National Trust 130周年ロンドンから電車で片道2時間以内気軽に行ける
ナショナル・トラスト施設
英国の自然や歴史的建築物の保護を目的に設立されたナショナル・トラストは、2025年に開設130周年を迎えた。節目の年にあたり、ナショナル・トラストは次の10年に向けたビジョンを掲げる。同時に、貴族の暮らしをしのばせる邸宅や、彩り豊かな庭園が織りなす英国ならではの景観は変わらず人々を惹きつけてやまない。今回は、そんなナショナル・トラストが運営する施設の中から、ロンドンから電車で片道2時間以内、公共交通機関だけで気軽に訪ねられる場所を厳選して紹介する。(水野彩女、本誌編集部)
*開館時間は時期や施設内の場所によって異なります。お出掛けの際は記載のウェブサイトよりご確認ください。
ウィンストン・チャーチルが晩年を過ごしたチャートウェル
ナショナル・トラストとは?
正式名称は「歴史的名所や自然的景勝地のためのナショナル・トラスト」(National Trust for Places of Historic Interest or Natural Beauty)。1895年にオクタヴィア・ヒル、ロバート・ハンター、ハードウィック・ローンズリーという、当時の英国の社会改革に尽力した3人によって設立された。以来、存続や維持が難しくなった貴族の大邸宅や宗教施設などを保護するチャリティー団体として運営されている。ピーター・ラビットの物語で有名な英作家のビアトリクス・ポターが湖水地方に所有する広大な土地を同機関に寄付するなど、英国のさまざまな歴史上の人物たちがその運動に共鳴。現在ではナショナル・トラストを通じて多くの歴史的施設が一般公開されている。入場料は、施設の維持や保護に充てられるので、訪問することがそのままナショナル・トラストの活動をサポートすることにつながっている。年会費を払うメンバーシップ制度もある。
メンバーシップ制度
ナショナル・トラストの活動に協賛する人のための制度。 年会費を払えば、英国全土に広がる500カ所以上のナショナル・トラスト施設への入場や駐車場利用が無料になる他、ショップでの購買も料金が割引になる。
- 個人(5歳未満は無料)
- 大人(26歳以上):£96/年(£8/月)
- 大人(18~25歳):£48/年(£4/月)
- 子供(5~17歳): £12/年
- ジョイント
- 大人2人(同住所に住む18歳以上): £160.80/年(£13.40/月)
- ファミリー
- 大人2人(同住所に住む18歳以上)+子供または孫(5~17歳): £168.60/年(£14.05/月)
- 大人1人+ 子供または孫(5 ~17歳): £103.80/ 年(£8.65/月)
ナショナル・トラストの次の10年
ナショナル・トラストは今後10年でロンドンの1.5倍にあたる25万ヘクタールの土地で泥炭地の修復や湿地・草地の再生、森林づくりを進める。すでに整備を始めた北アイルランドのブラック・マウンテンでは、3年で133ヘクタールの泥炭地を回復させる予定だ。これにより気候変動の原因となる二酸化炭素を吸収し、洪水リスクの軽減にもつなげる。これまで以上に環境問題に踏み込んだ取り組みだ。
また、都市に住む人々の自然へのアクセス格差を解消するため、英中部コヴェントリー中心部にある14世紀の修道院跡「チャーターハウス」を拠点に、庭園や緑地を公開。さらに100の町や都市で緑地ネットワークを拡充する自然都市プログラムもこの夏始動予定だ。これらの方針は、会員やボランティアら7万人以上の声をもとに策定された。ナショナル・トラストは今後10年で500万人に自然保護活動への参加を呼びかけ、若者向けの職業訓練やBBCとの番組制作などを通じ、自然と文化の価値をより多くの人に届けることを目指している。自然再生と人のつながりをキーに、今後も活動を続けていく。
ブラック・マウンテンの一部、ディヴィス・マウンテン
ロンドンから片道2時間以内で行ける施設5選
カントリー・ハウスのお手本
Belton House
ベルトン・ハウス
ロンドンのキングス・クロス駅から列車で北へ約1時間。英中部リンカンシャーの町グランサムの郊外に、シカの生息する森林や美しい湖を併せ持つカントリー・ハウスがある。その広大な敷地にはイタリア式とオランダ式の庭園を配し、中央にはチューダー様式の邸宅の中でも特にエレガントな美しさで名を知られる、ベルトン・ハウスだ。
17世紀に建てられたベルトン・ハウスは、所有者であるバウンロー男爵夫妻の趣味を反映した、こぢんまりとした端正な邸宅で、その洗練されたデザインは当時流行していたゴシック建築の派手な大邸宅とは一線を画す。1987年に7代目バウンロー男爵によってナショナル・トラストに寄贈されるまで、第一次世界大戦中を除くほとんどの年月が、一族によって利用された。
