貴公子が甘ったれナル中年に
あれは確か3年前のBBCチャリティー特番「コミック・レリーフ・ダズ・アプレンティス」を放映したときだったか。丁稚奉公(アプレンティス)の一人として出演した俳優ルパート・エベレット(51)が、カメラで追われるのを嫌がり、子供のようにほっぺたをプーと膨らましてフテ腐れ、撮影わずか1日目で降板。急遽、代役投入の事態となったが、周囲に大迷惑をかけた張本人は、「役を演じている自分を撮られるのはいいけど、素の自分を撮られることには我慢できない」だと。 オイオイ、誰もが知っているビジネス能力を競う番組「アプレンティス」のセレブ版ですよ。大方の察しがつくでしょうに。
まったくもってこのときに、エベレットの印象が変わってしまった。かなり昔、「アナカン」こと映画「アナザー・カントリー」(1983)の「貴公子風情」が、まずは最初のイメージ。実際、由緒正しきお家柄出身だ。次に、89年当時、役者の中ではほぼ皆無だったゲイ・カミングアウト後、しばらく音沙汰がなくなり、「一発屋かも!?」に変換。続いて97年、ジュリア・ロバーツの向こうを張って出演した「ベスト・フレンズ・ウエディング」のヒットで返り咲き、数々の賞にノミネートされたのに、同年、金とクスリ欲しさに「男娼」をしていたことを雑誌に告白、せっかくの機会(チャンス)をフイにした。「よせばいいのにナルシスト」に上書きだ。そして、この丁稚奉公トンズラに当たり、「ナルシストのなれの果て中年」へ三転。
「カミングアウトは役者生命を失う恐れがある」とこれまで繰り返し唱えているエベレットが最近、ホモフォビックで、ビッグネームばかりを起用する保守的ハリウッドを痛烈批判していた。大筋認めるとして、あのふくれっ面を思い出す限り、彼の場合は「自己責任」かも。