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Tue, 19 November 2024

知って楽しい建築ウンチク
藍谷鋼一郎

首相が掲げる「倫理的な資本主義」


The TimesThe Times
政治家の役割は経済の活性化に努めること

セント・ポール大聖堂前での経済格差抗議デモの例に見られるように、資本主義に対する不信が拡大している。政治家は大衆の動きに追随しているに過ぎないが、キャメロン首相がロンドンの金融街シティへ批判の目を向けたことは注目に値する。だが、彼が披露した演説は、幹部への巨額報酬の分配が銀行部門の破綻を引き起こしたという点にこだわった狭い議論だった。また提唱する方策案は詳細を欠き、これまでに行われた対策を見ても説得力に乏しい。労働党のミリバンド党首の議論はより広範囲に及ぶものであり、幹部への給与分配率を公表するなどの具体案を含めた方針を掲げている。さらに一つ明確にしておきたいのは、誤った緊縮財政策によって労働者の給与が削減され、職が脅かされているということだ。人々が豊かな生活を送るためには経済の活性化に注力することが重要である。政治家は企業統治や銀行幹部の高額報酬について語ることで、経済を停滞させている責任から逃れられると考えているのかもしれない。だが、その責任は免れ得るものではない。(1月19日)


The IndependentThe Independent
政治家は機関投資家に目を向けるべき

金融危機は、資本主義がいかに不安定で不公平なものであるかを露呈した。仮に政略的な意図があったとしても、政治家による、倫理的な資本主義の実現に向けた試みは歓迎だ。キャメロン首相は自由で公平な「より良い経済」を掲げ、経済活動及び雇用機会の拡大、銀行規制の強化、税法規の改正を提唱している。それ自体は結構だ。だが、キャメロン首相の要請を持ってしても、企業幹部個人が企業風土を変革することは不可能だろう。経営陣が巨額の報酬を得たり、過剰に短期の利益を追求する戦略を取った際に何か対策を打てるのは、企業の所有者である株主にほかならない。キャメロン首相の掲げる方策は的を外れたものではない。首相は株主権限の強化についても言及している。しかし、取り組む相手が間違っている。英企業株の大半は個人投資家ではなく機関投資家が保持しているからだ。倫理的な資本主義の実現に向けて真摯に取り組むのであれば、政治家は機関投資家にもっと注意を向けるべきだ。(1月19日)

 

藍谷鋼一郎:九州大学大学院特任准教授、建築家。1968年徳島県生まれ。九州大学卒、バージニア工科大学大学院修了。ボストンのTDG, Skidmore, Owings & Merrill, LLP(SOM)のサンフランシスコ事務所及びロンドン事務所で勤務後、13年ぶりに日本に帰国。写真撮影を趣味とし、世界中の街や建築物を記録し、新聞・雑誌に寄稿している。
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