ハンパじゃない半生たどった
UK音楽シーンの英版エミネム
キャピタル・ラジオから、今はやりの男ラップに女バラードを絡めたチャート1位「リード・オール・アバウト・イット」が流れて、「エミネムの新曲?」と思い込んでいたら、どっこいこれが、ロンドン東部ハックニー出身の白人ラッパー、プロフェッサー・グリーン(28)の歌だった。彼のボーカリゼーションは、簡易ブログ「ツイッター」でライバルのグライム系ラッパー、ワイリーから、「エミネムなしでは、お前は存在せず」と批判されたくらい、まるでエミネム。高音域のシャープな声の持ち主だ。
2年前にブレイクしたロンドン南部出身の黒人ラッパー、タイニー・テンパーに続いて、メインストリームに登場した本名スティーブン・ポール・マンダーソン。母親が16歳のときに生んですぐ、祖母に育てられた少年は、悪事を重ねて高校をドロップアウト。5年前にインディー・レーベルと契約する22歳まで、大麻を売って生計を立てていたという(芸名のグリーンは大麻を示すスラングでもある)。その上、18歳の誕生日以来、音信不通だった父親が、3年前に自殺。スティーブン本人も2年前に、クラブで暴行を受け、瓶で頚部を切られて重傷を負う悲劇に見舞われる。
まさに不幸のテンコ盛りだった彼だが、「恋に落ちた」ラップに身を助けられた。暴行事件の2カ月後に歌手リリー・アレンのツアーに参加、ヴァージン・レコードからメジャー・デビューを果たし、アルバムでアレンと共演。これまでNME賞、MTV賞などで賞を取り、昨年11月、プライム番組「X ファクター」のステージに立つと同時に、チャンネル4で彼を追ったドキュメンタリーが放映された。バンド「エコー・アンド・ザ・バニーメン」のたらこ口、イアン・マッカロクの娘で女優キャンディと最近破局したのは残念だったが、ともあれ、人生捨てたもんじゃない。