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Tue, 05 November 2024

英国の口福こうふくを探して

「英国料理はまずい」だなんて、言い古された悪評など何のその。おなじみのものから、意外と知られていないメニューまで、英国の伝統料理やお菓子には、舌が悦ぶものが色々あります。ぜひ一度ご賞味を。


No. 111

コーヒー&ウォールナッツ・ケーキ
Coffee & Walnuts Cake

Coffee & Walnuts Cake

私が料理やベーキングをしたときの、最初の試食者で批評家はたいてい夫です。そして、最もうれしいのが「これ、子供の頃にグラニーが作ってくれたのにそっくり」というコメント。今回作ったコーヒー&ウォールナッツ・ケーキを一口食べた後の第一声がこれでした。

義理の祖母にあたるその人には、会ったことはありません。ですが、料理が上手だったということは、義母や夫から何度も聞いています。経済的にはあまり豊かとはいえなかったそうですが、それでもやりくりをして、ケーキやお菓子などもよく作っていたそうです。その中の一つがこのケーキ。刻んだクルミの入ったコーヒー味のスポンジの間には、はみ出るほどのコーヒー味のバター・クリーム。コーヒー・クリームはケーキの上にもてんこ盛りです。見た目は決して洗練された上品なデザートではありません。でも、お母さんやおばあちゃんの手作りの味が忘れられないという理由からか、英国人にはとても人気があります。

コーヒーの味がしっかりとしみ込んだバター・クリームは相当甘く、食べた途端に歯が溶け出してしまうのではないかと思うほど。でも、それこそが英国のおばあちゃんの味。どこか懐かしさを感じさせるゆえんかもしれません。

私は、なぜか幼い頃から、ケーキはバター・クリームより生クリームの方がおいしい、と刷り込まれていました。そのため、日本でバター・クリームのケーキというものをあまり食べたことがありませんでした。それが英国に来てみると、ケーキのデコレーション(アイシング)に使われているのは、ほとんどが、知ってはいけないほどバターと粉砂糖が大量に使われたバター・クリーム。長い間、できるだけ避けるようにしていたのですが、ある時、義母が義父の誕生日に好物であるこのケーキを作ったというので、食べてみたのです。

バター・クリームは、口の中で「砂糖」の文字が踊り出すほどに甘い。ですが、それをコーヒーの苦味と香りが包み込み、香ばしくてかつ爽やかな味わいに昇華しています。ふわふわとしつつも、確かなテクスチャを感じるスポンジに、ほんのり苦味のあるクルミの歯ごたえが、香り豊かなバター・クリームと口の中で混ぜ合わさると……「英国のケーキは最高!」と思わずにはいられない瞬間です。

使用するコーヒーは、こだわって自家製エスプレッソを使う方もいるようです。でも、有名フード・ライターで料理家のナイジェル・スレイターは、インスタント・コーヒーの方が豊かでバランスのとれた風味になると言っています。なので私も真似していつもインスタントを使っています。

コーヒー&ウォールナッツ・ケーキの作り方
(6~8人分)

材料

【スポンジ】

  • セルフレイジング・フラワー...175g
  • バター...175g
  • カスター・シュガー...175g
  • 卵...3個
  • ベーキング・パウダー...小さじ1
  • クルミ(細かく刻む)...50g
  • インスタント・コーヒー...小さじ2
  • お湯...大さじ1

【バター・クリーム】

  • バター...150g
  • 粉砂糖...300g
  • クルミ(飾り用)...適量
  • インスタント・コーヒー...小さじ2
  • お湯...大さじ1

作り方

  1. 室温に戻したバターをボールに入れ、カスター・シュガーを加え、ハンド・ミキサーでクリーム状になるまで混ぜる。
  2. ❶に溶き卵を徐々に加えながらよくかき混ぜ、刻んだクルミを加える。
  3. ❷にセルフレイジング・フラワーとベーキング・パウダーを加え、かき混ぜる。
  4. ❸にお湯で溶いたインスタント・コーヒーを加え、混ぜる。
  5. 直径20センチのケーキ型(サンドイッチ・ティン)2つにバターかオイルを塗り、敷き紙をセットしたものに4を2つに分けて入れる。
  6. 180℃に予熱したオーブンで15〜20分焼く。竹串を刺してみて生地がついてこなければ出来上がり。
  7. バター・クリームは、室温に戻したバターをボールに入れてハンド・ミキサーで混ぜ、ふるった粉砂糖を少しずつ加えてふわふわしたクリームになるまで混ぜる。
  8. ❼にお湯で溶いたインスタント・コーヒーを加え、混ぜる。
  9. ❽の半分を一つのスポンジの上に塗ってもう一つのスポンジを重ね、その上からもクリームを塗る。
  10. ❾の上にクルミを飾り付けて出来上がり。
 

マクギネス真美マクギネス真美
英国在住の編集&ライター。日本での9年半の雑誌編集を経て、2003年渡英。以降、英国を拠点に、ライフスタイル、ガーデニング、食などの取材、執筆を行う。英国料理の師は義母。
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