
開幕まであと半年を切ったロンドン五輪に向けて、英国ニュースダイジェストでは関連情報を随時掲載していく。今回は、52年ぶりの英国統一チーム結成で話題を集めるサッカー男子に注目。同五輪代表を率いるスチュアート・ピアース監督へのインタビューを、2回に分けて掲載する。
取材: 小杉敏之/東京中日新聞
コーディネート: BAREFOOT COMMUNICATIONS LTD
翻訳・編集: 大塚麻里ほか
Stuart Pearce MBE
1963年4月24日生まれ、ロンドン出身。2012年のロンドン五輪サッカー男子監督を務める。ファビオ・カペッロ監督率いるイングランドA代表のコーチと21歳以下の選手で構成されるU-21代表の監督を兼任。現役時代はイングランド代表の主将も務めた。
ロンドン五輪サッカー男子代表選手の選考基準は何ですか。
サッカー男子においては、オーバーエイジ枠の選手3人を含む23歳以下の選手全18人、加えて補欠4人を選出することになっています。とりわけ、今夏開催のUEFA欧州選手権に出場する代表選手を注視しておかなければなりません。
というのも、私たちが抱える課題の一つとして、五輪開催前に行われる欧州選手権の出場選手を、五輪にも出場させるべきかどうかを決める必要があるからです。彼らは、昨年から続く国内リーグにおいて10〜11カ月にわたってプレーした後で、今度は6月いっぱいを欧州選手権に費やすことになります。引き続き7月8日から五輪代表選手団に参加することは、あまりに大きな負担となる可能性があります。
北アイルランド、スコットランド、ウェールズといったイングランド以外のサッカー協会は英国統一チームの構想に反対を表明していますが。
個人的には、それらすべての国が協力してくれることを望んでいます。また五輪に出場するか否かを最終的に決めるのは、個々の選手の五輪に対する意欲や気持ちであるとも思います。イングランド以外の各国のサッカー協会は、確かに英国統一チームの結成について好印象を持っていません。反対理由の一つとして、各協会の持つ独立性が失われてしまうことを恐れているというのがあるのでしょう。加えて、英五輪協会はイングランド・サッカー協会に英国統一チームの監督を選出する機会を与えましたが、それが他国のサッカー協会の反感を買ったのかもしれません。まあ、このあたりは私の憶測に過ぎませんが。各サッカー協会の懸念はある程度は私も理解できますが、一方で今回の五輪を取り巻くサッカー界の状況はやや混乱しているのではないかとの印象を受けています。
私にとっては、政治とサッカーは全く別のものです。この2つは決して混同すべきではありません。大切なのは、五輪で我々のプロフェッショナリズムを見せつけることだと思います。また18人の選手全員と補欠の選手に、満員になった会場でプレーするチャンスを与えることが重要です。選手たちにとって最高の経験となるでしょう。
イングランド、北アイルランド、スコットランド、ウェールズの各国から少なくとも一人選出する予定なのでしょうか?
まず、私は「政治的な理由のために、各国から選出すべきだろうか」と考えを巡らせてみました。しかし、そのような選考基準は、選手たちに対して結局、不公平であるとの結論に達したのです。だから出身国にかかわらず、選手の個々人としての能力を判断していくことになるでしょう。その結果、一国から全選手を招聘したものになっても、あるいは各国出身選手が混在したものになってもどちらでも良いと思っています。可能性としては、2〜3カ国からの出身選手だけで英国代表が構成されることもあり得ます。ただチームの構成がどのようになろうとも、皆同じユニフォームを着た、英国代表の選手であるということには変わりありません。
英国統一チームへの参加を積極的に望む選手を選出するのでしょうか。
現時点では、我々の方から選手に連絡を取って、書類を送り、英国統一チームの選手として選考されることを望むか否かの回答を求める、というのが公式な過程となっています。この作業はもうすぐ開始されるでしょう。その結果、五輪に参加したくないと言う選手がいたとしても構いません。でも、そのような考えを持つ選手はあまりいないのではないでしょうか。皆参加したいと思うでしょう。およそ250人の選手に打診する予定です。
各サッカー協会の要望などに優先して、そうした選手の決断が尊重されるべきだと考えていますか。
