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何故「エンゲキ」なのか?
演劇は学問です!?
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舞台を踏んでこそ一人前!?
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俳優にバッタリ!?
街と劇場、俳優と観客が当たり前のように一体化しているここロンドンでは、マチネとイブニングの間に、劇場そばのカフェをうろつくジュード・ロウに遭遇したり、観劇後に友人とゆっくり舞台の感想を語ろうと近くのパブに入ると、出演者たちがずらり勢ぞろい、たばこ片手に和んでいる場に出くわしたりする。演劇が街に息づく英国ならではのちょっと嬉しいハプニングである。
役者のつばまで飛んでくる距離感!
大劇場が基本のミュージカルとは違い、どんな小さな空間でも上演できてしまうのが演劇。舞台上の俳優にあまりに至近距離から見つめられて、「どうしよう目がそらせない、でも見詰め合うのも気まずい……」なんて変な心配をしてしまうこともあるほどだ。俳優の一挙手一投足が見えるどころか、時には汗やつばまで飛んでくる、そんな臨場感はテレビや映画では絶対に味わえないはず。
ハプニングを楽しもう!
「Show must go on」。何が起ころうとも、一旦幕が開けば最後まで演じ続けなければならないのが舞台だ。衣装が破れる、かつらにろうそくの火が燃え移る、上演中に出演者がトイレに駆け込む(!)など、毎日上演する上でハプニングはつきもの。この「何が起こるか分からない」緊張感もひっくるめて楽しめるようになれば、あなたも立派なシアター・ゴーアー!?今、イキオイのある作品といったらこれ!
英国演劇と言えばシェークスピア。こう考えている人は多いはず。もちろん、シェークスピアは素晴らしい。でも英国には彼の作品以外にも必見の舞台が星の数ほどある。ここでは、今、見逃せない作品をピックアップ!
リアルな英国の高校生活を描く
The History Boys
「I'm a Jew. I'm small. I'm homosexual. And I live in Sheffield. I'm fucked」。成績がいいからって名門大学に入れるわけじゃない。そんな英国のリアルな高校生活を瑞々しく描き出した青春群像劇。突然始まるフランス語の寸劇、しばしば口ずさまれる詩や文学の一節。英語にハンディをかかえる人間にとってはキツイ部分も多いけれど、心配ご無用。もちろん全部理解できた方がより楽しめるけれど、たとえ聞き取れないセリフがあったとしても、個性際立つ1人1人の登場人物たちに、「ああ、いるいるこんな奴!」と共感できること、間違いなしの名作だ。
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あらすじ=1980年代、イングランド北部シェフィールドの公立高校。成績は良いけれど、一癖も二癖もある成績優秀クラスの生徒たちを教えるのは、文学や詩をこよなく愛し、バイクを乗り回す型破りな老教師、へクター。今年こそは生徒たちをオックスフォードかケンブリッジ大学の奨学生にしようと目論む校長は、試験のテクニックを熟知する若手教師、アーウィンを臨時教員として雇うが……。
Wyndhams |
Charing Cross Road, London WC2H 0DA |
07年4月14日公演分まで予約可 |
月~土 19:30、マチネ 木・土 14:30 |
£10~45 |
Tel: 0870 950 0925 |
馬に異常なまでの執着を見せる少年の真実とは?
Equus
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あらすじ=ある日、精神科医マーティンの元に、6頭の馬の目をアイスピックでつぶしたという少年、アランが送り込まれてきた。固く心を閉ざし、自分の本心を決して明かそうとしないアランに対し、辛抱強く診察を続けるマーティン。やがてアランは自らの境遇をポツリ、ポツリと語るようになる。厳格な父親と、信仰深く、息子を溺愛する母親に抑圧され育ってきた彼が、このような事件を起こしたきっかけとは一体何だったのか。
Gielgud |
Shaftesbury Avenue, London W1D 6AR |
07年6月9日公演分まで予約可 |
月~土 19:30 (2月27日は19:00)、マチネ 水・土 14:30 |
£19.50~49.50 |
Tel: 0870 950 0915 |
たった4人の出演者で何と150人以上の役を演じる
The 39 Steps
たった4人の俳優たちで150人以上の登場人物を網羅、演劇ならではの醍醐味を味わえるスリリングなコメディー。モチーフとなっているのは1935年に製作されたアルフレッド・ヒッチコックの同名サスペンス映画。重要なポイントはオリジナルを忠実に再現しつつも、舞台ならではのコミカルな芝居で映画とはまったく異なる、笑いの絶えない作品に仕上がっている。帽子の向きをちょっと変えるなど、ほんのちょっとした動きで見事に別人になりきる役者の実力をとくとご覧あれ。 
あらすじ=自分のフラット内で見知らぬ女性が死ぬというとんでもない事件に出くわしたリチャード。死ぬ直前に彼女が遺した「39ステップ」という言葉と地図の謎を解くため、旅に出ることに。リチャードを犯人と思い込み追跡する警察の手を逃れつつ移動し続けるが……。
Criterion |
Piccadilly Circus, London SW1Y 4XA |
07年9月15日公演分まで予約可 |
月~土 19:45、マチネ 火 15:00、土 16:00 |
£10~39 |
Tel: 0870 060 2313 |
今も色褪せないロング・ラン作品もご紹介!
