チーズ職人でもばかウケ
アレックス・ジェームス。コンビ名とかではなくて、人名。中年ブリティッシュ・ロック・ファンならご存知、90年代ブリット・ポップ最盛期に活躍した中産階級バンド「ブラー」のベーシストでビジュアル担当でもあったイケメンだ。もちろん、バンドは健在で、アレックスもメンバーの一員だが、今の肩書きは「ミュージシャン」より、「チーズ職人」のほうがぴったりくる。
今年公開されたブラーのドキュメンタリー映画「ノー・ディスタンス・レフト・トゥ・ラン」を観ても分かる通り、過去、ドラッグに耽溺し、互いのエゴをむき出しにしていた彼らの中でも、極めつけにヘドニスト(快楽主義者)だったと自他共に認めるアレックス。シャンペンやドラッグに100万ポンド(当時の2億円)を費やし、宿泊ホテルにたむろするグルーピーの中からかわいい子だけを数人選んで部屋に呼び込み、これまたドラッグ・パーティーを繰り広げていたと、3年前に出した自叙伝「ア・ビット・オブ・ア・ブラー」でも記している。
そんな破天荒かつグラマラスな日々から一転し、英国の軽井沢、コッツウォルズに200エーカーの土地を購入して、家族と共に農場暮らしを始めたのが7年前。彼の作ったチーズの一つが、「英国チーズ賞」を獲るほどの実力を付け(「リトル・ワロップ」115gで6.95ポンド!)、業界では一目置かれる存在になっている。そして、元音楽ビデオ・プロデューサーの妻との間に、6歳を筆頭に子供5人を短期量産。上からジェロニモ、双子のアルテミスとガリレオ(4)の男児3人に、セーブル(2)、ベアトリクス(0)の女児2人が続く。
息子にアパッチ族のシャーマン、ギリシア神話の女神、イタリアの天文学者の名を付けるセンス。これって「詩的」、それとも「的外れ」?