新たな税制改正
昨年9月にミニ予算の発表があったばかりですが、今回の新しい税制改正は同じものですか。
いえ、これは11月の秋季予算案で、9月に発表された予算とは異なる数多くの変更点が発表されました。
では、所得税と国民保険料(NIC)の主な変更点は何ですか。
ほとんどの課税最低基準額と税率は、2028年まで据え置かれます。主な変更点は、最高税率45%の追加税率が適用される最低基準額が、15万ポンドから12万5140ポンドに引き下げられることです。また、クラス2とクラス3のNICを支払っている人については、料率に若干の引き上げがあります。
配当収入についてはどうですか。
配当収入の非課税枠は、現在の2000ポンドが2023/24年度には1000ポンドに、それ以降は毎年500ポンドに引き下げられる予定です。配当収入に適用される税率は、その人の個人所得の課税帯によって異なり、基本税率の納税者は8.75%、高税率の納税者は33.75%、追加税率の納税者は39.35%と、今後も引き続き現行税率が適用されます。
キャピタルゲイン税(CGT)にも変更がありますか。
CGTの年間控除額は、現在の1万2300ポンドが 2023/24年度には6000ポンドに、2024/25年度以降は 3000ポンドに引き下げられます。控除額を超えた利益に対するCGTの税率は10%から28%(個人の所得水準と売却した資産の種類により異なる)で変更はありません。
会社から提供されるベネフィットに影響を与えるような変更はありますか。
電気自動車(EV)は、雇用主が従業員の個人使用のために提供する場合、現物給付(BIK=Benefit In Kind)として自動車価格の定価の2%に相当する額が課税されます。この税率は2025年4月まで同じです。しかしその後、この税率は課税年度ごとに1%ずつ引き上げられ、2027/28年度には5%になります。同様に、全ての非EV車も同じ期間に毎年1%ずつ引き上げられます。
以前に発表された法人税の減免措置についてはどうですか。
2021年3月の予算案で発表されていた通り、2023年4月1日に19%から25%に引き上げられます。税法上の減価償却(Capital Allowance)の「特別償却」(Super Deduction)は、同日に予定通り適用が終了します。ミニ予算で発表された措置のなかで撤回されなかったものの一つは、年次特別償却(AIA=Annual Investment Allowance)の限度額を100万ポンドに維持する決定です。AIAは、対象となる設備や機器への支出に対して、取得した年度に100%を控除できるものです。この年間の限度額は一時的に100万ポンドに引き上げられましたが、2023年4月1日には20万ポンドに戻る予定でした。また、研究開発費の控除率も変更されました。2023年4月1日以降は、中小企業向け特別控除では、利益から控除できる額が適格な研究開発費の130%から86%に引き下げられ、損失を計上する企業に対する給付の適用率は14.5%から10%に引き下げられます。
住宅用不動産に影響が出る改正はありますか。
2022年9月23日のミニ予算で実施された印紙税(SDLT)の引き下げは維持されましたが、適用は2025年3月31日までのみとなります。
*この記事は一般的な情報を提供する目的で作成されています。更なる情報をお求めの場合は、別途下記までご相談ください。
チー・ラム
税務パートナーデジグネート
DeloitteとPwCに15年以上勤務し、駐在員税務に関するアドバイスを多くの多国籍企業に提供。英国税務のコンプライアンス、HMRCへの対応、渡英前の個人・企業税務計画なども得意とする。