーストラリア連邦が成立、英国自治領となる |
1910 | 南アフリカ戦争で南アフリカを支配、自治領南アフリカ連邦を設立 |
1912 | 中華民国が樹立される |
1914 | 第一次世界大戦勃発 |
1921 | オスマン・トルコの一部(現在のイラク)が英国委任統治領になる |
1922 | オスマン・トルコが滅亡 エジプト王国が誕生、独立 |
1926 | カナダが英国から完全独立 |
1932 | イラク王国が成立 |
1947 | ニュージーランド自治領が独立 インドが独立 |
1948 | スリランカが独立 |
1960 | ナイジェリアが独立 |
1963 | ケニアが独立 |
1997 | 香港が中国へ返還 |
大英博物館のコレクションにまつわる3つのお話
①白熱する「お宝」返還要求
展示品が充実し、博物館としての名声が高まるにつれ、各国から出始めた返還要求の声。大英博物館は、それらの声にどう対応しているのか。
ギリシャ:「エルギン・マーブル」返還要求

エジプト:「ロゼッタ・ストーン」返還要求

ナイジェリア:「ベニンのプラーク」返還要求

②大英博物館にあるメリットとは……?
長年にわたる遺産返還要求を、頑なに拒みつづける大英博物館。これらのコレクションが大英博物館にある利点とは何だろう。
考古学研究に貢献できること:「ロゼッタ・ストーン」
1802年に大英博物館へ運ばれて以来、多くの学者たちを魅了してきたロゼッタ・ストーン。その中でも、この石に刻まれている文字に魅せられたのが、フランス人学者、ジャン・フランソワ・シャンポリオンだった。大英博物館でロゼッタ・ストーンと出会ったシャンポリオンは、研究を重ね、1822年にこの文字の解読に成功する。こうして、古代エジプトの文字「ヒエログリフ」の研究に大きく貢献することになる。
遺産修復へのこだわり:「ポートランドの壺」

創立以来、民衆に開かれた博物館であること
1753年に創立された時から、入場無料の方針を貫いてきた大英博物館。小市民が自由に立ち入り、歴史の重みをかみ締めることができるのは素晴らしい点だろう。これがもしも、高い入場料を取る博物館であったなら……ロゼッタ・ストーンもベニンのプラークも、私たちはまだ見たことがなかったかもしれない。③ブリティッシュ・コレクション
外国製品ばかり!と思ったら大間違い。どこからも略奪していない純英国産コレクションも、実は大英博物館の大きな見どころなのだ。
GREAT BRITAIN , ROOM 46
オリバー・クロムウェルのデスマスク AD1658

GREAT BRITAIN , ROOM 40
サットン・フーの船墓場埋蔵品 AD700頃

大英博物館
現在開催中の特別展
A New World: England's first view of America
6月17日まで
Room 5
開館時間: 10:00-16:45
料金: £7
THE BRITISH MUSEUM | |
Address | The Great Russell Street, London WC1 |
Tel | 020 7323 8181 |
Access | Piccadilly Line: Holborn / Russell Square Northern Line: Tottenham Court Road / Goodge Street |
Open Hour | 月~水・土・日: 10:00 - 17:30、木・金: 10:00 - 20:30 |
Website | www.thebritishmuseum.ac.uk |

A New World: England's first view of America
6月17日まで
Room 5
開館時間: 10:00-16:45
料金: £7
