いよいよ秒読み段階に入ったゴードン・ブラウンの英首相就任。ブレアに労働党党首の座を譲ってから13年間、「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」の心境で、奥歯を噛みしめやっと取った天下。本人はヤル気満々だろうが、予定調和で新鮮味に欠ける。
スコットランドの小さな炭坑町で牧師の子として生まれ、高校時代、ラグビーの練習中に左目失明。エジンバラ大在学中からバリバリの労働党員として鳴らしたブラウン。実質、ブレアと共にこの10年間、中道路線の「ニュー・レイバー」政府を作り上げてきたのだから、ブラウンが首相だったとしても政策的にはたいして変わらなかっただろうし、よってこの先の2年も変わらないだろう。
ただ、「よっ、ブレア」と呼ぶブッシュとは兄弟分で、メディア受けする華のあるブレアに比べ、フガフガと不明瞭に話す実務向きの猪首ブラウンは、暗く、重く、古くさいイメージで損しているのは確か。もっとも、ちいちい(地井武男)じゃないが、中年女性にモテそうな滋味のある大型犬的魅力はあるが。
ブレア政権が残したイラク参戦やNHS再構築のゴタゴタ、不動産バブルや金利上昇に伴う資産格差、中途半端な教育制度テコ入れといった問題にどうメスを入れる(トリックを使う)のか。誰かが笑えば、誰かが泣く。保守党キャメロンの支持率が上回っている今、飽きっぽくて短気な国民をいなして、「ほほーう」と唸らせる即効性と持続力を伴う展望を見せ、実行し、結果を出せるのか。たった2年で。
映画やドラマでは、「ゴッドファーザーⅡ」のように2作目が1作目を上回る出来はごく稀。近日公開される主演ブラウンによる続編「ニュー・レイバー」の運命やいかに。