200周年
新10ポンド札の顔になった
ジェーン・オースティン
「高慢と偏見」「分別と多感」など、イングランドの田舎を舞台に中流階級の女性の姿を生き生きと描いた、英国を代表する作家ジェーン・オースティン(1775-1817)。作品の多くが映画化されるなど、今でもその人気は衰えていない。オースティンが副腎皮質の疾患と思われる病により41歳の若さで死去したのは、今からちょうど200年前の1817年7月18日。この記念すべき節目に、チャールズ・ダーウィンに替わり、9月からジェーン・オースティンが10ポンド札の顔になる。ここでは、新紙幣の個々の図柄を解説しよう。
W・H・リザーズによる
オースティンの肖像画
肖像画は姉の描いた
スケッチが基
紙幣に印刷されている、お人形のような可愛い顔立ちのオースティンの肖像は、生涯を通して仲の良かった姉カサンドラが1810年ごろに描いたスケッチを基に、1870年に制作された銅版画。甥に当たるジェームズが、死後に名声の高まったオースティンの伝記を書く際に、アーティストのウィリアム・ホーム・リザーズに依頼した。原画のオースティンが意志の強そうな表情をしているのに比べ、銅版画はビクトリア時代に流行したロマンティックで女性らしい顔になっており、姉の描いたスケッチを紙幣デザインに採用しなかったのは残念という意見もある。原画は現在、ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーに所蔵されている。
2ミス・ビングリーのセリフ
「読書ほど楽しいものはないわ!」
肖像画の下に書かれている「I declare after all there is no enjoyment like reading!」は、オースティンの「高慢と偏見」の第11章でミス・ビングリーによって語られるセリフだ。本文ではこの後、「本以外のものは、全部すぐに飽きてしまうもの!」と続く。これは、あるディナー・パーティーの後、兄の友人であるダーシーに好意を寄せているミス・ビングリーが、彼の読んでいる本の2巻目を手にして言うのだが、誰も返事をする者はいない。ダーシーの気を引こうとして不成功に終わったミス・ビングリーは、本を放り出しておしゃべりに戻る。
3十二角形の
ライティング・テーブル
ジェーン・オースティンズ・ハウス・
ミュージアム所蔵のテーブル
背景にうっすら見える幾何学模様と、1本の羽根は、オースティンが執筆の際に使っていたライティング・テーブルと羽根ペンを表している。オースティンがこれらを使ったのは晩年の8年を暮らしたハンプシャーのチョートン・コテージで、オースティン作品の多くがこの家で生み出された。この家は近くのマナー・ハウス、チョートン・ハウスに住む兄のエドワードが、オースティン、母親、姉カサンドラ、そして彼女たちの親しい友人マーサ・ロイドのために購入。現在は「ジェーン・オースティンズ・ハウス・ミュージアム」になっており、オースティンの使った楽譜や本棚などの家具類が展示されている。
4背景のドローイングは
イザベル・ビショップ
紙幣の中央に描かれた、机に向かう女性の姿は、オースティンではなく、「高慢と偏見」の主人公エリザベス・ベネット。図柄のエリザベスは、それまでに姉のジェーンから送られた手紙を一枚一枚調べている。これは米アーティストのイザベル・ビショップ(1902-1988)に手によるもので、1976年にE・P・ダットン & カンパニーから出版された「高慢と偏見」の31枚の挿し絵の一つだ。ビショップは1930年代から70年代のニューヨーク、ユニオン・スクエアの様子を好んで描いた。同書が出版されたときは、繊細かつ正直に女性の姿を描く姿勢がオースティンの作品にぴったりだとされた。
5ゴッドマーシャム・パークの
風景が広がる
紙幣の中央下に描かれた風景は、ロンドンの南東ケント州にあるゴッドマーシャム・パーク。ここは裕福なナイト家の養子になった3番目の兄エドワードの暮らした地で、オースティンは何度も兄のもとを訪れたそう。美しいケントの風景がオースティンの著作に与えた影響は大きいとされ、「マンスフィールド・パーク」はゴッドマーシャム・パークを舞台に描かれたとも言われている。また、この付近はテレビ・ドラマ「ジェーン・オースティンのエマ」のロケ地としても利用された。
200年記念イベントが開催中
Jane Austen's House Museum
10:00-17:00(9月~12月は10:30-16:00)
£8
Winchester Road, Chawton, Hampshire GU34 1SD
Tel: 01420 83262
Alton駅
www.jane-austens-house-museum.org.uk