2人の出演者がつくり出す恐怖の世界
The Woman in Black
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あらすじ=忌まわしい過去の体験に未だ悩まされる中年弁護士、キップス。彼はその事件を若い俳優とともに芝居という形で再現することによって、過去の呪縛から解き放たれようとするが……。
Fortune |
Russell Street, London WC2B 5HH |
07年9月1日公演分まで予約可 |
月~土 20:00、マチネ 火15:00、土16:00 |
£12.50~36 |
Tel: 0870 060 6626 |
上演すること50年以上、驚異のロング・ラン
The Mousetrap
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あらすじ=大雪が降りしきる中、モリーとギルズの若夫婦が経営を始めたばかりのホテルに、5人の客が集まった。そこへやって来たのはトロッター警部。何でも殺人者がこのホテルに向かっているという。やがて雪の世界に閉ざされたホテル内で、不気味なマザーグースの調べに沿って、1人、また1人と客が殺されていく。
St Martin's |
West Street, London WC2H 9NZ |
07年5月12日公演分まで予約可 |
月~土 20:00、マチネ 火14:45、土17:00 |
£13.50~37.50 |
Tel: 0870 162 8787 |
まだまだあるオススメ作品
The Woman in Black
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The National Theatre
South Bank, London SE1 9PX
Tel: 020 7452 3000
07年6月2日まで月~土 19:30、マチネ 14:30(他作品も同時期に上演中につきスケジュール要確認)
£10~28
The Entertainer
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The Old Vic
The Cut, London SE1 8NB
Tel: 0870 060 6628
07年5月26日分まで予約可 月~土 19:30、
マチネ水、土 14:30
£10~45
Globe Theatre
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Globe Theatre
21 New Globe Walk Bankside, London SE1 9DT
Tel: 020 7401 9919
£10~28
Brecht Double Bill 1
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The Young Vic
The Cut, London, SE1 8LZ
Tel: 020 7922 2922
07年4月14日まで (時間は日によって異なる)
£15.50、土イブニング & 最終日 £18.50(2作品観劇可)
The Caretaker
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Tricycle
269 Kilburn High Road, London, NW6 7JR
Tel: 020 7328 1000
07年4月14日まで 月~土 20:00、マチネ土 16:00
£9.50~19
Days of Hope
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King's Head Theatre
115 Upper Street, Islington London N1
Tel: 020 7226 1916
07年4月22日まで 火~土 20:00、マチネ 土、日 15:30
£20~25
日本の演劇人、英国に進出中!
かのシェークスピアを生み出した地として、演劇大国の名を欲しいがままにしている英国。そんな国で外国人が演劇をするということは、きっと我々が想像するよりはるかに大変なことが多いはず。しかし近年、日本の演劇人たちが続々と英国進出を果たしている。日本人俳優を使い日本語で上演する作品あり、英国人を使いプロット作りの段階から英語という作品あり。さまざまなアプローチで英国に挑戦するたくましき彼らに注目してみた。
リーディングで本公演のチャンスを掴む
鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)
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日本を代表する若手劇作家/演出家の一人、鴻上尚史。昨年2月17日、ロンドン西部のブッシュ劇場で代表作、「トランス」をリーディング上演した模様を弊誌1034号でお伝えした。そのリーディング上演を大好評のうちに終えた本作品が、晴れて同劇場にて本公演されることが決定! 6月上旬のオープニングを控え、現在キャスティングなどで大忙しの鴻上氏に本公演決定の喜び、意気込みをうかがった。
ー前回のリーディングが好評を博し、本公演が決定したそうですが?
(ブッシュ・シアターの)芸術監督のマイクさんが気に入ってくれて、これはもう、本公演をしましょうということになったのです。とても幸運なことでした。
ー決定した時のお気持ちは?