この館は、一族の友人でもあった国王エドワード8世が、米国人女性ウォリス・シンプソン夫人との秘かな逢瀬の場に使ったと言われ、やがて「王冠を掛けた恋」として世間を騒がせる大スキャンダルとなった事件の一端に、この邸宅が関わっていたことになる。また、1995年にBBCでドラマ化・放映された、ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」のロケ地ともなり、今でも多くのファンが訪れることでも知られる。
邸宅の内部は、かつては1階以上が男爵一家の住まいで、地下はメイドやバトラーといった使用人たちの住居やキッチンに分かれていた。2025年7月時点は休止しているが、「ビロウ・ステアーズ・ツアー」と称し、この地下の部分を紹介する人気ツアーも開催されることがあるので、サイトで要確認。いくつもの小さな部屋から、華やかな貴族の暮らしを縁の下から支えた使用人たちの日常が想像できそうだ。
● Infomation
£20(子供 £10)
庭園のみ £17(子供 £8.50)
Grantham, Lincolnshire NG32 2LS
Tel: 0147 656 6116
水~日 12:30-17:00(要予約)
ナショナル・レールGrantham駅から1番または27番のバスでBelton Hall Gates下車、徒歩5分
www.nationaltrust.org.uk/belton-house
王子の代わりに罰を受けた男の邸宅
Ham House and Garden
ハム・ハウス&ガーデン
ロンドン地下鉄の運行区域であるというのが信じられないほど、緑にあふれた景色が続くリッチモンド地区。広大なリッチモンド・パークや、静かに、そして雄大に流れるテムズ川など、視界に入るのはいかにも英国的な田園風景だ。ハム・ハウスは、この自然の中に佇んでいる。
かつて英国には「ウィッピング・ボーイ(むち打ち用の男の子)」なる役職が存在した。神によって王権を授かったと見なされていた王子を側近が叱ることは許されない。そこで編み出されたのが「ウィッピング・ボーイ」。この役割を担う男の子は王子とともに育てられ、王子が何か悪さをした際には代わってむち打ちの罰を受けなければならない。王室社会に閉じ込められて友人が少ない王子にとっては、兄弟のようにして一緒に育てられた幼なじみが罰せられるのは耐え難い苦しみであり、しつけの方法としては効果的であったという。
後に清教徒革命で処刑されたチャールズ1世にも、ウィリアム・マリーという名のウィッピング・ボーイがいた。チャールズ1世は成人後もマリーを忘れることはなく、このハム・ハウスを与えた。邸宅はマリーの死後も何代にもわたり一族が相続し、最終的にはナショナル・トラストへと寄付された。
邸宅は17世紀のオランダ絵画のコレクションでも知られるが、日本や中国のさまざまな芸術品もそろう。また、この時期ぜひ訪れたいのが庭園。ウィンブルドンのセンター・コートを丸ごと包み込むサイズを誇る緑の芝生を始め、50人以上の庭師が世話するという、色と香りにあふれた夏らしい草花の数々は、イングランドの夏の姿として訪問者の記憶に残ることは間違いない。
● Infomation
£17(子供 £8.50)
Ham Street, Ham, Richmond, Surrey TW10 7RS
Tel: 020 8940 1950
邸宅 12:00-16:00 庭園 10:00-17:00
地下鉄Richmond 駅から371番または65番のバスでSandpits Road下車、徒歩15分
www.nationaltrust.org.uk/ham-house
ウィンストン・チャーチルゆかりの地
Chartwell
チャートウェル
英南部ケントの静かな村、ウェスターハムの西にあるカントリー・ハウス、チャートウェル。この館は、現在でも名相と呼ばれるウィンストン・チャーチルが、第一次世界大戦に関する著作「世界の危機」(「The World Crisis」)の印税で1922年に購入し、家族とともに晩年まで週末を過ごした場所として知られる。部屋の多くはチャーチルとその家族が使っていた当時のままに保管されており、絵画や書籍、愛用品の数々が、まるで持ち主が席を外したばかりのような姿で置かれている。また、アマチュア画家だったチャーチルが1924年に描いた風景画や、フランス印象派の画家クロード・モネによる1902年の作品「チャリング・クロス橋」など、美術愛好家の驚くような作品が何気なく壁に飾られているのを見つけるのも楽しい。チャーチルは40歳を過ぎてから絵を描き始めたが、アトリエとして利用した別棟のスタジオには、額装されていない作品が数多く飾られている。
もちろん付近を散策するのを忘れずに。かつて「チャートウェルから1日離れることは、1日損をすることだ」とチャーチルが言った通り、チャートウェルの美しさは夏にハイライトを迎える。敷地内の各所で咲き誇る香り高い花々を愛でるも良し、湖の側で涼しい風に吹かれながらのピクニックも良しだ。
