イングリッシュ・マフィン
English Muffin
世界中で大人気のテレビ・ドラマ「ダウントン・アビー」。英国では9月から映画が公開されていますが、もうご覧になりましたか。映画の公開に合わせ、英国内では、出演者がテレビや雑誌のインタビューに登場するプロモーションが盛んでした。また10月には、撮影に使われているハイクレア城が一泊限りでエアビーアンドビーにリストされ、一部屋150ポンドで、あのダウントン・アビーに宿泊できるとあって、ますます注目を集めていました。
そんなブームに乗って(?)、私は同時期に発売された「ジ・オフィシャル・ダウントン・アビー・クックブック」を購入しました。著者は、BBCラジオ「ザ・キッチン・キャビネット」や、テレビの歴史ドキュメンタリー番組でおなじみの食文化史研究家、アニー・グレイさん。
ドラマの場面を切り取った美しい写真がふんだんに紹介されている本書には、アップステアーズ(上流階級の人々、主人側)とダウンステアーズ(使用人)とに分けて、100以上のレシピが紹介されています。
ケジャリー、サマー・プディングなど、このコラムでご紹介した食べ物もたくさん登場しているのですが、「イングリッシュ・マフィン」がアップステアーズの「朝食」の章に出ているのが目に留まりました。
マフィンというと、カップケーキ型をした甘いお菓子を想像する方も多いと思いますが、英国のイングリッシュ・マフィンは、直径6~7センチほどの丸くて平べったいもの。オーブンではなく、グリドルという鉄板で焼くため、日本のおやきのように、両面にきつね色の焼き目が付いています。イーストを使って生地を発酵させるのと、丸い形がクランペットによく似ていますが、クランペットの生地が液状でゆるめなのに対して、マフィンはパン生地にそっくりです。また、クランペットには蜂の巣のような穴ぼこがありますが、マフィンにはありません。
19世紀にはとてもポピュラーな食べ物で、街角には「マフィン・マン」がいて、マフィンを売り歩いていたといいます。 手またはフォークで横半分に二つに割って、たっぷりのバターをつけて頬張れば、外側はかりっと、中側はバターの染み込んだ軟らかな生地が口の中で一体になります。
イングリッシュ・マフィンにハムとポーチド・エッグ、オランデーズ・ソースを載せたエッグ・ベネディクトという、ちょっと豪華な朝食メニューもよく知られていますが、こちらは英国発ではなく、米国で考案されたものという説が有力なようです。
イングリッシュ・マフィンの作り方(直径6~7センチのもの12個分)
材料
- 小麦粉 ... 450g
- 牛乳 ... 240ml
- 卵 ... 1個
- バター ... 30g
- ドライ・イースト ... 7g
- 塩 ... 小さじ2
作り方
- 牛乳をぬるめに温め、バターを入れて溶かす。
- ボウルに小麦粉を入れ、上から❶を入れて混ぜる。
- ❷に溶き卵とドライ・イーストを入れ、よく混ぜる。
- ❸に塩を入れてよく混ぜる。
- ❹の生地を小麦粉を薄くまいたまな板(またはワークトップ)の上で15分ほどよくこねる。
- ボウルに❺を入れて、暖かい場所で2時間ほど発酵させる。
- 生地が2倍くらいの大きさになったら、12個に分けて、それぞれを丸め、上から押さえて、約1.3センチほどの厚さにする。
- ❼を天板に載せて、暖かい場所でさらに30分ほど発酵させる。
- よく熱したグリドル(またはフライパン)で両面がきつね色になるまで焼いて出来上がり。
memo
今回の映画では、イングリッシュ・マフィンを見つけることはできませんでしたが、朝食の場面では銀器に入ったスクランブル・エッグ、お茶の場面ではキュウリのサンドウィッチやケーキなど、さまざまな料理が登場していました。ブルーレイが発売されたら、食べ物に着目して、再度じっくり映画を見直してみたいです。