サンファイア
Samphire
英国在住の皆さんなら、この国ではテレビでたくさんの料理番組が放映されていることはご存知だと思います。私はこれらの料理番組が大好きで、特に気に入っているのが「グレート・ブリティッシュ・メニュー」と「マスターシェフ: ザ・プロフェッショナル」です。どちらも、プロのシェフがその腕を競い合う番組。これらを見ていると、英国のフード・シーンにおける食材のトレンドが分かるというのも楽しみの一つです。そして、ここ何年かでは、出汁、味噌、ワサビ、柚子などの日本食材がずいぶん多く登場するようになったのに気付きます。
7~8年くらい前だったでしょうか。当時、これらの番組で何度も目にして「一体、どんな食べ物だろう?」と興味を持ったのが「サンファイア」でした。シェフたちがこれを使うときは、たいていが魚料理に添える形です。テレビで見る限りでは、まるで多肉植物のような緑色の茎(?)をしていて、野菜なのか海藻なのか、ちょっと判断がつきませんでした。
同じ頃に、ロンドンのあるシーフード・レストランに出掛けたことがありました。テレビで何度か見ていたせいか、注文した魚のソテーに添えられた、極細のグリーン・アスパラガスのような緑の添え物がサンファイアだというのはすぐに分かりました。シャキシャキとした歯ごたえの茎は「けっこうしょっぱい!」というのが、ひと口食べたときの率直な感想。それは塩がかかってしょっぱいというよりは、サンファイア自体の中からじわじわとにじみ出てきている感じです。それもそのはず、このサンファイアとは、海岸などに育つ塩生植物といわれるもので、そのもの自体がすでに塩気を帯びているのです。そして「磯の香り」とでもいうようなアロマと塩気がシーフード料理との相性が良いというのは、食べてみて納得。炒めると鈍い深緑になってしまいますが、蒸すか、さっと茹でただけなら、つやつやとした緑色が、お皿の上の料理を鮮やかに引き立てて、プレゼンテーションにも貢献してくれます。
ところでこのサンファイアには、ロック・サンファイアとマーシュ・サンファイアと呼ばれる2種があります。シェイクスピアの「リア王」にも登場するロック・サンファイアの方は、断崖や岩のあるところに生育する種。採取が困難なこともあり、18世紀末ごろには市場であまり見かけなくなってしまったのだとか。現在一般的に食されているマーシュ・サンファイアは、かつては貧しい人々の食べ物とされていたそうです。現在では、100グラムが2ポンドくらいでスーパーで購入可能。これが安いか高いかは意見の分かれるところかもしれません。
サバのソテー&サンファイアの作り方
(2人分)
材料
- サバ(三枚におろしたもの)...2枚
- 小麦粉...適量
- バター...適量
- 塩・コショウ...適量
- サンファイア...100g
作り方
- サバに小麦粉を薄くまぶして、余分な粉をはたき落としたものを、バターを熱したフライパンに皮目を下にして並べ、中火で2~3分焼く。
- 塩・コショウをして、裏返して焼き色がついて中に火が通るまでさらに焼く(好みでここでしょうゆを少々加えても可)。
- 鍋に水を沸騰させて、よく洗ったサンファイアを入れ、茎が軟らかくなるまで2~3分ほど茹でる。
- ❸のお湯を切り、熱いところにバターを加えて混ぜる。
- サバのソテーに❹を添えて出来上がり。
memo
英国で採れるサンファイアの旬は初夏と言われています。もしチャンスがあれば、いつかサンファイア採取にチャレンジしたいと思っています。皆さんはサンファイア採りをしたことがありますか?