この季節はキッチン・ガーデンもにぎやか。ここで採れた新鮮な野菜や果物は、かつてチャーチル一家の食卓にも上った。ちなみに、カフェはグルメだったチャーチルの専属料理人、ジョルジーナ・ランドマーレさんの名が冠されている。
● Infomation
邸宅+庭園+スタジオ £22(子供£11)
庭園+スタジオ £15.40(子供£7.70)
Mapleton Road, Westerham, Kent TN16 1PS
Tel: 0173 286 8381
邸宅 11:30-17:00(週末は異なる)
庭園 10:00-17:00
ナショナル・レールOxted駅から236番バスでMapleton Road下車、徒歩6分(夏期の日・祝日に限りナショナル・レールBromley North駅から246番のバスも運行
www.nationaltrust.org.uk/chartwell
「オーランド」の舞台となった
Knole
ノール
ナショナル・トラスト施設の多くが郊外や地方に点在する中、ロンドンから1時間以内で訪れることのできるのが、英南部ケントのセブンオークスの町にあるノール。600年以上の歴史を刻む壮麗な屋敷と、1000エーカーを超える広大な庭園とが一体となった、イングランドでも屈指の規模と格式を誇る邸宅だ。
このノール・ハウスは、15世紀末にカンタベリー大主教の邸宅として建てられたもので、のちにエリザベス1世の寵臣トマス・サックヴィルが所有者となった。以後、400年以上にわたりサックヴィル家によって受け継がれ、同家の血を引く作家ヴァージニア・ウルフの恋人で詩人のヴィタ・サックヴィル=ウェストもこの屋敷に生まれ育っている。ウルフの代表作「オーランド」は、この屋敷とその家族をモデルに書かれたものとしても知られる。敷地内には、鹿の群れが暮らす中世から続くディア・パークや、かつて王族のために用意された壮麗なステート・ルーム群、17世紀の調度品をそのまま残した部屋など、時代を超えて保存された空間が点在する。特にエリザベス朝時代の香りが色濃く残るグレート・ホールや、タペストリーが壁一面を覆うレイノルズ・ルームは見どころの一つ。ここでは、ジョシュア・レイノルズ、マス・ゲインズバラ、ヴァン・ダイクなどの名画も観ることができる。一方で、かつての住人でヴィタの従弟、エディ・サックヴィル=ウェストの個室へと続くゲートハウス・タワーに上って周囲の景観を眺めるのも良いだろう。老朽化による建物の損傷を修復する大規模なプロジェクトを展開しており、毎週水~土曜日に修復ガイド・ツアーなども開催中だ。屋根裏部屋ツアーも興味深い。
● Infomation
庭園+塔 £6(子供 £3)
邸宅+庭園+塔 £18(子供 £9)
Sevenoaks, Kent, TN15 0RP
Tel: 0344 249 1895
邸宅 11:00-16:00 塔11:00-17:00
ナショナル・レールSevenoakes駅から徒歩30分
www.nationaltrust.org.uk/visit/kent/knole
ほろ酔い気分でタイム・スリップ
George Inn
ジョージ・イン
ナショナル・トラストが管理する歴史的施設は、お城や貴族の邸宅といった上流階級の人々が暮らした建物ばかりではない。英国の庶民の歴史と文化を語るとなると、やはりパブは外せないだろう。英各地には古いパブが点在するが、ナショナル・トラストの管理下にあり、しかも気軽に訪れることができるのがこのジョージ・インだ。
ロンドンに現存する旧宿屋としては、唯一となる回廊を持つ施設。交通量が多いバラ・ハイ・ストリートから一歩東側に入ると、歴史劇の舞台セットとして出てきそうな回廊が出現。「イン」と呼ばれる宿屋が居酒屋を兼ねていた時代には、このように店の正面に回廊が設けられていることが一般的であったという。
決して広い空間ではないにもかかわらず、店内はいくつかの小部屋に分かれている。パーラメント・バーは、かつて馬車の到着を待つ客の待機所として使われていた場所。またミドル・バーは、以前はコーヒー・ルームと呼ばれており、英作家のチャールズ・ディケンズが頻繁に訪れていた。ディケンズは、近隣の刑務所に収監されていた父親と面会するため、幼少時からこの辺りをよく歩いていたという。債務を支払うことができない者たちが収監された監獄をテーマとした作品「リトル・ドリット」でもこの店についての記述が見られる。
壁の到る所に掲げられた英国の偉人の肖像画、薄暗い照明、黒色の木材に囲まれた空間には、まるで英国史の一幕に足を踏み入れたかのような雰囲気に満ちている。
● Infomation
入場無料
The Geroge Inn Yard,77 Borough High Street, London SE1 1NH
Tel: 020 7407 2056
11:00-23:00(週末は異なる)
地下鉄London Bridge駅から徒歩5分
www.nationaltrust.org.uk/george-inn



在留届は提出しましたか?
