好色俳優の魔力
ところは北ロンドンの成城学園前、イースト・フィンチリー。泌尿器科医である3児の母が、子供の学校行事で知り合った近所の父兄と恋に落ち、外科医の夫を捨て半同棲。男性の子を身籠もり、来月出産予定という。で、相手というのが、ソープ俳優のスティーブ・マクファデンときたもんだ。彼が演じる「イーストエンダーズ」フィル・ミッチェル役を地でいく展開に、久々心がどよめいた。
アルバート・スクエアに登場して19年。家族愛が異常に強く、大概のことは暴力で解決する典型的thug(悪党)、ミッチェル。兄嫁やおとり調査をかけようとした女性巡査らと恋仲になってはトラブっての繰り返し。一度は女に殺されかかったこともあった。対するマクファデンは、マンUのエース・ストライカー、クリスティアーノ・ロナウドとの乱交パーティーを暴露した売春婦をナンパして、タクシーの中でそのカノジョに顔をなめられているところを撮られたり、前にも書いたが、元愛人からdogging(主に駐車場で行われる乱交)の趣味をバラされたり。
いくら俳優とはいえ、好色でダーティーなイメージの、ハンプティ・ダンプティかジャガイモかみたいなつるっ禿の、夫と同い年50のオッサンに、なぜに、何不自由ない生活を送っている高学歴美人が惹かれたのか……。ぱっと思い付くのは、オス度の高さにフラフラっときたから。すなわち肉欲で。だがもっと突っ込むと、別世界に住む一発屋じゃない有名人→自尊心満足、安定・高収入→保険になる。本人もキャリアがあるし、なるほど意外と低リスクだ。
老い先短い中年だから、出会いから妊娠まで、すべて早回しの速攻。アンチ草食男子の見本。