一流ブランドの服を取っ替え引っ替えしていた、映画「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイはかわいかった。次のジュリア・ロバーツ、ニコール・キッドマンを狙える資質は十分。しかし、本来星2つの内容を（ニューヨークの映像は素晴らしかったが）、3にも3つ半にもグレードアップさせたのが、メリル・ストリープだ。

前作の策動的な上院議員を演じたシリアス・ドラマ「クライシス・オブ・アメリカ」から一転、ローレン・ワイズバーガーの同名ベストセラー小説を基にしたコメディ・タッチの「プラダを～」では、ファッション誌のカリスマ編集長（米国版「ヴォーグ」の英国人編集長アナ・ウィンターがモデルと言われる）になりきったストリープ。エレガンスかつ冷徹な役柄を、一分の隙なく期待以上の完璧さで披露し、やっぱりこの人でなくっちゃと思わせた。

有名女子校バッサー・カレッジで英語・演劇を学び、奨学生としてイエール大演劇校に入学。77年の「ジュリア」で映画デビューする。その後の華麗なる経歴はご承知の通りで、オスカーにノミネートされること26年間で13回。オードリー・ヘップバーンの48年間12回を抜く最高記録だ。「クレイマー、クレイマー」（79）で助演女優賞、「ソフィーの選択」（82）で主演女優賞を獲得したが、他にも「ディア・ハンター」、「フランス軍中尉の女」、「恋に落ちて」といった作品が印象深い。「マディソン郡の橋」では、たっぷり腰回りに肉をつけて中年女性のエロティシズムを表現してたっけ。

唯一、ストリープのCVにマイナスがあるとすれば、「エビータ」が10年製作延期になったお陰で、彼女からマドンナにエビータ役のお鉢が回ってしまったことだろうか。大女優も年齢の壁にはぶち当たるのだった。