震災支援で手弁当来日
20年前、東京・三軒茶屋の昭和女子大学人見記念公会堂で行われたコンサートで、確か裸足のままステージに現れたジェーン・バーキン(64)。当時、既に40歳前半だった彼女には、無駄肉というものが一切なく、真っ白なシャツを無造作に羽織った姿は、まるで「少年」。彼女のか細い歌より、ほの暗いステージでピンスポットを当てられて立つ(立ちすくむに近い)彼女の存在が、やけに記憶に残る。ああこれが、フレンチで言う「アンニュイ」なのね、だ。逆立ちしてもなれそうにない、あちら流の「粋」。
これまで十数回、日本を訪れ、仙台でもコンサートを行って「楽屋から見えた海辺の漁師の姿が、いまだに目に焼きついている」という、このフランスに拠を置く英歌手・女優のバーキンが、今月初めに、東日本大震災の復興支援のため、急遽、来日した。本国でのチャリティー公演の前に「4日間、身体が空いていた」彼女が、同じ女優業につく娘たちの反対を押し切って、「エイヤッ」と自費でやって来たという。
到着翌日の記者会見(パリのタクシーで「これから日本に行く」と告げると、運転手から「チップは要らない。その分を義援金にまわしてくれ」と言われたエピソードも)後に、パルコ前で募金を呼び掛け、夜には、応募者4000人以上から約500人が招待されたというチャリティー・ライブを敢行。3日目は、震災被災者の避難所となっている東京武道館を慰問に訪れ、被災者や職員たちに深々と頭を下げ、「アリガトウゴザイマシタ」。バーキンが仏から持参したチョコレートなどの支援物資は、福島県に届けられたという。
「アンニュイ少年」のしなやかな強さ。バーキンの心意気は、やはり真似できないカッコよさだ。