第22回 気持ちを伝える
23 February 2012 vol.1340
現在ロイヤル・バレエ団は、中休みの真っ最中。今年はダンサー陣の希望が叶い、2週間という通常よりも長い休みをいただくことができた(昨年までは1週間だった)。今シーズンは9月中旬から始まったのだが、早くも80回以上の公演が終了している。身も心もくたくたになってしまったダンサーも少なくなく、またこの先も長いシーズンが7月下旬まで続くので、ここで一旦、小休止をいただけるのは本当にありがたい。
自分はこのお休みを利用し、日本に一時帰国してバレエ教師活動を行うことにした。現在は、岡山県岡山市に滞在している。今回の岡山県でのバレエ活動は、計4日間、岡山就実学園なでしこホールなど3会場にてのバレエ・クラス・レッスンに加え、1対1での個人指導も行っている。
参加者の年齢は、下は8歳から上は年齢 制限なし。全国から募集し、岡山、大阪、四国、奈良など、西日本を中心にたくさんの子供たちが参加してくれている。
バレエ・クラス・レッスンにて
自分は、数年前からこういったバレエ活動を全国各地で行っているのだが、活動の主な目的は、日本でバレエ・ダンサーを目指す子供たちにバレエの楽しさを知ってもらうこと。まずは音楽を聴きながらのバレエ・ステップとともに、とにかく体を目一杯動かしてもらう。頭のてっぺんから指先、足先まで神経を張り巡らせ、体に踊りのリズムとビートを叩き込む。学んでもらうステップの中には現在、ロイヤル・バレエ団でも行っている レッスン・ステップも入れ込み、途中、私のちょっとしたおしゃべりなんかも含まれる(笑)。子供たちには、まずバレエという芸術に一生懸命向き合うことで、その楽しさを知ってもらいたい。
「芸術」という言葉の意味についての解釈はたくさんあると思うのだが、自分は、芸術というものは人に何かを伝えるのが目的だと思っている。
描写をすることで気持ちを伝える絵の世界、音色を組み合わせて曲を作り、気持ちを伝える音楽の世界。文字に自分の気持ちを託して人に伝える本の世界。言葉と体を使って気持ちを伝える舞台の世界、癒しの世界、歌の世界など、この世には数えきれないくらいの芸術の世界が存在する。
自中でもバレエは、音楽を聴きながら、舞台上では言葉を一切発することなく自身の体だけを使って人に気持ちを伝える芸術の一つ。
言葉を使わず人に気持ちを伝えるのは、容易なことではない。しかし、人それぞれバレエを始めるきっかけになった理由は千差万別とはいえ、せっかくアーティストになれるチャンスをもらったからには、そのチャンスを生かして欲しいと切実に思う。
自分は、ロイヤル・バレエ団の一員に選ば れた一人のアーティストとして、これからも日本の子供たちを応援していきたい。
皆さん、もしかすると今日のレッスンで、将来のビッグ・アーティストが誕生するかもしれませんよ!
チョコレートと手紙