調理場から足を洗って以来8年ぶりに、人気番組「ヘルズ・キッチン」で一時的にシェフ復帰したマルコ・ピエール・ホワイト(45)。彼がオファーを蹴った故、後輩のゴードン・ラムゼイにお鉢が回って始まった同シリーズだが、吠え犬ラムゼイに対し、ホワイトはひと睨みで震え上がらせるオオカミ。ハードボイルドなアプローチが、意外や好評だった。
最初の「なんだこの太った『ハンニバル』アンソニー・ホプキンスにチリチリ・パーマをかけたような大男は」な印象が、腐る寸前の熟男フェロモンに汚染されたのか、気が付けば「あらん、ひょっとして抱かれ・た・い?」へシフト。げっそりした頬、目の下のクマやたるみ、あのチリ毛でさえもチャーミングに思えてきた。一日の調理場仕事を終え疲労困憊しているセレブたちに、釈迦涅槃の横臥でねぎらい、笑顔を見せるホワイトは、ことさ ら色っぽい。3度の結婚、その間に有名人を含む数多の女性関係を持つハーフ・イタリアンの艶男ぶりをここで見た感だ。
33歳でミシュラン最年少、英国初の3ツ星を獲った天才は、辛辣さも一級。彼を「いじめっ子」と評したジェイミー・オリバーに、「ミシュランの星獲ってから出直して来い」と切り、前シリーズのシェフ、ゲーリー・ローズに対しては「彼なしならもっといい番組になっていた」とコメント。かつてハーベイズでラムゼイを泣くまでしごいただけある。
今年になってラムゼイが、9年前オブジーンの料理長だった頃、自ら店の予約帳を盗んでホワイトに濡れ衣を着せたことを告白したが、1日オープンのMarcoを始め、これまでレストラン35軒を開店してきた帝王にとっては蚊の涙ほどの事。苦しゅうない。