オスカー無冠の演劇人
米ドラマ「ダメージズ」の冷酷な弁護士役で、本年度の賞取りレース1発目、ゴールデン・グローブのTV部門主演女優賞に輝いたグレン・クローズ(60)。演技力の確かさではメリル・ストリープと双璧を成すが、アカデミー賞では助演、主演併せてノミネート14回、オスカー2回のストリープに対し、クローズは5度候補に上がるも栄冠ゼロ。本人も「メリル・ストリープとしょっちゅう間違われるけど、オスカーの夜だけはないわね」と自嘲的コメントを残している。
しかし、舞台ではクローズが上で、これまでオフ・ブロードウェイのオビー賞、ミュージカル「サンセット大通り」(94)ほか3作品でトニー賞を受賞。歴代の米大統領ジェファーソン、モンロー、タイラーらを輩出した名門ウィリアム&メアリー大で人類学と演劇を専攻し、数多くの舞台に立ってきたが、ハリウッド・デビューは遅咲きの37歳。「ガープの世界」(82年)で、映画通を唸らせる肝の座った演技をみせ、ジョン・アービング小説の住人になりきっていた。「危険な情事」では不倫相手の娘が飼うウサギを煮るストーカー女を演じ、これまた話題をさらったが、とにかくこの人の演技は一風堂々と揺るぎがない。ヘタするとまわりが完全に食われてしまう。
余談だが、編集者の年収億越えがザラといわれるコンデ・ナスト社の高級ペット専門誌「アニマル・フェア」の読者投票で、グレン・クローズのテリア犬2匹がトップ・ペット・リストにランクインした。「101」「102」でワンちゃんの敵役クルエラを演じたことは全く影響していない模様で、一流の飼い主に一流のペットありきなのだろう。なんか腑に落ちないけど。せいぜい鍋に入れられないように。