英勲章付き元ボンド
スラッとした体型に七三分けの甘いマスク、デービッド・ボウイに似たディープ・ボイス。スーツ姿だとムード歌謡の歌手に見えるピアース・ブロスナン(55)が、映画「マンマ・ミーア!」では、見事に「歌・ダンスの才能ゼロ」を証明してくれていた。とはいえ、それがコミカルでアンビバレントな魅力となっていたから、さすがは5代目ジェームズ・ボンド。ま、実際のところ、計算なのか二枚目たるゆえんなのかは判断がつかないが。
それにしてもこの映画、主演のメリル・ストリープはもちろん、英勢のコリン・ファースやジュリー・ウォルターズらぜいたくなベテラン俳優陣が、アバの曲に乗せて脳天気に歌い踊る様は、まさに中年力全開。公開前は批評家たちからさんざん叩かれていたが(BBCの映画番組でジョナサン・ロスが、ストリープにずいぶんとイジワルな質問をしていたと記憶する。特にブロスナンの歌のヘタさについて)、フタを開けてみれば大ヒット。
「ウエストサイド物語」「グリース」といった王道を押しのけ、ミュージカル映画の興行売上トップ、英国でのDVD初日販売数新記録(170万枚)。興行、DVDの総売上も、歴代1位の「タイタニック」をしのぐ勢い。また、英製作映画としては、ウォルターズが出ている「ハリー・ポッター」シリーズを抜いて英総売上1位。公開から半年経ってもなお続く人気に、「冬ソナ」じゃないが、オバサン熱のしつこさは世界共通であると納得。
ヨン様とはいかないだろうが、大英帝国勲章付アイルランド出身のスター、ブロスナンのマンマ・ミーア! 効果はかなりのものと想像できる。ボンド的正攻法より、「マンマ~」や出世作「ミセス・ダウト」路線でどうぞ。