完璧主義と自己顕示欲が織り成す
銃と尿入り紙コップと127回
かつて「尿バトル」を繰り広げた(?)ポランスキーと
ダナウェイ
完璧主義者「映画監督」と自己顕示欲者「俳優」がタグを組んだら、それは…… 。
ロマン・ポランスキー監督が、主役にジャック・ニコルソンを迎えて撮った「チャイナタウン」(1974)。アカデミー脚本賞に輝いた本作で、ニコルソンに勝るとも劣らぬフィルム・ノアールを体現していたのがヒロイン役のフェイ・ダナウェイ。車中シーン撮影中、トイレ休憩を請うもポランスキーに無視された30代前半ダナウェイは、近寄ってきた監督の顔めがけて、窓からオシッコで満杯の紙コップをぶちまけたとか。
「アギーレ/神の怒り」「ノスフェラトゥ」など数作品で交えた、70年代前後のニュー・ジャーマン・シネマの立役者、ヴェルナー・ヘルツォーク監督と俳優の故クラウス・キンスキー(娘は女優ナスターシャ・キンスキー)。一級芸術品を生み出した裏に、2人の間で激しい口論、対立、確執があったことは有名。「アギーレ~」のジャングル・ロケでは、あまりの過酷さに嫌気の差したキンスキーが降板を訴えると、ヘルツォーク監督は銃で撃ってやるとマジ切れしたというから穏やかでない。
当時、無名のモデルだったティッピ・ヘドレン(娘は女優メラニー・グリフィス)を発掘し、「鳥」(1963)に出演させた故アルフレッド・ヒッチコック監督。狙いはドンピシャ、この映画でヘドレンはスターの仲間入り。しかし、翌年の「マーニー」撮影中、監督から関係を迫られ、これを拒否。セットで彼女がヒッチコックに向かって「ファット・ピッグ」と呼ぶほど関係は悪化。監督は彼女との7年契約を解消したという。
映画「シャイニング」(1980)で夫に追い詰められ、精神的不安定に陥る妻を好演した女優シェリー・デュヴァルは、実際、撮影中に故スタンリー・キューブリック監督からリテイク127回要求されるなどして追い詰められ、困憊状態だったという。ゆえの傑作。