各新聞、雑誌で高評価だった初のソロ・アルバム「Jarvis」で、久しぶりにシーンに戻ったパルプのジャービス・コッカー(43)。現在は家族3人でパリ在住というが、一度、息子を連れたジャービスをリージェント・パークのプレイグラウンドで見かけたことがある。チャリティ・ショップで買ったとしか思えないヨレヨレのウールのセーター、分厚い眼鏡、ボッサボサ頭の極細体躯。本人は気配を消していたつもりだろうが、個性が浮き上がっていた。
ラジオ1の伝説DJ、故ジョン・ピールによって、シェフィールド出身のパルプが見出されたのは有名な話。しかし、インディーズの域をなかなか超えられず、バンド結成16年目の1994年にようやくアルバム「His’n’Hers」とシングル・カット「Babies」でメインストリーム入りを果たす。これで当時のブラーやオアシスらと肩を並べた格好となった。音楽的成功は二者の方が上だが、高級紙やBBC系は今もってジャービスびいきだ。
ガリガリ君がお尻をくの字に突き出したり、身体をくねくねさせて歌っている姿は、見る人によってはプゥーッと吹き出す滑稽さがあるかもしれない。しかし、ボウイやデービッド・シルビアン系の声とのコラボで、「ひょっとしてかっこいい?」、「ひょっとして天才?」と、そのうちの何人かは思うはずだ。キモかっこいいとでもいうのだろうか。
10年前のブリッツ・アワードでは、マイケル・ジャクソンの歌の最中、尻をふりふりしながら飛び入りして大騒動になったことがあった。友人ノエル・ギャラガーがずいぶんとジャービス支持にまわっていたが、そんな奇行もインテリ心をくすぐるのかもしれない。歳喰ったピート・ドハティのクリーン版と言えるかも。