オランダ式庭園からベルトン・ハウスを臨む
敷地内の森にはベルモント・タワーと呼ばれる小さな塔が立つ
ウィンザー・ルームと名付けられている寝室
テムズの川辺に建てられたハム・ハウスの広々とした庭
オランジェリー・カフェでくつろぐ訪問者たち
「ザ・ロング・ギャ
ラリー」と名付けられた部屋にある日本の飾り戸棚。金箔が塗られたオランダ製の台上に置かれている
変わり行く空の色の中に佇むチャーチルの別邸
スタジオに残るチャーチルのパレット
庭園ゴールデン・ローズ・ウォークは夏も美しい
広大な敷地面積を持つ、ノールの邸宅と庭園
レッド・ルームの別名もあり、重厚な雰囲気が漂うレイノルズ・ルーム
敷地内には中世から鹿が生息していた
まるで歴史劇のセットのようなジョージ・イン
店内のあらゆるところに肖像画や古地図などが掲げられている
すぐ近くには高層ビル、ザ・シャードがそびえ立つ
モーガン首席大臣(写真左)と鈴木大使(同右)
ウェールズ産のチーズやビールの数々
鈴木大使もお気に入りという、伝統的なウェルシュ・ケーキ
青年合唱団「Only Boys Aloud」が歌声を披露
ビジネス・パネルディスカッションに耳を傾ける人々
CBSOのコンサートで指揮台に立つ山田さん
「指揮者の呼吸がみんなと共有できたとき、うまくいくんです」(山田さん)
米国で開発された初期の缶切り











「ビートン夫人の家政読本」の表紙
ウィリアム・エドワード・パリー卿
フレイ・ベントス社の初期の商標
ストックするばかりでなく消費期限にも注意
静かなポート・タルボットの公営住宅群
良い缶詰は味も価格もあなどれない


ウェールズのほとんどの道路標識は英語・ウェールズ語の併記。ウェールズの高速道路管理局は優先する言語を選択でき、ウェールズ南部の大部分は英語、ウェールズ北部はウェールズ語が優先
読み方は「スランヴァイルプールグウィンギルゴゲリッヒルンドロブールスランティシリオゴゴゴッホ」(!)
聖ポール大聖堂の隣にある屋上公共庭園、リフレクション・ガーデン
女性庭師の草分けファニー・ウィルキンソン
2022年にやっとブルー・プラークが設置された
2000年にロンドンのパーラメント・スクエアで起きた、
中世薬草学の写本「Old English Herbal」
テート・モダンの敷地内にあるコミュニティー・ガーデン
さまざまなイベントが開催予定のOmVed Gardens
英北部チェスターに残る古代ローマ時代の浴場
バースにある冷水浴槽。火照った体を冷ますのに使われた
かつて英東部マーゲートにあったライドのサインは今も残されている








2024年4月ブリッジ・オーケストラとの共演
2024年4月ブリッジ・オーケストラとの共演
2023年12月東京南青山MANDALAでのライブの様子
木曽海道六十九次之内 洗馬 1830年代後半
日本橋 東海道五十三次之内 朝之景 1833~35年ごろ
東都両国遊船之図 1832~4年
六十余州名所図会 阿波 鳴門の風波 1855年
武陽金沢八勝夜景(雪月花之内 月) 1857年
左から「紫苑に鶴」、「満月に雁」、「菊に雉」 全て1830年代初期
隅田堤闇夜の桜 1847~8年
名所江戸百景 亀戸梅屋舗 1857年
東海道秋月 武州神奈川台之図 1839年ごろ
アルフレッド・ハフト博士 Dr. Alfred Haft
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