こうしたあらゆる大きな大会が巡ってきた際に、監督として私が取り入れる基準は、選手の経験と選手自身にとってのメリットです。そして自分自身に対して、「もし私がまだ現役選手であったら、英国統一チームのメンバーとして、母国で五輪に参加する方がいいか、それとも代わりに所属クラブに留まり、シーズン開幕前に行われるいくつかの親善試合でプレーする方がいいか」と問い掛けるでしょう。自分がどちらの道を選ぶかは明らかです。ご存知のように、私はロンドンで開催された欧州選手権の1996年大会でプレーする幸運に恵まれましたが、それはサッカー選手としての私の人生において最高の経験となりました。代表チームのメンバーのほとんどが若い選手になるかと思いますが、そうした若い選手へ与えられるチャンスを、私も、またどの国のサッカー協会も奪うべきではありません。
ワールド・カップが一大イベントとなっているサッカーにおいて、五輪に参加する意義とは何でしょうか。
第一に、母国でこのような大会に参加できる機会はあまりありません。この国で五輪を開催できるなんて、私たちは本当に幸運に恵まれていると思います。我々は、国民的スポーツであるサッカーを五輪で紹介することができるのですから。できるだけ長く五輪の舞台で勝ち残り、注目を集めることができたらと思っています。
こんなチャンスは、人生で一度しか来ないでしょう。私がこれまで会話を交わした選手の多くは、五輪をワールド・カップやそのほかの主要な大会から独立した、それ自体で楽しむための大会であると見なしています。ワールド・カップや欧州選手権の重要性は分かっています。なぜなら、私はかつてその舞台でプレーしていましたし、また監督としても参加したことがあるからです。ロンドン五輪に関しては、どれほど注目を集める大会になるか、想像すらできません。サッカー男子が英国統一チームとして五輪に参加するのは1960年以来のことですからね。ものすごい注目を集めるのではないでしょうか。

開幕まであと半年を切ったロンドン五輪に向けて、英国ニュースダイジェストでは関連情報を随時掲載していく。今回は、52年ぶりの英国統一チーム結成で話題を集めるサッカー男子に注目。同五輪代表を率いるスチュアート・ピアース監督へのインタビューを、2回に分けて掲載する。
取材: 小杉敏之/東京中日新聞
コーディネート: BAREFOOT COMMUNICATIONS LTD
翻訳・編集: 大塚麻里ほか
Stuart Pearce MBE
1963年4月24日生まれ、ロンドン出身。2012年のロンドン五輪サッカー男子監督を務める。ファビオ・カペッロ監督率いるイングランドA代表のコーチと21歳以下の選手で構成されるU-21代表の監督を兼任。現役時代はイングランド代表の主将も務めた。

イングランドA代表のコーチとして臨んだスペイン代表との親善試合を控えて、主将のジョン・テリー選手(写真左)らに指示を出すピアース氏(同右)
イングランド、北アイルランド、スコットランド、ウエールズの4カ国から選手を集めることで、より強い代表チームができると考えていますか。
チームはより強くなると思います。ただ一つ私たちにとって不利となり得るのは、今夏に開催される欧州選手権の出場選手を、五輪代表としては一切選出しないとの決定が下された場合です。いずれにしても、英国統一チームの結成は、各国から優秀な選手を選抜する良い機会になると思います。現在のスタッフにとっては初めての試みとなりますが、英国統一チームとして団結を図ることができれば、きっと良い結果が得られるはずです。
実際のところ、欧州選手権の出場選手がロンドン五輪にも参加することがあり得るのでしょうか。
その可能性は薄いですね。ただ現段階では最終的な結論を出していません。3月末か4月までには決断する必要があるでしょう。そうでなければ、選手たちは、自分が五輪に向けてコンディションを上げていく必要があるのかどうか、判断がつかないですから。そのころには、出場選手候補を30人程度にまで絞り込めているはずです。そして7月初めに最終的な判断を下し、出場選手が正式に決定することになります。
実際のところ、欧州選手権の出場選手がロンドン五輪にも参加することがあり得るのでしょうか。
