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Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 小林ひかる

第23回 スポーツ選手とバレエ・ダンサー

12 April 2012 vol.1347

バレリーナの驚異のトレーニングについて、コラム連載の第2回目にお話ししたことがあります。

読んでいない方のために少し説明させていただきますと、一般的に言うところの筋力トレーニングでありますが、バレリーナのために改善された、筋力にボリュームをつけずに補強を中心に行うトレーニングのことです。このトレーニングを始めてから、早くも2年が経ちますが、その成果は自分自身だけではなく、バレエ団の皆が納得するものとなっています。補強した筋肉は様々な踊りの中で、体をコントロールするのにとても役立っており、それを実感しているだけに一層、トレーニングにはまってしまっています。

そしてそれと平行して、今年から取り入れたのが、HIIT(ハイ・インテンシティ・インターバル・トレーニング)。このトレーニングは、名前の通り高強度の過酷なものです。

バレエ・ダンサー 小林ひかる
ケトルベルでのスイング。
かなりの重労働です

私が行っているトレーニングは、15秒間の運動、15秒間の休息をワンセットとして、40セットから80セット繰り返すという内容。このトレーニングを終えた後、特に80セットを行った後には、まるでかなりきつい1幕もののバレエ作品を踊り終えた後の感覚に似たような疲労感を覚えます。

ここで言う「運動」に値するのは、縄跳びでのダッシュとケトルベルでのスイングを交互に組み合わせるというもの。まるでスポーツ選手のトレーニングではないかと思われるかもしれませんが、もちろん、このトレーニングもバレエ・ダンサー用に手を加えられています。

縄跳びでのダッシュとは、できるだけ速く飛び続けることを指し、バレエの踊りの跳躍の繰り返しや、細やかなステップの連続をシミュレーションし、心肺機能を高めます。またケトルベルでのスイングとは、やかんのような形をした金属の重りを足の間から肩の高さまで振り上げるという動作の繰り返し。こちらは踊っている最中の体のコントロールに使う、コア & インナー・マッスルを鍛えます。

これらを組み合わせてトレーニングすることにより、バレエの作品を踊っている状態に近い状況を作り出し、持久力と筋力を向上させていくのです。

「バレエの筋肉はバレエで作られる」と昔はよく言われていました。今でもそのような考えを持たれる方もいらっしゃるでしょう。私も2年程前までは同様の考え方でしたが、実際に経験し結果が出ると、何とも言いようがありません。スポーツの世界でも同じだと思いますが、やはり最後は自分に合っているかどうかなのではないでしょうか。

バレエ・ダンサーとスポーツ選手の共通点は、公演、試合、大会の当日に、それまで努力してきたものの結果が出せるかどうか。どんなに努力をしていたとしても、その日のコンディションによって結果が左右されるのは、とても恐ろしいものです。特にオリンピックの選手など、100分の1秒を競い合う種目で争う場合には、心理、生理的コントロールが大いに必要とされるでしょう。そしてそれはバレエ・ダンサーも同じです

ロイヤル・バレエ団には、何と運が良いことに、スポーツ心理学者がいて、心理、生理的コントロールのサポートをしてくださっています。その話は、また次回に。

 

小林ひかる
東京都出身。3歳でバレエを始める。15歳でパリ、オペラ座バレエ学校に留学。チューリッヒ・バレエ団、オランダ国立バレエ団を経て、2003年から英国ロイヤル・バレエ団に入団。09年ファースト・ソリストに昇進した。
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