それはもう、嬉しかったですね。リーディングをやったかいがあったというものです。
ー前回のリーディングを通して、英国の観客について学ばれたことはありますか。
予定していた通りの反応でした。ここで笑って欲しいと思うところでは笑ってもらえたし、ここは集中して欲しいと思うところは、ちゃんと集中してくれて。俳優に力があれば、ちゃんと同じ反応なんだなと感じました。
ー今回の公演では、リーディング時の脚本をそのまま使う予定ですか、それとも変更などを加えられるのでしょうか。
「ドラマターグ」※というポジションで、トニー・ビカーさんに入ってもらいました。より口語的でイギリス人観客に通じる表現にするために、1週間ずっとディスカッションして直していきました。リーディングの時の台本より、よりこなれた、現代的なセリフになったと思います。
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違いといえば、イギリス・バージョンですから、イギリスで、イギリス人相手に演出することが、それがもう一番の違いです。 僕の書いたものに対して、イギリス人俳優がどんなふうに反応するのか、現場でキャッチボールを繰り返しながら、イギリスの観客に届く「トランス」をつくれればいいなと思っています。「トランス」は、核となるイメージがはっきりとあって、それが具体的な俳優さんによって変わっていくものです。イギリスでどんな俳優さんと出会うかで、作品は違ってくると思います。
※ドラマターグ: 台詞の言い回しや表現法法などを作家にアドバイスする専門家
Trance |
The Bush Theatre |
Shepherds Bush Green, London W12 8QD |
07年6月6日~30日 |
月~土 20:00、土マチネ 15:00、6月8日のみ 19:00 |
£15、£10(土マチネ、学生/シニア割引) |
Tel: 020 7610 4224 |
英国人をもうならせるシェークスピア作品をつくり出す
蜷川幸雄(にながわ・ゆきお)
プロフィール=1935年生まれ。日本演劇界の第一人者として、国内外でさまざまな作品を発表している演出家。英国でも数々の作品を上演しており、昨年6月にはロイヤル・シェークスピア・カンパニーのコンプリート・ワークス・フェスティバルに「タイタス・アンドロニカス」で参加、批評家から絶賛された。
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あらすじ=古代ローマ。ガイアス・マーシャス(後のコリオレイナス)は、偉大な将軍でありながら、貧民に対し傲慢な態度を見せたため、民衆の反感を集める。ローマを追放されたコリオレイナスは、かつて敵味方に分かれて戦ったオーフィディアスの元へ赴き、ともにローマへ攻め入る。国を滅ぼさんばかりの勢いに恐れ慄いたコリオレイナスの母、ヴォラムニアと家族は、戦いを止めるよう懇願。その願いを受け入れ、退却したコリオレイナスだったが……。
Coriolanus |
Barbican Centre |
Silk Street, London EC2Y 8DS |
07年4月25~29日19:15、29日のみ17:00 |
£10、16、21、28、35、Superseat(プラス5ポンド) |
Tel: 020 7638 8891 |
英国をベースに活躍 アート・プロジェクトCrop主宰
渡部賢治(わたなべ・けんじ)
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ちょうど本号が出版される4月5日、ロンドン北部、イズリントンで渡部さん率いるアート・プロジェクト、Cropの舞台「注文の多い料理店」が上演される。4人いる出演者のうち、日本人は渡部さん1人。稽古開始の段階では大まかなプロットしかつくらず、稽古の最中に俳優たちとのコミュニケーションを通して肉付けの作業を行うという渡部さんに、日々の活動形態についてうかがった。
ーCropという活動形態について教えてください。
元々私は音楽を中心にやっていたのですが、2005年にリトアニア人の妻と結婚し、彼女が絵を描いていたこともあり、Cropというアート・プロジェクトをつくりました。聴覚や視覚に訴える様々な要素をフレキシブルに取り入れたかったので、劇団、という形にはしたくなかったんです。
ーCropのメンバー構成は?
基本的には自分と妻の2人です。後は作品に応じてキャスティングします。キャスティングで重視するのは、その人の持つ人間性や面白み。作品をつくり出す上で、ある程度のプロットはありますが、後は即興で話を膨らませていくので意外性や遊び心を持った人をその都度選びたいのです。
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故意に日本的なテーマばかりを選んでいる訳ではありません。この2作品については個人的所以で。「耳なし法一」に関しては、島根県松江出身なので、松江に滞在していた小泉八雲には小さい頃から慣れ親しんでおり、リトアニアの演劇祭に出演することが決まった時にこの話で世界中の人たちを怖がらせたいな、と思って(笑)。「注文の多い料理店」は、宮沢賢治が外に目を向けていた人物で、彼の作品に宇宙的なものを感じたからです。色を取り払った、グローバルなものを作りたいという自分の意図と合致していました。
ー舞台は英語と日本語のどちらで? 英語でやられるとなると、役者間、役者と観客間でコミュニケーションの困難さを感じませんか。
舞台は英語でやっていますが、それほどは感じないです。リハーサルの段階では紆余曲折ありますが、その過程で言葉じゃない何か、共通点を感じることがあるんです。その共通言語を見付けて、舞台でお客さんに観せられればいいな、と思います。