俳優・喜劇役者・作家、スティーブン・フライの身体的特徴といえば、あの強烈に横にひん曲がった鼻と熊みたいな巨体。まるで英版ジェラール・ドパルデューで、グロテスクといえばグロテスクだ。しかし、一旦彼がしゃべり出すと様子が変わる。語彙の豊かさに深みのあるバリトン・ボイス、ポッシュなブリティッシュ・イングリッシュ、そしてウィットと、ハリウッドの二枚目俳優なんぞ全く歯が立たないくらいカッコ良い。
生まれも育ちもハムステッドでパブリック・スクール出身という山の手のお坊ちゃま、フライ。ケネス・ブラナーやエマ・トンプソンらケンブリッジ大のコメディ劇団フットライツ仲間と共演した映画「ピーターズ・フレンズ」のピーター役は、ゲイという共通点を除いても、彼じゃないと演じられなかった。まさにハマり役というもので、強烈な印象を残している。
躁鬱病にずっと悩まされ続けているフライは、17歳のときに一度自殺未遂を起こしている。また、11年前の37歳のときには舞台「セル・メイト」をすっぽかして、米国へ逃避行。当時マスコミは大騒ぎした。ちなみに作家の北杜夫や俳優リチャード・ドレイファス、「スター・ウォーズ」のレイア姫キャリー・フィシャーらも躁鬱病で知られている。
「ユーロ・ビジョン」のコメンテイター、テリー・ウォーガンや、車番組「トップ・ギア」の司会ジェレミー・クラークソンじゃないけれど、英国アカデミー賞「BAFTAアワード」の司会はフライ、というくらいすっかり定番化。本業以外でも才能を見せている。
今日24日が59歳の誕生日というフライ。病に負けず、これからも多方面で「ブリティッシュネス」を表現してほしい。