その可能性は薄いですね。ただ現段階では最終的な結論を出していません。3月末か4月までには決断する必要があるでしょう。そうでなければ、選手たちは、自分が五輪に向けてコンディションを上げていく必要があるのかどうか、判断がつかないですから。そのころには、出場選手候補を30人程度にまで絞り込めているはずです。そして7月初めに最終的な判断を下し、出場選手が正式に決定することになります。
ただ、欧州選手権に出場する選手は別としても、ほかの選手たちにとって五輪の開催時期は本来であればオフ・シーズンであるだけに、準備を行うのが難しいという問題があります。準備が大変なのは、U-21代表(21歳以下)チームの監督としての業務もこなさなければならない私も同じ。しかし「経験を得る」という意味において、この夏は特別な時間を過ごすことができると思っています。
ベッカム選手が英国統一チームの主将への就任を熱望しています。(現在36歳の同選手が対象となる)オーバーエイジ枠の選手の選出基準は何でしょうか。
私は、デービッドが五輪への参加希望を表明をしたことは、世界のサッカー界に対する素晴らしいメッセージになったと思っています。ですが、ほかの選手と同様に、彼がチームの一員となり得るかどうかは、彼自身のコンディション次第でしょう。五輪では決勝戦までを勝ち抜くために、短期間に6試合を戦う必要があります。我々は、18人の選手すべてがその過密スケジュールに耐えうるかどうかを判断しなければならないのです。
ベッカム選手を代表選手に選んだ場合、単に宣伝目的で彼を引き入れたのだと非難する人もいるかと思いますが。
商業目的云々の話ですね。どんな決定を下したとしても批判されることになるでしょうが、そうした声は別に気になりません。すべての人々を満足させることなどできませんし、チームの構成や商業目的云々、またそのほかの様々なことをめぐって、批判的は見方は必ず出てきます。そして、だからこそ我々は、五輪の舞台で立派に戦えるチームを編成しなくてはならないのです。
五輪での目標は何でしょうか。
金メダルでしょう!強豪国が出場することは分かっていますが、現段階で、各代表がどの程度の仕上がり具合で五輪に臨んでくるかを把握するのは至難の業です。自分たちのチームの長所さえまだ知る由もない段階ですから、対戦国のチームに関しての情報を集めることの難しさはなおさらです。いずれにせよ、母国での五輪開催が、我々にとって有利に働くことを願っています。
チームに与えられる準備期間はとても短いものだと思います。どうやって対処しますか。
準備の進め方については、ほぼ決定済みです。この仕事を担うに当たっての私の強みは、現在受け持つU-21の監督業などを通して、大会に向けた調整方法を熟知しているということです。U-21を率いて既に3つの大会を戦ってきていますし、ワールド・カップには選手としても出場していますしね。
恐らく、(ロンドン五輪の合宿施設が用意された)イングランド中部ラフバラーに集合して準備を整えた後にスペインに飛び、1週間を練習と非公開の親善試合に費やします。それからロンドンの五輪選手村に入り、英国北部でまた親善試合です。五輪の初戦は、7月26日にマンチェスターのオールド・トラッフォード競技場で行われます。準備という観点では、先に述べた2つの親善試合が重要になってくるでしょう。これまでに3度、U-21チームにおける主要大会の準備でスペイン合宿を行っていますから、この方法が上手くいくと確信しているんですよ。
五輪におけるサッカーの観戦チケットの売れ行きが芳しくないようですが。
単に、どのチームがどの日に試合を行うのかが現時点では分からないことが原因だと思います。通常、チケットは、どのチームがどのチームと対戦するかを分かった上で購入するものです。でも今、我々は、一体誰が出るのか分からない試合のチケットを買ってくれと頼んでいる状態ですよね。詳細が発表されれば、チケットは飛ぶように売れるはずですよ!
日本代表について何か特別な印象はありますか。
現時点ではありません。今、我々が注視しているのは、予選ラウンドのグループ分けを決める抽選会です。大きな大会を控えた際、特にサッカーにおいては、自分が誰を相手に戦うのかが分かったときに集中力が一段と研ぎ澄まされますからね。
あとがき
8日に発表されたファビオ・カペロ氏の突然のイングランド代表監督辞任を受けて、スチュアート・ピアース監督は、欧州選手権を控えるイングランドA代表の暫定監督をも兼任することになった。今後、ピアース監督の存在感がますます高まっていくことは間違いないだろう。