「ドクター・フー」のヒロイン、ビリー・パイパー(24)は脱アイドルで成功した稀有な例だった。過去形になったのは、主演の初芝居「トリーツ」をドタキャン→延期したから。極度のストレスが原因というが、「舞台に穴をあける」のは、言わずもがなタブー中のタブーだ。
これまでにも、マリア役探しオーディション番組の優勝者コニー・フィッシャーが風邪で「サウンド・オブ・ミュージック」12公演分をキャンセル、「ラブ・アクチュアリー」のマーティン・マカッチョンは舞台「マイ・フェア・レディ」を途中降板と禁忌を犯しているが、ビリーの場合、舞台「セル・メイト」をすっぽかして雲隠れしたスティーブン・フライに近い重罪度だ。
1998年、シルビア・ヤング演劇学校の奨学生だったビリーは、雑誌「スマッシュ・ヒット」のCM出演をきっかけにレコード契約。史上最年少の15歳でチャート1位(「ビコーズ・アイ・ウォント・ユー」)を獲得し、アイドル歌手として活躍。しかし、お決まりのパターン=ドラッグ、アルコール依存、摂食障害などの問題を抱え休養宣言。1年後に復帰し、人気DJクリス・エバンスと番組で知り合い即席婚する。しばし米国で現実逃避するも、夢から醒めて芸能活動を再開。慰謝料なし後腐れなし離婚で好感度をアップし、「ドクター・フー」で一気呵成に女優道を開拓した。
ヒロインのローズ役であちこちから賞をもらい、今回のウエスト・エンド・デビューは、まさに満を持してのはず。ハリウッドへの布石にもなるだろうし。しかし、冷静に考えれば劇画タッチのSFドラマからシリアスな心理劇への段抜き上がりに無理がある。すでになんだかパッツィ・ケンジットやリズ・ハーレーのような中途半端な匂いが漂っているのは気のせいか。