カンヌ女優賞獲った
四半世紀の仏女優道
先月23日に開催された「第63回カンヌ国際映画祭」で、女優賞に輝いたフランス人女優、ジュリエット・ビノシュ(46)。「ともだちのうちはどこ?」「桜桃の味」などの作品で日本の映画ファンにも馴染みのあるイランの巨匠、アッバス・キアロスタミ監督作「サーティファイド・コピー」での受賞だったが、壇上に上った彼女は、同映画祭の審査員に選出されながら、イラン当局に拘束されて参加できなかった同国のジャファル・パナヒ監督の釈放を求めて抗議のスピーチ。彼の名を書いたプレートを手に持ちながら、「来年、パナヒ監督がここに来られることを願います」と述べ、更に記者会見で、抗議のハンストを始めた監督への釈放を要求した。「ノンポリ」が基本の日本女優にはあり得ない行動で、英国だと、せいぜい往年のヴァネッサ・レッドグレイヴくらいか。
私生活でも一緒だったカラックス監督の「汚れた血」「ポンヌフの恋人」で鮮烈な印象を残し、80年代仏映画ブームの大役を担う一方、カウフマンの「存在の耐えられない軽さ」でハリウッド進出。種まきを終えた後の90年代、「トリコロール / 青の愛」でベネチア国際映画祭女優賞、故ミンゲラ監督の「イングリッシュ・ペイシェント」でアカデミー助演女優賞を獲り、仏発「国際女優」として開花した。
ミレニアム以降は、更に多くの国境を越え、アモス・ギタイ(イスラエル)や、ホウ・シャオシェン(台湾)、キアロスタミ監督たちと共に作品を生み出したビノシュ。コスモポリタン的柔軟性と、どんな役も内外面共に潤った質感が出せる才能、そして、「女性性」と「行動力」の二面性を持った「複雑さ」。まさに、フランス女性の歴史ここにありで、米女優は、逆立ちしても勝てない。