ホッケー・ママの逆襲
残すところ10日余りで米国大統領選の決着がつく。レース前半はヒラリー・クリントンとバラク・オバマによる民主党候補の予備選にメディアが集中。オバマ勝利で、初の黒人大統領誕生に一歩大きく前進したかに見えた。それくらい、6月からの3カ月、共和党ジョン・マケイン候補の存在感は薄かった。
なのに運命の8月29日、副大統領候補者に、マケインと歳が二まわり以上違うサラ・ペイリン(44)の名が上ってから事態は急転、スポットライトはマケイン陣営へとシフトする。あからさまに女性有権者を狙った、5児の母をもってきた戦略。一か八かの賭けだっただろうが、まさかこれほどの効果をもたらすとは。
アラスカ州最年少、初の女性知事であり、中絶、同性愛婚、銃規制に反対するコテコテの右派。地元ワシラ市のミス・コンで優勝し、ミス・アラスカでは準優勝。三女(7)を生んだ翌日に仕事復帰、小学生のときから早朝に狩りをしてから登校したという逸話を持つ。また、過去2年間アラスカ独立党に所属、お腹にいるときからダウン症の疑いがあった次男を今年4月に出産、長女(17)の妊娠発覚と、候補発表後、僅か数日の間にゴシップの嵐。
しかし、9月3日の党大会演説で出たあのフレーズで一気に好感度がアップする。曰く、「闘犬とホッケー・ママの違いは、リップスティックをしてるかしてないかだけ」。その後、クレジット市場問題を巡って、オバマ民主党が優位に立っているが結果は神のみぞ知るだ。
歴代最高齢のマケインが当選し、任期中に退任ともなれば、ペイリンが大統領に昇格。オバマが勝っても、彼女の知名度は十分で、次回ヒラリーとの女性対決もあり得る。これ以上のシンデレラ・ストーリーはない。